第111話 ジュラーディスの悪あがき
□新宿100層(姫乃)
「ぐぉぉおおぉぉおおおお!なぜだ!?なぜ我が破れる!?こんな場所で!?こんなやつらに!?」
私が攻撃を防いだ後、ロゼリアさんが魔法で翻弄し、フランが切り裂いた。
みんな私が貰ったのと同じように光る道具を持っている。
これがお父さんが言っていた聖具というものなんだろう。なんとなくわかる。ほんのりとこの盾から歓喜のような感情が流れ込んでくる。
こんな私を歓迎してくれるのかな?
ロゼリアさんが持っている"杖"、フランが持っている"剣"からも穏やかな感情を感じる。
「認めん!認めんぞ!?」
「なっ……」
お爺さんが叫ぶと、黒い魔力と化していく最中だったのにそれが止まる。
切り裂かれた下半身は落ち、残ったのは上半身だけ。異様な光景だった。
「ふむ。それはお兄ちゃんが使っていた"剣"ね。なるほど、あの世界の聖具の攻撃を警戒しているの?なぜ?」
『面白い状態だな。斬った感じ魂が薄い……そんな感覚を感じた』
これはさっきと同じ声。私に盾をくれた声……。その声がロゼリアさんの呟きに答える。お兄ちゃんって誰?
「魂が薄い?もしかして"剣"に攻撃されて死んだりしたら復活できないんじゃないの?」
「えっ?」
ロゼリアさんがフランの持つ剣を見ながらそんなことを言い出した。
『ふむ。ダンジョンのモンスターというのは死ぬと復活するのか。それは魂に対して何度も体を作って入れているという感じなのかもしれないな。私は存在の概念を切る剣だ。モンスターとしての肉体だけでなく、入っている魂の方にも影響を与えたのだろう』
それが事実ならこの剣であのラガリアスとかを斬ってもらったら、彼らを止められるのかもしれない。
「魂を斬るじゃと!?そんなことが……いや、許さん。許さんぞ!我はこんなところでは消えぬ!我は神の望みを叶えるのだ!!!」
「なっ……」
上半身だけになったお爺さんが叫ぶと、その体が膨れ上がった。
凄まじい魔力が解き放たれ、私たちはその魔力に晒される。
私は盾を構えて魔法障壁を展開してみんなを守る。
そうして私たちは耐えていたが、強力な魔力のせいかボス部屋の方が耐えきれなかったらしい。……壁、そして屋根が消し飛ばされていった。
「なんて魔力……」
恐らくコントロールパネルを守っているであろう小部屋だけは残っているが、それ以外は辺り一面荒れ地となった。
何もない場所に101層に向かう階段だけがある……。
「くはははははは!見よ!我を!思い知るがいい、我の力を!!!貴様らではまだ迷宮神に届かぬ。まだ我にも届かぬのだ!」
そんなお爺さんにどこからともなく湧き上がった灰色の何かが纏わりついていく。あれは良くないものだ。なにか古いもの。恐らく高密度の魔力。
「みんな大丈夫?オールヒール!」
「夢乃?」
そのタイミングで夢乃が回復魔法をかけてくれた。今まで黙り込んでたけど、大丈夫だったみたいだ。
「夢乃、それ……」
そんな彼女の手には何かが握られている。
『それは"杯"だ。よかったな、認められたようだ』
なるほど。夢乃も聖具に認められたみたいだ。黙っていたのはそのせいだったみたいだ。
「"杯"さん!あの灰色の魔力を吸ってほしいの」
そして夢乃がそう願いながら"杯"を掲げると、なんと灰色の魔力を吸収し始めた。
「なっ、なんじゃと!?貴様ら!!!」
慌てるお爺さん。
両手で灰色の魔力をつかむような仕草を見せるが、"杯"がまるで掃除機のように全てを吸収してしまった。
「くっ、まぁいい。今の力でも貴様らを消すには十分だ。心せよ!"深淵に潜む闇の失墜"」
しかしそれに怯むことなく、お爺さんは魔法を放ってくる。
今、周囲の空間からごっそりと魔力が持っていかれた。
ジュラーディスの下半身が黒い魔力に変わったことで充満していた魔力だ。
ボス部屋の囲いが消え去った後もそこに残っていたのは、お爺さんが何かしていたんだろう。
それを再利用した攻撃……。
以前アーカイブ動画で見たお父さんの腕を使った魔法と同じように見える……。
しかもこのお爺さんの魔法は下半身全部を使っている……。そこから取り出せる魔力量は、腕と比べると数倍はあると見ていいだろう。
私は"盾"にお願いしながら、これまでで最大の魔法障壁を張る。
そこに巨大な闇が落ちて来た。
これがお爺さんの魔法だ。
あまりの威力に一瞬で障壁が消えかかる。
アレを通したらやばい。全員無事では済まないだろう。
私は通さないように何度も何度も障壁をかけ直した。
少しずつ威力を減じていく闇の魔法。お爺さんも両腕を掲げて魔力を供給し続けているためか、簡単には消えてくれない。
負けない。私が全員を守るの!
「姫乃頑張って!軍団系スキルも支援魔法もかけまくるわ!!!」
「ありがとう!耐えて!」
私は気力を振り絞って障壁を強化し続ける。
周囲には恐らくロゼリアさんと、あのリッチが展開した魔法もある。
これだけやっても消し飛ばせない魔法なんて、やっぱりあのお爺さんの魔力は凄い。
でも、負けない。
あのリッチさんを消させるわけにはいかない。そう感じる。だから私は諦めない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます