第112話 突然の帰還

□新宿ダンジョン100層(姫乃)


「ふむ、まさか抑え込むとはな」

私は……私たちはなんとか耐えた。凄まじい闇の魔法に。


「予想外ではあるのぅ。まさか人間に我が魔法を防がれるとは。しかしあの世界とつながったことは良い方向に動いているようじゃのぅ。"聖具"と呼んでおったか?戦力を強化する良い武具じゃ」

上半身だけになったお爺さんが宙に浮かびながら喋っている。

右腕は天に掲げたまま。


なぜ?もしかして……


「ただ、よいのかのぅ?ほれ。次が来るぞ?」

「なっ?」

その言葉に空を見上げた私の目に映ったのは次の闇……。球体になったそれがまるで隕石のように降ってくる。しかも、1つじゃない……。



見渡す限り10は超えている。

1つ耐えるのにあれだけの魔力を使ったのに、こんな数……。



呆然となる私たちだった。

さすがに厳しい。もう隠し手はない……よね?



そうしていると、またあのリッチさんが前に出る。

フランもロゼリアさんも夢乃も空を見上げて呆然としているからか、リッチさんの動きに気付いていない。


どうしてそんなに守ってくれるの?

お父さんじゃないのに……それなのになぜ懐かしくて優しい気配を感じるの?


もうあの白い魔力は発していない。

お父さんから貰ったお守りもなくなってしまった。


 

しかし、突然リッチさんが首を傾げる。


「※△◆〇■▼☆彡?」




えっ?



お父さん???





□新宿100層(リッチ)



ここは、新宿ダンジョンの100層だよな?

さっき101層から階段を駆け上がったんだし、それでいきなり転移トラップとかないよな???



でもなんでこんな開けた場所なんだ?

しかもなんだよあの黒い魔力の球体は……。オーバーキルにもほどがあるくらい高魔力だぞ?しかも俺に向かって降ってくるし。どういういこと!?


あと、なんか気持ち悪い巨大なジジイの上半身が浮いてるし。気持ち悪っ!!?



って、あれ?



俺は自分の両腕……そして足を見る。


ん~と、手は骨だし、足も骨だし、これ……触った感じ顔も骨だよな。



戻ってる……。おぉ、戻った。




ただ、こういう時、普通なら『戻って来たぜやった!!!』ってなるはずなのに、なれない。



すまんなレファ。もうイジメてやれない……いや、指でやればいいか。もしくは魔力で……。


って遊んでる場合じゃないな。



「ほう、戻って来たのかリッチ!」

やっぱりジュラーディスかよ。なんで上半身だけなんだ?

もしかしてやられたのか?ウケる!


「ウケるな!全く。貴様が異世界に行ったあと、なぜかリッチが動き回っていて、死に戻りはさせるわ、倒されてないのに101層に探索者を通すわで仕置きしにきたのじゃがな。そこの探索者たちはまぁ良い戦力になる可能性は見えた」

そこの?って、おい。姫乃、夢乃。それにフランにロゼリアじゃねぇか。

なんか傷付いてないか?


てめぇ、ぶっ殺すぞ!?


「そうじゃったか。そやつらは貴様の娘じゃったか。我の魔法に耐えたのは見事じゃったな。それに新たに探索者の世界1位になった娘も、我を両断するとは、なかなかじゃった」

なに評論家みたいに語ってんだ?


「ん?」


てめぇ、俺の大事な娘とその仲間たちを殺そうとしたのか?

ロゼリアも一緒に?

ふざけるなよジジイ。覚悟はいいか?




「抗うのかのぅ。あのリッチは消えたようじゃから、戦う必要はないのじゃがな。魔法は消しても良かったのじゃが、そのような態度を取るのであれば致し方あるまい。我の魔法に耐えてみよ。話はそれからじゃ」


てめぇの魔法?あの中に浮いてるやつか。


「リッチ……いや、お兄ちゃん。あれは危険だ」

ん……ん?ロゼリア?


ちょっと待って。

えっ?お兄ちゃんって言った?


もしかして……?


「お父さん、来るわよ!?」

「※□ー●▼◇×ー(ミラーカウンター)」

「えっ?」

とりあえず最初に降ってくる球体を弾き返す。


この魔法は対象の魔法を威力はそのままに、属性を反転させて打ち返す魔法だ。

聖属性魔法に書き換えられた球体が次に降ってくる魔法とぶつかって相殺される。


その次も跳ね返す。さらに跳ね返す。


同系統で何発も放たれる魔法にはこれが一番だな。


「※□ー●▼◇×ー(ミラーカウンター)」

さすがにジュラーディスのやつが結構本気で放った魔法っぽくて、5個弾き返したらミラーが壊れたからもう一度展開する。


そして最後の一個だけは角度を変えてジュラーディスの方に弾いてやった。



「ぐぉぉおおぉぉおおおお!」

そして自分が放った魔法なのに属性がひっくり返っただけで死に物狂いで避けるクソジジイ。


なんだよ、しれっと消し飛ばせると思ったのに。


「くっ、ふざけおって。こんな場所で今貴様と殺し合うつもりはないのじゃ」

逃げるのか?逃げれるものならやってみろよ。俺はお前を許してないぜ?


「貴様。調子に乗るなよ小僧が!?」

それはこっちのセリフだクソジジイ。

これまで好き勝手しやがって。


どうせ長い間やりたい放題やってきたんだろう?迷宮神を言い訳にな!


「そうよ。私も、王女も剣士も賢者も、あいつに捉えられ、モンスターに入れられたのよ」

ロゼリアが叫ぶ。どうでもいいけど俺の心を読んでくれる2人とだと会話がつながって楽だな。


それにそうだったのか。

そうか……それであいつらには記憶が残っていたのか?


でも、どうやったのか知らないが、死んだやつの魂すら道具にしてるのかよ。

それで自分の手を通っていないのにもかかわらず前世持ちの俺に興味を示していたのか。


自分以外にもそう言うことができる何者かがいるってことになるもんな。


まぁ、考えるのは後だ。今は俺の大事な人間たちをいじめた責任を取って死ね。


「くっ、なんだと?なんだその力は!?」

異世界に行かせたのは強くさせるためだったんだろ?お望み通り強くなったからその力を身に沁み込ませながら消えろ!


「やっ、やめろ!やめるんじゃ!!!」




悪いがジジイをいじめる趣味なんかないからさっさと消し飛ばすぞ?


「▼□〇×☆("覇者の咆哮"ヴィクトルクラーグス)」

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