第91話 ラブコメ回③テント
□オルレングラ地底洞窟(詩織)
「レファ……意識しちゃう?」
「むぅ……」
けど、安心してほしい。
私も大丈夫じゃないから。
「きっと
「うぅ……」
女の子座りしているレファが、両手で自分の肩を抱き、がっくりと頭を垂れる。
きっと葛藤しているんだろう。
向こうの世界のレファは口で言うほど
気安い軽口を叩き合いながら、根っこの部分では信頼していたと思う。
それがこっちの世界に来たら、体が疼くくらいにもの凄い惹かれてしまう。
レファは『詩織とおんなじなのよ』と言った。
現実世界のままの心ではどう考えても違和感があるほどに惹かれる。
頭の中が惚けたのかと思うくらいに甘く強く意識してしまう。
そんな状態であんなに優しく、たまに悪戯っぽく無遠慮に触られたら……。
ということで、私もレファも頭が茹っているから、こうして
今日はどう考えてもテントで寝るしかない。
早く気持ちを落ち着けないと、ただのピンク色空間を展開することに……。
私はそれでもいいけど、レファには大変ね。
「くそリッチめ~」
弱弱しいレファの声。
ちょっとやめてほしい。
「どうして?なんでなのよ……」
私は頭をガクガクと振ってるレファを眺める。
その姿は申し訳ないけど可愛い……というか、弄りたくなる。
きっと前世でもそうだったんじゃないかしら。
「諦めた方がいいのかも」
「いやよ。諦めたらそこで……」
あぁ、きっと毒牙にかかるとか想像したのね。
ダメだよ。
今そんなこと想像したら、せっかく心と頭を落ち着かせようとしてるのに戻っちゃうよ?
「なんであんなやつがカッコよく見えるのよ……。冗談じゃないわ」
「カッコいいし、優しいし、距離感近いしね」
「ほんとそれ!」
がばっと顔をあげるレファ。
「たぶん
「どういうこと?」
私の言葉に小首を傾げるレファ。わからないかな?
「私たちがこれだけ惹かれているように、
「……むぅ……」
プルプルしてるレファが可愛くて思わず撫でてしまう。
やっぱりわかってるんだと思うのよね。認めたくないだけで。
「仲の良い男女の関係だったってことは、前世では我慢なんかしてなかったんだと思うしね。それが普通だったから、ごく自然にああいう行動をしちゃうんじゃないかな?」
「も~~~~。最悪だよあのくそリッチ!」
心底困ったというわけではない、甘い声音を吐きながら目を閉じて後ろに倒れ込むレファ。
あっ……。
「ほんとにあいつなんなのよ!」
「まぁまぁ」
宥めないとまずいよね。
まだ心も頭も茹ったままなのに……。
「ムカつくのに優しいし。腹立つのに触ってくるし。文句言ったら蹴り飛ばすし。も~~~~」
なにも気付かずに寝っ転がったまま文句を言ってるレファ。
牛さんになってる彼女だって、結局なにも落ち着いていないだろう。
「悪かったな」
「へっ!?!?」
まさか聞かれてるとは思わなかったのね。
驚いて目を開けて跳ね起きたレファをそのまま
『ここで何かあったらわかるようにしておくから』って言ってたもんね。
そう言えばレファは『リッチ』って何回か口に出しちゃってたし。
「諦めようねレファ。その方がきっと楽だよ」
私は
「あうぅ……」
レファは完全に頭の中が茹ったよう。
真っ赤な顔をして呻いている。
これは……。
「詩織もわかるだろ?」
「うん……可愛いね」
「なっ!?」
私は
現実世界ではそもそも恋愛に興味はなかったんだけど、それでも変なのかな?
今はこっちの世界で頭が変になっているからかもしれない。
それでも、
むしろ
それくらいなら一緒に……。
「ちょっとやめて……って詩織まで。ねぇ、聞いてる?聞いてよ!?私は……ねぇ~~~」
これ反則よ。
可愛すぎるでしょう。
私たちは3人とも前世の体に引きずられた心と頭を醒ますための行為に勤しみ、一晩をテントで過ごした。
「さて、この先のダンジョンなんだがな」
「普通にダンジョンなんですか?今までもモンスターが出ていたので、違いがよくわかりませんが」
「普通にダンジョンだった。というか、向こうの世界でもそうだったけど、既に境界は取り払われてるみたいでな。でも、鑑定したらオルレングラ地底洞窟ダンジョン1層ってでるから間違いない」
「なるほど……」
この先はダンジョンなのね。となると、ここを下って行けば元の世界に帰れるのかな?
「なにごともなかったかのように会議してんじゃないわよ!!!!」
そこへ怒り心頭のレファ。
「あぁ、おはよう、レファ」
「おはよ~レファ♡」
「えっ、えぇ。おはよう……」
挨拶をすると
やっぱり可愛すぎるわよ。
「でもまずは"彷徨う影"探しだな。今からこのダンジョンを進んでも、ただ帰るだけだ」
私は高揚する気持ちを抑えながら話を聞く。
まだもう少しこっちの世界にいれるみたい。
向こうに戻ったらこの気持ちは落ち着いてしまうのかな?
それはそれで寂しい。
それに
レファの方を見ると、彼女もなんだかホッとしているように見えて可笑しかった。
あんなに嫌だ嫌だって言ってたのにね。
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