第90話 洞窟探検という名のデート+1
「うわぁ……これは……」
「もの凄い大きな入り口ですね」
オルレングラ地底洞窟にやってきた。
道中、特に事件もなかったから特に語ることはない。
しいて言うなら詩織と仲良くしてるとレファが小姑みたいに文句を言ってくるくらいだ。
そして俺たちは洞窟の入り口の巨大さに唖然としている。
おかしい……。以前来た時には、こんなに大きな穴じゃなかったはずだ。
俺の記憶がおかしいわけじゃないと思う。そもそも丸ごとお城が入りそうなくらいの大穴なんて見たら忘れないだろう。
「なんか記憶とは違うが、"彷徨う影”が入り口付近で暴れたとかかもしれないしな。まぁ行こう」
「はい♡」
俺の腕を抱え込むようにしてぴったりと俺にくっついた詩織が従順すぎて可愛い。
なにからなにまで可愛い。
これ、デートなのかな?
「軽いわね。そもそも行くってどうやるのよくそリッチ?」
うるさいぞお邪魔虫が!
「いいからとっとと行け!」
「なっ……きゃ~~~~~~~~」
あっ、つい。
ずっと唇を尖らせてねちねち文句言ってくるからつい蹴落としてしまったということにしておこう。
決して詩織と二人きりになりたかったわけじゃないんだ。いや、なりたいけど。
「レファ……」
「俺たちも行こう。しっかり捕まってな」
「はい♡」
俺は詩織がくっついていない左腕を詩織の足に回し、お姫様抱っこして大穴に飛び込んだ。
ぎゅっとくっついて来る詩織を見つめながら。
なんて良い景色だ!
結構な深さがあるようなので魔力で浮遊しながらゆっくりと降りていく。
途中、鳥とか蝙蝠みたいなモンスターが襲ってきたから全部切り刻んでおいた。
「隙あり!」
「なんでだよ」
洞窟に降りると、レファが蹴りかかってくる。
「あなたが先にやったんでしょ!ふざけんなこのくそリッチ!」
どうやら洞窟に蹴り落としたのを怒っているらしい。
「あっ」
詩織を丁寧に地面に降ろした後、なおも蹴りかかってくるレファの足を掴み、そのまま流れるように抱きしめて地面に立たせ、撫でてやる。
真っ赤になってるな。ということはこれで正解だ。
「行くぞ」
「はい♡」
「……」
洞窟の奥に向かって歩く。
当然詩織はまたぴったりくっついて歩くし、レファも文句も言わずについて来る。
詩織は向こうの世界でもこっちの世界でも俺に好意を持ってくれてるらしく、べたべただ。
一方でレファは向こうでは『くそリッチ死ね』とか言ってるけど、こっちでは元魔王の容姿につられてるのか身に抱える感情を上手く制御できていないみたいだ。
いきなりこっちに来て、いきなり姿が変わって。
それで感情まで騒ぎ出したから混乱してるんだろうな。
だからそっとしておくことにしている。
詩織は何か気付いてるらしく、夜には二人でよく会話してるみたいだけど、俺が聞くべきじゃない気がするからスルーしてる。
地底洞窟の中は薄暗く、ちりちりと皮膚に痛い魔力が漂っている。
普通の人間なら入ろうとなんか思わない、この世界の魔境だ。
だからこそ五神が潜んでいるわけだが……いや、逆か?"彷徨う影"がいるからこんななのかな?
わかんないけど、とりあえず進む。
「
「そうだな。そろそろちゃんと臨戦態勢を取りながら進もうか。良い訓練になるだろ」
「……」
"彷徨う影"が接近したらわかると思うから、とりあえず歩き回るしかないんだよな。
それならモンスターを倒して経験を積みながら行くべきだ。
詩織もレファも前世の姿だと言っても、エメレージュたちみたいに魔力や戦闘技術は受け継いでいないっぽい。
忘れてるだけかもしれないが。
「ブレイブスラッシュ!」
しばらく戦いながら進んで行くと、懐かしいスキルを詩織が使う。
「なかなかの威力だな。剣に纏わせて使ってるから周りに波及しないし」
「はい。以前より使えるスキルが増えてる感じがします」
なるほど。
肉体が覚えているのかもしれないな。
前世の彼女はよくあのスキルを使っていた。
「……」
一方でレファは無言で魔法を放っている。
その魔法も、レファが使っているのは知らないが、見覚えがあるものだった。
「お前もか」
「……」
無言で睨んでくるレファの顔がなぜかちょっと赤い。
なんだ?
「
「あぁ。ならいいけど」
「……」
そこからはさらに多くのモンスターが襲い掛かってきた。
動物系、虫系、鳥系、悪魔系、ゾンビ系、物質系とみさかいなく。
以前よりもかなりモンスターの数が増えているように感じるが……。
なるほど。これのせいか。
半日以上洞窟の中を歩いてきた俺たちが見つけた階段を降りると結構大きな空間に出た。
休憩するにはよさそうだが、この感じはダンジョンだ。
この世界のダンジョンの1つが、オルレングラ地底洞窟の中に出来上がっていた。
「ここは……」
「あぁ。ダンジョンだな。階段の途中で空気が変わった」
「向こうのダンジョンだとしたら、管理室がある場所ってこと?」
「そうだろうな。ちょうどいい。ここにテント張って休憩しよう」
管理室と同じ空間ならモンスターも少ないだろう。
実際、こんなに開けた場所なのに一匹もモンスターがいない。
俺たちは手際よくテントを張った。
そして……
「じゃあ、お前たちは休んでいろ。ここで何かあったらわかるようにしておくから、俺は少し先を見てくる」
「はい。ありがとうございます♡」
「……」
***あとがき***
お読みいただきありがとうございます!
リッチ様の自由奔放さに振り回されている今日この頃ですが、なんと新作を開始しました!
塔ちゃん:この浮気者~~!!!
作者 :デジャブwwwwwwww
塔ちゃん:うるさい!
作者 :頼むよ。頼れるのは君だけなんだ。
塔ちゃん:くっ、わかった。みんな、新作をよろしくな!
作者 :強い探索者、超かわいい探索者が登場するからね!
塔ちゃん:なに?そいつらこっちに登場させろよ!?
作者 :ダメ―!世界が違うからダメー!!!
塔ちゃん:ちぇっ。で、タイトルとかは?
作者 :これです↓↓よろしくお願いします!
『魔力をまき散らす超絶美少女(ただしボッチ)にペア結成を迫られた件~言い寄ってくるSランク探索者から逃げて学院に来たんだけど、まぁいっか。超可愛い子と一緒に頑張ってSランク探索者を目指すなんて青春だね!』
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