第80話 異世界の怖さ?

「ふむ。強制転送のアイテムをエメレージュに持たせておけば、つながった先の世界に行ける予感があったのでやってみたが、ずばりそうじゃったのぅ」


あの空間でエメレージュに渡してたアイテムが強制転送とやらを行うもので、それを持って戦ったあの女が死んだからこっちに送られたということか。

それに周囲を巻き込むようになってたということか?


「それで合っておる。新宿で探索者が死ぬかもと言えば貴様も慌てて駆けつけると思ったしのう。エメレージュの死に紐づけて発動するようにして、その時周囲におるものや、この世界に関係するものを招いて連れて行くつもりじゃった。なぜか数名が強制転移を弾いた理由がよくわからんが。まぁ、そこまでの関係はなかったということじゃろうし、これだけ来てればいいじゃろう……貴様、エメレージュたちはどうした?」

相変わらず思考を読み取ってくる爺さんだな。


だが、うまくいったぞみたいな感じで悪い笑いを浮かべていた爺さんだったが、エメレージュたちがいないことにようやく気付いたらしい。


「あいつらなら消し飛ばしたぞ?残ったのは俺たちだけだ」

「なっ、なにをしとるんじゃ!」

「戦いを挑まれたんだから倒すだろ?」

いや、怒るなよ。腰抜けるぞ?

空にぷかぷか浮いてる不気味な爺さんが唾飛ばしながら怒ってる姿なんて需要ないんだ。

そもそもなんで俺が爺さんの企みに協力してやらないといけないんだよ。

そんなの知らないし、挑んできたのはあいつらだ。たとえ俺がラガリアスに会ったら必ずボコる、毎回ボコると決めていたとしても、手を出してきたのはあいつらだ。



「くそっ、本当に倒しておるな。エメレージュやファルノクスはまだだが、ラガリアスはロサンジェルスでリポップしおった。パラジットもゴルシュもか……」

ふむ。なるほど。

となると、きっと俺がこの世界で死んでもダンジョンでリポップできるな。

だとすると問題は詩織とレファか。


「まぁいい。貴様は安易に死に戻りできんじゃろう。そこの2人は死んだら終わりじゃろうからのう」

まぁ気付くよな。


そもそも探索者を連れて行かせる前提でエメレージュの死亡をトリガーにしたんだろうしな。嫌な奴だ。


「ふむ……この気配は……。よし、候補者であるリッチ……いや、この世界ではヴェルトと言うのかのう。せいぜい頑張るのじゃ。この世界の強者と見え、戦い、乗り越え、力を得て帰還するがいい。そして迷宮神を超えるのじゃ!」

勝手に決めるなよ爺さん。

怒るのか貶めるのか応援するのか、スタンスをはっきりしろ!


「言っておくが、エメレージュたちは元の世界のダンジョンに戻ったのじゃ。早くせぬと、向こうの探索者が死ぬのう。それからもう1つギミックを加えておこう。これから各地の高位ダンジョンにおいて……そうだな、80層ボスで良いな。これにダンジョン内を移動させる。少しずつ浅い層に移動していき、1層まできたら地上に出る」

「なんだと?」

ふざけんな。そんなことをしたら街が……。


「せいぜい急ぐことだ。ちょうどよく強者が嗅ぎつけてきておるようだしのう。では我はそろそろ退散しよう。さらばじゃ」

そう言いきったあと、ジュラーディスはおもむろに自らの首を斬る。

そこには何の感慨もなく、ただただ斬った。


自殺でもリポップするこいつには問題ないけど、そこまで割り切れるものなのか。

くそがっ。

転がる首と、倒れる体。そのどちらもが黒い魔力になって消えていく。

どうせならドロップアイテムくらい残せよ。



「待てジュラーディス!俺は!……行ってしまった」

「お前も自力で死に戻りすればいいんじゃないか?」

クオノリアがなぜ慌てているのか分からない。


「くっ……簡単に言いやがって。俺の力は蓄積型だ。死に戻ったらこの前ちょっと使ったとはいえ、せっかくこの10年貯めて来たものがぱぁだ」

こいつポップして10年も死んでないのか……。

それはある意味凄げぇな。


そう言えば世界ランキング1位のいるパーティを倒したのはこいつだったような……。


むっ……。


「マジックシールド×100」

「気持ち悪いが貴様らと共に行って、死ぬことなく元の世界に戻るしか……」


会話中にとんでもない魔法が飛んできたので全力で防御魔法を展開してなんとか自分とレファと詩織は守った。


さっきジュラーディスが言っていた強者とやらか?


ついでにバレないように詩織たちは隠しておこう。

めんどくさそうだしな。

悪いが今の俺や、やってきたやつのレベルの戦闘には足手まといだ。

もしレファに元魔王の記憶が戻って、あいつと同じように戦えるならまだしもな。



「あっ……???」


あと、悪いな。

特に味方意識のないモンスターをとっさには守れなかった。


「俺の10年間が……くそ~~~~~!!!!!!!」

クオノリアは黒い魔力になって消えて行く。

そしてまき散らされる濃密な魔力。


素晴らしいぞ、クオノリア君。

ありがたく魔力を全部吸収する。

さっきエメレージュたちを消し飛ばした魔法を30発くらい撃てそうだな。

もしまた会うことがあったら1割くらいは返してやろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る