第86話 私刑?(八咫烏のざまぁ回です)
□とある拘置所の中……(黒田)
俺は弁護士と面会しながら裁判対策を立てていた。
この弁護士は八咫烏が雇ったものではなく、俺が直接雇っている。
なぜなら八咫烏の組織の力関係から行けば、問題が発覚した場合、俺は切られる可能性があるからだ。
組織のトップはあんな無能でも四鳳院竜司であり、八咫烏の資金源は四鳳院家だ。
とうぜん切られるのは下からだ。
だから俺は密かに準備をしていたのだ。
いつかこのような事態になることをな。
「では、全て四鳳院竜司の指示のもと動いていたということですね」
「もちろんだ。組織の中で命令は絶対だった。どんなことでも許可がなければ動けなかった」
ただで切られてやると思うなよ?
罪は全てお前が被れ、竜司。
「ダンジョン内のことは自己責任なので、なにを言われても言い逃れできるとは思いますが、外のことは難しい可能性がありますが……」
「そこを何とかするのがお前の仕事だろ?」
「では、やれるだけのことはやりましょう」
こいつは気は弱いところはあるが腕はいい弁護士だ。
過去に何人もの悪人をグレーだと言い張ってきた。
グレーということは処分されないということだ。
弁護士が帰った後、まずい食事を採った後、適当に時間を潰してから寝る。
ここは暇だ。
本を借りることができると言うから借りたが、なぜリッチを讃える本なんだ?
表紙に写る無機質な骸骨がムカつく。
ムカつくが、これしか時間を潰すものがないので、読んでみる。
うん、あまりのつまらなさに眠気が……。
いかんな。寝てしまっていた。
もう消灯時間を過ぎただろうか?
ベッドに横向けに寝ていた俺の視界に骸骨ある。
こんな本を借りるんじゃなかった。
本のことを忘れていたら恐怖体験と勘違いしそうだ。
俺は時間を確認するべく体を起こし、時計を取ろうとしたが、手に取ったのはあの本だ。
やめろ。骸骨なんか見たくないんだ……。
ん?
今、手に取ったのが本なら、起きたときに見えたのはなんだ?
恐る恐る視線をあげると
いた……リッチが。
「なっなっなっなっ……」
なんでこいつがここに!?
おい!刑務官はなにをやっている?
こんな不審な奴を入れるな!
おい!?
「だっ……」
誰かいないかと叫びたかったのに声が出ない。
俺は喉を掴まれていた。
ふざけるなよ?
何しに来た!
てめぇはダンジョンボスだろうが!?
リッチは俺の喉を掴み、締め上げてくる。
やめろ……息が……
さらに何かが流れ込んでくる……
気持ち悪い……
おい……
次に気付くと朝だった。
生きてる……。
あれは何だったんだ?
俺は刑務官に昨日起こったことを訴えるが、夢でも見たんだろうと取り合ってもらえない。
喉を確認しても特に傷もない。
しかし、その日の夜もまた、あいつはやってきた。
寝ていたらいきなり喉を掴まれ、腹を殴られた。
抵抗しようとしたが全く力は入らず、また何かを流し込まれる……。
それは毎晩続いた。
寝ていようが寝ていなかろうがやってきて、喉を掴み、暴行され、何かを流し込まれる。
そのまま意識を奪われ、朝になると何もなかったように……。
ふざけるなよ?
そんな意識は少しずつ削られていく。
10日も続けばもう何も考えられなくなった。
どんどん酷くなっていく。
やめてくれ……。
痛い……痛い……いたい……。
□別の拘置所の中……(竜司)
「だから言っているだろう!私は騙されていたのだ。黒田に!」
「はっ、はぁ……しかし、黒田の弁護士は全て組織の命令だったと先に弁明しておりまして……」
「なんだとぉ!!!!?」
ふざけるなよ、黒田のやつ。
今までずっと組織の力で甘い汁を吸ってきたくせに、自分だけ逃れようとするなど、不届き千万だ!
「証拠はあるのか!やつは自分がSランク探索者チームのリーダーとして組織の中で力を持つために勝手にやっていたのだ!貴様はそれを主張してくればいい!」
「はっ、はいっ!」
逃げるように弁護士が出て行く。
全く腹が立つ。
この俺をこんなところに入れやがって。
四鳳院家は何をやってるんだ。
さっさと手を回せ!
しかしそれにしてもここは暇だな。
暇だと訴えたら、ふざけた本を渡してきた。
なぜリッチについて書かれた本なんか読まなければならないのだ。
俺はその本を壁に投げつけ、寝る。
くそっ、酒でも持ってこいよ。
「ぐはぁ!?!?!?」
なっ、なんだ?
寝ていたら突然の衝撃が全身を襲った。
これはかつて現役の頃にあの暗黒騎士との戦いで全身を潰されたような衝撃……
痛い……
何も見えず、何もできない。
ただ痛みが増し、何かが体に入ってくる……。
耐えがたい気持ち悪さに気を失った。
そして朝……何ごともなかったような部屋の中。
刑務官に昨日起こったことを訴えるが、夢でも見たんだろうと取り合ってもらえない。
その暴行は毎晩続いた。
寝ていようが寝ていなかろうがいきなりやってきて、暴行され、何かを流し込まれる。
そのまま意識を奪われ、朝になると何もなかったように……。
ふざけるなよ?
そんな意識は少しずつ削られていく。
10日も続けばもう何も考えられなくなった。
どんどん酷くなっていく。
やめてくれ……。
痛い……痛い……いたい……。
しかし朝になればなにもない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます