第78話 赤い光の先

「◆●▽!★□▲!!!」

えっ、この声は師匠せんせい???

なんて?って、えっ?


女はそのまま消えてはいかなかった。

半分くらい黒い魔力に変わって薄れているが、その胸のあたりから赤い光が放たれる。


その数は10……この場にいないフランを除いた私たち4人と……そしてあと7つ?


「◆★●□▲▽■〇!!!」

辺りは赤い光に埋め尽くされてしまっているが声だけはする。

やはりこの声は師匠せんせい???

 

「くっくっく。向こうが来ないならこちらから手を出せばよい。ではなリッチ。そしてエメレージュたちよ。せいぜい足掻いてくるのじゃ。ん?なんだ?なぜ力を弾く?……ふむ、面白いのう……」


最後に見たのは白い光が沸き起こり、赤い光を弾く様子。

それは先生から放たれ、姫乃と夢乃を取り込んで……



そこで私の視界は消えた。




□???(リッチ)


「ジュラーディスのやつ。なにを私に持たせたのよ!?」


新宿ダンジョンで誰かがエメレージュに殺されると聞いて慌てて介入したが、赤い光を回避できずに俺も転移させられたようだ。

そして視界……というか意識が戻った時、目の前で1人の女が喚いていた。


口調からするとエメレージュだが……。


え?マジで?

こいつ……王女か?


「なっ……まさか……どうして?」

起き上がった俺の方を見てこの女も驚いている。

自分の腕を見ると……骨じゃない……?


え?


「なぜヴェルト……あなたが……?」

俺……ヴェルトの姿になってんの?


「ヴェルトだと?」

「どういうことだ?」

そして王女メルフィアの横にさらに2人……剣士ラーゲンと賢者サディック……。

バカな……全員処刑されたはず。


いや、魔力を見る限り、ラーゲンはラガリアスだ。

だからこいつはこんなアホでバカでナルシストだったんだな……なんて納得できるわけがない。


どういうことだ???


迷宮神がつなげた世界っていうのは、俺の前世の世界だったのか???

いや、つなげたのは最近のはずだ?

むしろこいつらがダンジョンの中に転生してたのか……。


って、まぁそれなら俺と一緒ってことでまだ理解できる。

今の問題はなんで俺たちがここにいるのかと、なんで昔の姿なのかってことだ。


あれ?これ、もしかして俺喋れるのかな?

めちゃくちゃ懐かしいんだけども……。


「メルフィアたちか……」

喋れたぞーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!


「あなた……」

俺を睨みつけるメルフィア……


「よくわからんが、ダンジョンのボスをやっていて、挑んできた人間を殺していたところに赤い光が飛んできて、気付けばここにいた。なぜだ?」

「キミは喜ぶべきなのではないか?ずっと帰りたがっていただろう」

もうめんどいから全員今の名前で良いよな?

エメレージュは睨んでくるけど、ラガリアスと、なんだっけ?ファルノクス?この2人は俺なんか気にせず喋ってる。


まぁ、こいつらは少なくともこの世界で別れて処刑されるまでの数年と、さらにあっちの世界に行ってからの間、無関係になっていたわけだからきれいさっぱり忘れてくれていいんだがな。俺は覚えてないし。


「2人とも。私たちがあんなことになった元凶がここにいるのよ?」

「そうは言ってもな。戦闘では勝てん……」

「そうだな。向こうの世界でモンスターになったこともあって、相手の力を読むのは得意だ。残念ながらヴェルトには勝てん。見たところジュラーディスよりも強いじゃないか、今のこいつは」

両手を広げて訴えるエメレージュだが、ほかの2人はそっけない。


まぁ、ラガリアスはぶっ飛ばしてわからせたしな。

ファルノクスは前世同様に臆病者だ。


「それに見てみろ。あそこに倒れてるのはあいつの仲間だろ?片方は魔王じゃないか。どう考えても無理だろ」

「えっ?魔王?」

確かに気配としては詩織とレファが一緒だったと思うが……。


「いたたたた。なによこれ……って、えぇ?角がある……」

ちょうど目覚めたレファ……だよな?……が、呻きながら起き上がるところで、自分の額に手を当てようとして角に触れて驚いている。


「レファ……小悪魔じゃなくて、悪魔でもなくて、魔王だったんだな……いや、魔王は譲ってたはずだから、元魔王か」

「え?どういうこと?」

自分の容姿が変わっていることよりも、角があることに驚くレファだが、前世の記憶はないらしい。


そっか。残念だな。

良い友達だったのに。


「元魔王って何?私がそうなの?」

「見た目だけなら間違いなくな。でも、記憶はないんだろ?」

「ない……わね」

「そっか。残念だ。あんなに熱く愛し合ったのにな」

「はぁ???」

俺の発言に対してレファが目を見開くほど驚いている。

やべっ、つい。


「ちょっと待ちなさいヴェルト。魔王と愛し合ったなんてどういうことよ!?」

そして違う方も焚きつけていた。

いやいやいや。浮気し放題のてめぇに文句を言われる筋合いはない。


「お前はクビちょんぱされたから知らないだろうけど、あの後魔王は蘇ったんだよ。もともとそういう術式を組んでたらしいぜ。だから友達になって、たくさん力比べして……その後な」

面白いからそれっぽくしゃべってみる。

すると真っ赤になってるレファと、なぜかエメレージュ。


「あんたのせいよ!そして民衆ども……高貴な私を捕えて首を斬るだなんて……」

ごごごごとか、ぐぬぬぬとか効果音を背負ってそうな感じで悔しがっている。

もしあの夢が事実ならどう考えてもお前のせいだよ。


「まぁいいわ。ここであったのが運の尽きよ。ぶっ殺してやるわ!」

口の悪い元王女様だな……。

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