第74話 戦女神の成長
□新宿ダンジョン(詩織)
「だいぶ連携も取れて来たわね」
「あぁ。よく頑張ってきたな。こんな速度で成長していくとは、私も予想外だった」
私たちは今、80層ボスとして出現したエルダードラゴンを倒したところよ。
チーム結成から2か月が経過し、私たちは連携を高め、チームとしての攻略を進めつつある。
あの新宿ダンジョンのスタンピードで現れた恐怖の象徴。
少なくとも私やレファではあの時点で手も足も出なかったまさに怪物。
本来は深層のモンスターだから、こんなところで出現すること自体がイレギュラーなんだけど、それすら私たちは打ち破った。
前衛は火力特化のフラン。
基本盾役だけど攻撃や支援も可能な姫乃。
中衛の私は指示しながら支援と攻撃、回復を行う司令塔。
後衛では火力と支援のレファ。
そして、支援と回復役の夢乃。
当初は夢乃を抜いた4人で攻略を開始したから、高火力のモンスターには回復が追い付かずに苦戦した。
まぁ、S級のフランと姫乃が全力で戦ってしまうと中衛以降が経験を積めないから、2人には手加減してもらってるんだけどね。
この訓練の中で、レファが大きく伸びた。
まさか
「くそリッチの生み出した魔法を使うなんて歯がゆいけど、
「うんうん。よく頑張ったと思う」
「ぬぁ、ちょっ……」
火力だけならS級に手が届くところまであっさりと飛んで行ったレファが満足そうに杖を掲げる。
それをまるで母親のような仕草で自然にさり気なく頭を撫でる姫乃と、真っ赤になるレファ。
世間ではてぇてぇとか言われそうな小悪魔系美少女と綺麗系美女の図ですね。
残念ながら今日は配信していません。
そしてさらに夢乃が入って、私たちの探索は非常に安定した。
病気のせいで才能はあってもダンジョン探索経験がなかった夢乃だったけど、私たちと一緒に探索することで見る見るうちに実力を高めていった。
「深層だとあれが普通に出てくるからな。良い練習になった。このまま100層は突破できたとしても、101層でしばらく修行だな」
「あれが普通に……うん、頑張るわ」
「えぇ。でも、特にダメージを受けることもなく倒せているわ。今のうちにしっかりと訓練して備えて行けばもっと進めそうね」
「支援魔法何回重ねるの?ってくらい重ねたけど、それでもエルダードラゴンの攻撃を防げたのには感動しちゃった。私1人足を引っ張ってて申し訳ないけど……」
「そこを気にしてはダメだ。そんなの今のうちだけだからな。常に先を見据えていくぞ」
フラン、レファ、姫乃、夢乃。
正直私が何を言うでもなく、みんな前向きに進んでいる。
もともとS級のフランと姫乃は変わらないけど、私はA級、レファはB級、夢乃はC級に上がった。
現時点では後衛2人の防御力が一番心配な点だけど、支援魔法重ね掛けやアイテムで対処可能な範囲でも100層突破は狙えるのではないかと思っている。
ただ、今日の目標はチームでの80層突破だったため、達成した私たちは帰還する。
フランと姫乃にとってはまだまだ余裕の任務のはずが、深層モンスターの登場で負担があったこともあり特に異論は出ない。
「では、今日は戻りましょう」
私の役目はただ締めるだけ。
まるで昔から仲間だったかのようにやりやすい。
みんな
それにしても、まさか2か月も会えないとは思いませんでした。
「あなたたちは……?」
私たちが新宿ダンジョンの管理室から地上に上がる階段を登ろうとすると、降りてきた4人組を見て姫乃が呟く。
「あぁ?てめぇは……」
「どけよ!」
「邪魔すんな!」
「……」
姫乃の知り合いだろうかと思ったが、そもそも人相は悪いし、態度も悪い。
八咫烏時代の知り合いでしょうか?
それなら全員逮捕のはずですが。
「あれは確かヴァラックというチームだったような……?見た目が変な感じはしたけど……」
「ほっときましょう。あんなやつら視界に入れる必要もないわ」
「あっ、あぁ」
姫乃が立ち止まって顎に手を当てて記憶を探っているが、レファが後ろから押す。
きっと八咫烏のことは考える必要はないという気遣いだろうけど、階段を登る途中で背の低いレファが後ろから押す先はその……姫乃のお尻だから、ちょっとどうなの?と思うわ。
「
「はい、お願いします」
「畏まりました」
私は1人で受付に行き、ダンジョン協会職員に探索の報告をする。
これはリーダーの仕事だ。
みんなにはロビーで待ってもらっている。
報酬を6等分することについて、私自身もそうだけど夢乃やレファはちょっと迷いもある。
それでもフランも姫乃も先行投資だと言ってはばからないし、6分の1はチームの口座に貯められるからリーダーとしてはありがたい。
「それでは手続きは以上ですね……すみません。ダンジョン協会本部からの依頼事項があるようでして、聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「えっ?はい。メンバー全員で伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
なにかあったのでしょうか?
この流れは特殊依頼だと思うので、職員さんに確認する。
「はい、もちろんです。会議室を準備いたしますので、お手数ですがA2の部屋にお願いできますでしょうか」
「わかりました」
私達はどんな依頼だろうかと互いに顔を見合わせながら、指定された部屋に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます