第72話 戦女神の目標

「ということで、戦女神ヴァルキリーの戦力強化ね!」


私たちは感動の再会となった病室を後にして今は病院近くのカフェにいた。

そこで明るく言い放つのはレファだ。


姫乃さんと夢乃さんとの面会は無事終わった。

私は師匠せんせいを映し出してあげるつもりだったのに、なぜか師匠せんせいがビデオ通話のボタンが押せないというのでチャットになってしまったが、それでも夢乃さんに実は父親が転生していることを話せた。

めちゃくちゃ驚いてたけど、それは仕方ないわよね。


でも、師匠せんせいが転生していたおかげで私たちが姫乃さんと夢乃さんのことを知ることができて、ダンジョン協会の全面協力の下で助け出せた。

それを夢乃さんはちゃんと理解して、彼女も加わったチャットで師匠せんせいにお礼を書いていた。

もちろん、ダンジョン協会の湊会長や早紀さんたちにも。

 

この子は姫乃さんと双子だけど、性格はかなり違うみたい。

どちらかと言うとお茶目だけど思い込んだら一直線で超アクティブ。

 

病院にいるときも姫乃さんに迷惑が掛からないように大人しくしつつ、実は勝手に病院回線に忍び込んで探っていたらしい。

実は病院内で普通に夢乃さんの名前がシステムに登録されていたのは、夢乃さん自身が退職直前の看護師さんのアカウントを使って入力したかららしい。

強制的に入院させられて1か月間くらいは氏名不詳になっていたらしく、病院も腫れ物に触るような扱いをしていたそうだ。


そんな彼女でも姫乃さんと自由に接触することはできず、八咫烏が月一回外出させて打ってくる注射の意図などを探ることはできなかったそうなので、助け出されたときには驚いていたし、今も全力で感謝してくれていた。

外見はほわほわした美少女さんだから、真面目な顔でお礼を言われてドキドキしてしまったのは内緒だ。

なぜか彼女のことを師匠せんせいのように感じてしまうのは親子だからだろうか?


そして姫乃さんが私たちのチームに加わると告げたら、退院して自分も鍛えたらぜひチャンスをと言っていた。

強い子だなと思う。

最初から加わってしまって、一緒に鍛えたらと思うので、それはこの後相談ね。

そもそも現時点で魔力が見えて、操作もできるって、すごいと思うから。

 

 

「改めてよろしくね、姫乃さん」

「よろしくな、姫乃」

「えぇ。これからよろしく、詩織、フランさん」

ここでフランも合流して、改めて今後の方針を放す予定にしていた。

フランがある意味強引に誘ったチーム結成だったが、姫乃は問題はすべて解消したので早速にでも合流したいと言ってくれた。


「はぁ、可愛らしい系美人と綺麗系美人に姐御系美人と正統派美少女……それにふんわり系美少女が加わる予定の私たちは最強ね!」

フランが合流してさらにハイテンションになったと思ったら、この娘は何を言い出すのだろう?


「ん?レファがいない気がするが」

「え?」

そしてフランの反応が面白かった。

 

「フラン。たぶんレファは自分で正統派美少女って言ってるのよ」

「ん?正統派っていうのはいわゆる清純とか清楚とかと表現されるのではなかったか?」

それで合ってる。合ってるんだけど、可愛らしいし良い娘なのは知ってるけど決して清純ではないレファが言っているこの可笑しさをどう表現すれば伝わるかわからない。


「むぅ、フラン!私こそが清楚で品のある正統派美少女なのよ!」

「なるほど。これがボケというやつなのか。キミは可愛らしいし、気配りできる優しい娘だが、小悪魔とかそっち系だと思う」

ダメだ。笑ってしまう。

姫乃さんすら堪えられてない。


「もう!なによフラン!って、詩織もひめのんもなの!?見てなさいよ!絶対に正統派美少女で人気を取ってみせるんだから!」

この娘は何を目指しているのだろう?


「忙しいな、レファ。戦闘でリッチを倒すくらいに強くなりつつ、そっち方面も頑張るのか」

「えっ?まぁ、うん。目標を1個だけにする必要はないしね」

慎ましい胸の前で握りしめている拳に力を込めながら答えるレファ。

向上心があることはいいことだ。


「わかった。では私もしっかり鍛えるよ。もともとそのつもりだったしな」

「私も今度は真面目に頑張ります」

フランと姫乃もやる気満々だ。

姫乃さんは適当にやっていて世界ランキングトップ100位以内だったんだろうか……。


「私もお願いします」

私ももっともっと頑張ろう。


「まだ弱い私が言うのもなんだけど、チームとしての目標は100層を突破して深層探索。それから師匠せんせいに勝つこと。それに向けてまずは私とレファは個人ランク上げ。あとは夢乃さんが退院したら合流して、彼女も個人ランク上げ。ある程度のレベルになったら連携を高めていく。今後の方針はこれくらいかしら?」

「いいと思います。その……妹のことはありがとうございます」

「あぁ。みんな私が鍛えてやるからな」

「賛成賛成!ゆめのんも実はめちゃくちゃ強そうだしね。魔力使ってハッキングとか、全く理解できないけども」

このチームならもっと強くなれそう。

もっと先に行けそう。


「あとはチームリーダーを誰にするかだけど……」

「詩織ね」

「悔しいけど詩織よね」

「えっ?」

「詩織、お願いします」

「えっ?」

なぜここで全員一致で私なの?

フラン、レファに続けて姫乃さんまで……。


「私は猪突猛進かつ外国人で日本語がわからないことがあるからさすがにマズいだろ?姫乃さんは八咫烏のせいで対人関係はこれからだし、レファはこんなだし」

「ちょっとフラン!こんなってなによ!」

「すみません。仰る通りで。これまであまり人と関わってこなかったので」

「わかったわ。でも、こうやって相談しながらやっていきたいのでよろしくね」

「「「もちろん」」」


私はひとつ息を吐いて、気持ちを改める。


そこに何があるかわからないけど、先を目指さないといけない気がするの。

それが師匠せんせいの目的にも叶うのだから、躊躇する理由もない。


どうせならここに師匠せんせいが加わってくれたらとか思ってしまうけど、さすがにそれは難しいのかな……?



***

ここまでお読みいただきありがとうございます。

無事、カドカワBOOKSファンタジー長編コンテストの応募期間を走り抜けまして、あとは本日9/3 11:59までの読者選考期間を残すのみとなりました。

みなさん、どうか当作品の中間選考突破に向けてお力添え(作品フォロー、星評価(☆☆☆→★★★))をお願いいたします。


また、大変ありがたいことに、いただいた星評価が1,000を、応援(♡)数が1万を突破しました。たくさんの応援ありがとうございます!

コンテストの読者選考期間中の☆1,000達成です。

バンザイ(∩´∀`)∩アリガトウデス


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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