第68話 安心した……

『私もちゃんと罪を償います。私も八咫烏でしたから』


この言葉は重い……。

娘がこんな状況になってしまったことにとてつもない申し訳なさを感じる。

 

もちろん死んでた俺にはどうしようもなかったことだが、何も知らずに自由気ままにやってたことがちょっと後ろめたい……。


皇ちゃん:そのことなんだがな。

早紀  :先に言っとくけど、気に病むことはないわ。姫乃さんも、塔弥君もね。

皇ちゃん:ん?塔ちゃんも?

早紀  :塔弥君のことだから、自分が自由気ままにやってたことを申し訳なく思ってそうだったからよ。

レファ :なんだかんだくそリッチも真面目だもんね。


おい、レファ。なんだかんだとはどういうことだ。

俺は常に真面目に探索者育成をだな……。


姫乃  :お父さんは気にしないで。知らなかったことだもん。こうやって助けてくれて嬉しいよ。八咫烏で色々やってしまったのは私が弱かったから。断れなかったからよ。

詩織  :それも妹さんがあってのことだと思います。もしかしたら気に病むようなことをされたのかもしれませんが、情状酌量の余地とか、そもそも脅迫されてやったということじゃないんですか?

皇ちゃん:えーと、その辺を説明させてもらってもいいかな?

早紀  :ぐずぐずせずに早く話しなさいよ!

皇ちゃん:俺のせい?????

塔ちゃん:頼むわ。その後に考えよう。

皇ちゃん:あぁ。まずは早紀が言った通りだ。今八咫烏の余罪を調べているが、その中で姫乃さんが罪に問われるようなことは見つかってない。

姫乃  :えっ?

レファ :やっぱり。こんな性格のよさそうな子が脅迫されたからってそこまでやってるようには見えないもの。

皇ちゃん:もしかしたら発覚してないことがあるのかもしれないが、もし話せるならどういったことを気にしてるのか教えて欲しい。

早紀  :流れるような誘導尋問。さすが悪人ね……

皇ちゃん:おい!


姫乃が若干体を固くしたから、撫でてやる。

改めて目の前の娘を見るとどう考えても真面目そうな良い娘……どんなものが出て来ても問題なさそうだな。


姫乃  :影山……八咫烏の探索者が他の探索者に嫌がらせをするのを止めれませんでしたし。80層のボスを倒してエネルギー結晶を集めていました。それから、訓練してやれと言われて、いろんな探索者チームと戦わされて、彼らに大ケガをさせました。相手が死んでしまったということはないと思いますが。


やっぱりな。

問題ゼロじゃないか?

しいて言うなら八咫烏を止めなかったことくらいだが、脅迫されてる前提で罪を問うとは思えない。

そもそもダンジョン内は自己責任だ。


皇ちゃん:おそらくどこかのタイミングで任意聴取が入ると思うが、今聞いた範囲は何も問題ないな。

姫乃  :えっ?

塔ちゃん:ダンジョン内は自己責任だしな。

皇ちゃん:そうだ。

早紀  :基本的にダンジョンの外での悪事に加担していなければ問題ないわ。

姫乃  :妹を誘拐されて言うことを聞かされていたので、ずっと無気力だったので、外ではあまり……。

早紀  :辛かったわね。塔弥君、優しくしてあげてね。

塔ちゃん:もちろんだ。

姫乃  :お父さんは抱きしめてくれて。ずっと撫でてくれて。


俺の娘だ。

当然だ。


フラン :すまない。ほぼ部外者なのにずっと聞かせてもらっていた。会長殿。1つ聞きたいが、白鳥姫乃さんは今後探索者活動するのに特に問題はないのですか?

皇ちゃん:今聞く限り、全く問題ないぞ?

フラン :であれば、今はこんなこと考えられないかもしれないが、もし探索者を続けるなら私たちと一緒にやらないか?

レファ :ちょっと気が早くない?もちろん落ち着いたら誘う気満々だったけど。


えーと、お前は恭一はいいのか?

というツッコミは置いておいて、確かに気が早い感じがするな。

さすが猪突猛進系。


フラン :すまない。だが、こういうことはふと一人になると嫌な記憶が蘇ったりするものだ。それでも将来があれば耐えれる。気持ちを切り替えたりもできる。だから。

姫乃  :フランさん、それにレファさんもありがとうございます。私は大丈夫です。夢乃……妹と会って、ちょっとゆっくりしたいですが、その後は探索者を続けたいです。お父さんの目的に私も貢献したい。


姫乃……父ちゃん泣いちゃいそうだよ。


レファ :塔ちゃんが父ちゃんになってるわね。

詩織  :レファ……。でも、姫乃さん。それならもしよければよろしくお願いします。

姫乃  :詩織さんもありがとうございます。そういえばお礼も言えてなくて……。会長さんの言葉を伝えてくれてありがとうございます。

詩織  :そんな。気にしないでください。私もあなたのお父さん……リッチ様にお世話になっていますので。


みんな仲良さげで良かったな。


姫乃  :みなさんのランクはどれくらいなんですか?あっ、フランさんは知っています。

レファ :ちょっと言いにくいけど、私が一番下でCランクなの。頑張って上げるわ!

詩織  :私はBランクです。私も上げます!

姫乃  :あっ、いえ。そういう意味では。強い方が良いというよりむしろ逆でして。

フラン :どういうこと?あっ、責めてるとかじゃないから。

姫乃  :実は妹の夢乃も探索者を目指してたんです。でも、病気になってしまって。それが治ったのならもう一回目指すって言うと思うんです。その時、一緒に受け入れてもらえたら嬉しいなと思って。だから……。

詩織  :もちろんです!

レファ :もちろんよ!

塔ちゃん:かぶったなw

フラン :そういうことなら、それこそ一緒にやったらいいと思う。100層を超えていくには戦力が必要だし、連携もね。これから鍛えればいいから、今がどうとか気にしなくていい。

姫乃  :皆さん、ありがとうございます。

皇ちゃん:それじゃあ、これで俺は失礼するぞ?あとは夢乃さんが東京に移ったら塔ちゃんと姫乃さんに連絡する。面会可能だから姫乃さんは会ってくれたらいい。

姫乃  :ありがとうございます!

塔ちゃん:俺は……まずいよな。

早紀  :さすがに塔弥君が病院に行ったら、お迎えに来たと思う人がでるからやめてほしいわね。



そうしてチャットを終えた。


姫乃はお礼を言ってくるから、水くさいと伝えて撫でまわして今日は帰らせた。


自宅は八咫烏の勢力が見張ってるかもしれないから、ダンジョン協会の施設に寝泊まりさせて貰えるらしい。

至れり尽くせりで本当にありがたい。




「終わったみたいね」

姫乃が帰った後、ロゼリアが見計らったようなタイミングでやってくる。


見計らってたんだろうな。

まぁ、雰囲気的に重い話はなさそうだから、リラックスして……しすぎて久しぶりにこいつに全部吸い取られた。




***

ここまでお読みいただきありがとうございます。

無事、カドカワBOOKSファンタジー長編コンテストの応募期間を走り抜けまして、あとは来週9/3 11:59までの読者選考期間を残すのみとなりました。

みなさん、どうか当作品の中間選考突破に向けてお力添え(作品フォロー、星評価(☆☆☆→★★★))をお願いいたします。

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