第65話 ラガリアス vs リッチ

□赤坂ダンジョン81層


「うるさい。黙って見ていろ。では、あとは正式な手続きをとらずに勝手に侵入した探索者にお仕置きをして完了。楽な仕事だ」

「もう終わりか?では、私はリッチをやろう」


倉庫の中で戦うのは厳しいので、俺たちは倉庫を出て広場に展開する。

そして偉そうに座っていたラガリアスも立ち上がり、倉庫を出てこちらに向かってくる。

あと、どうでもいいけど八咫烏の連中も、戦闘準備万端といったところだな。


「配信中に人間に堂々と襲われるとは思わなかったな」

大剣を構えているフランが呟く。

なんかワクワクしてるよね?


:八咫烏、最低だな。

:いくらダンジョンの中は自己責任とは言え。

レファ:そもそも許可証は読み込ませて通ってるから不正ではないしね。

:さすがwきっちりしてるwww

:でもきっとこれも勘違いとか言うんだろうね

:だからきっちり倒さないとな。


なぜかラガリアスと共闘するような立ち位置で出て来た八咫烏だが、無理じゃね?

ラガリアスはお前らより遥かに強いぞ?

横に立ってるとか不可能だと思うんだが。


塔ちゃん:詩織とレファは下がれ。フランは一応、八咫烏が向かってこれたら対応してくれ。


「なによ、リッチ!私たちも戦うわよ!?」

師匠せんせい!私も八咫烏の相手くらいなら」


:強敵にあいまみえる師匠と弟子の図

:貴様らには力が足りぬ。控えよ!

:お前が控えろよwww

塔ちゃん:あのラガリアスってやつは多分相当強いから、その横で人間が戦うとか無理だと思うんだよな。

:えっ?そっち?

:八咫烏の黒田、やる気満々っぽいですけど?


「リッチよ!遊んでないで抗うがいい。これが私の力だぁああぁぁああああああああ!!!!!!!」

やばい、まだ2人を下げてない。

俺は転移でレファと詩織を抱えて、ちょっといけないところを触りつつ転移で後退させる。

そして、力の解放程度でフランがやられたりはしないだろうが、再度転移してフランを守れる位置に戻った。


:おぉ、なんかラガリアスってやつのまわりに黒い魔力が集まってるな

:ボス感あるなぁ

:みんなあんまり気付いてないと思うけど、今詩織ちゃんとレファちゃん運んでるときにリッチ君がタッチしました!

:リッチ君、こんなときまでキミは!!?

:リッチのエッチ発動!これは勝ったな!!!

:まだ何もしてねぇよ!

レファ:どさくさに紛れて何してんのよ、くそリッチ!!!!

:怒るレファちゃんと赤くなる詩織ちゃんウマウマ

 

くっ、気付いてもそこは黙っててほしい。

でもやっぱりな。人間が横で戦うのは無理だ。


:どうでもいいけど八咫烏の連中、全員吹っ飛んでったぜ?

:倉庫は無事なのがまたウケるwww

:あのモンスターにとって、必要なアイテムが置いてある倉庫>>>>八咫烏wwww

:一応、黒田だけは配信の隅っこに……ほら、あそこ。あそこでなんとか耐えてるな。

:【悲報】いきって登場した八咫烏。共闘するはずのモンスターの力に耐えきれず全員場外!!!

:やめろ、笑わせるなwwwwww


「フハハハハ。喰らえ、アトミックボム!!!」

「※□(光線ラジウス)!」

魔力を変化させて爆弾のようなものを複数投げつけて来たから、全てレーザーのような光の魔法で撃ち落として爆発させる。


「やるじゃないか。だが光魔法なら私も得意だぞ?シューティングレイ!!!」

爆炎がはけるとラガリアスがいない。

今の間に飛び上がっていた。もちろん把握している。

そして同じような光魔法を放ってきた。



「ほらほら、避けろ!ギルオーラ!!!」

さらに白球を放ってくる。

いずれも詩織たちに当たる軌道ではないので俺は回避する。

フランも退避したようだ。


:しれっと始まった、超級魔法戦!

:見たことないれレベルで草

:頑張ってリッチ様♡

:ラガリアスってやつ、イキるだけあって、すげぇな。


「ふむ、さすがに避けるか。ではこれだ!ミストヴェイル!」

光魔法を止めたラガリアスが次に使ってきたのは霧状の魔法だった。

視界だけ封じても意味はない気がする……いや、魔力の認識を阻害するのか。


「もらったぁあぁぁああ!」

「◆△!?」

一瞬相手の捕捉を外した隙に接近していたラガリアスに殴られた。

が、ただではやられない。

前のうん〇シールは剥がされたみたいだから、もう一度貼る。


「くっくっく、魔力で相手を捕捉することができず焦るだろう?喰らえ!」

今度は背後から蹴りかかってくるラガリアスだが、もう無駄だ。

俺は右手に魔力を貯めながら避ける。


「うまく避けたか。しかしまぐれは続かん!うらぁ!!!」

「〇◆△!★◇△◆※☆(メルドマギア)」

まずはちょこまか動くのを止めたいから、エルダードラゴンに使ったものと同じ魔法でラガリアスを捕える。


「なんだと!?」 

ラガリアスは驚愕の表情を浮かべているが、俺が放った黒い魔力に完全に包み込まれ、その中で無数の黒い電撃が走り回る。


「ぐあぁ。きっ、貴様ぁ!!?」

「※◆〇彡(風の息吹)!」

そしてやつが放った霧を散らす。


:おぉ?霧が晴れたと思ったらラガリアスが囚われてる!

:なんか黒い稲妻にうたれてるな……

:あれ、前にエルダードラゴンに使ったエグイ魔法じゃね?

:まじかよ。腕あったら普通に使えるのか


さて、このクラスのモンスターを倒すには相当高位の魔法で行かないと殺しきれずに復活するだろうな……。

となると、転生前に覚えたアレがいいな。


「〇◆△!★◇△◆※☆◇☆◆△★◇※△☆◆★◇※☆◆△★◇〇◆☆△◇※★……」


:なんか唱えてる?

:全く聞き取れんけど、詠唱っぽよな?

:今まで見たことないけど、とんでもないの撃つ気なんじゃ?

詩織:凄まじい魔力が貯まっています。

レファ:なによこれ……震えが止まんない……

:現地やべぇことになってね?

:あっ、黒田が倒れたぞ?気絶か?

フラン:きっと私たちは守られていてこれなんだろうな。恥ずかしながら、私もレファと一緒だ。

:まじかよ?Sランク探索者が???


「〇◆△!★◇△◆※☆◇☆◆△★◇※△☆◆★◇※☆◆△★◇〇◆☆△◇※★◇☆◆△★◇〇◆※☆△!★◇△◆※☆◇☆◆△★◇※△☆◆★◇※☆◆△★◇〇◆☆△◇※★◇☆◆△★◇〇◆※☆△!★◇△◆※☆◇☆◆△★◇……」


:なっ、なげぇ……

:どんなのを撃つ気なんだ?

:明らかにラガリアスの顔が焦ってんだけど。


「貴様?なんだそれは。なぜたかがリッチがそれほどの魔力を?そんな魔法を???」


魔力に捕らえられ、黒い稲妻に打たれているが、それ以上に俺の準備している魔法への恐れからか、震えまくっているラガリアス。


:普通にちびってそうで草

:いや、衝撃的な絵面じゃね?

:リッチ様、ステキ♡

:もう気絶してね???

:かなり高位のモンスターのはずでは???

:喧嘩売った相手が悪かったよね。まさかリッチ君に勝てるなんて思ってたのだろうか?


よし、詠唱は終わった。

あとは方向を固定してと……。


悪いなラガリアス。

俺は探索者を育てなきゃいけないんだ。

そうしないと世界がヤバいからな。


きっと会話しても迷宮神のことに関しては相容れないだろうから、消えてくれ。


「◇〇◆☆▲……(永遠に続く……」

「待って。それはダメよ」


:えっ?

:なぜ???

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