第64話 新宿ダンジョン攻略
□???(ロゼリア)
彷徨う心……。
どうしたのかしら?
新宿ダンジョンの100層ボスから解放された私は適当にダンジョンを歩き回っていた。こんな忙しない性格だったかしら?
リッチはどうしてるかしら……?
おかしい。
なぜあれを気にする?
恐ろしいまでに強大な力を持っているから?
きっと違う。
昔はこんな心は持っていなかった。
妄執のような、棘のある、それでいて甘くもある想い。
いや、なにかを思い出した?
去って行く……お兄ちゃん……誰それ?
私はずっとモンスターだったはず。
いつからか紛れ込んだ?
□新宿ダンジョン(白鳥姫乃)
「到着いたしました」
運転手の言葉を聞いて顔をあげると、私たちは新宿ダンジョン協会の建物の前にいた。
「いたな」
「お久しぶりです竜司さん」
竜司とともに車を降りて協会の建物に入ると、4人組の探索者たちがよってきた。
誰?
「今回の目標は100層のボスを倒し、その奥にあるコントロールパネルを破壊することだ。いいな」
「はい、電話で黒田さんから聞いています」
「うむ」
なにやら話がついているらしい。
4人のうちの1人だけが会話しているが、この人は相当強そうだ。
もしかしたら黒田よりも……。
「こちらは白鳥が行く」
「はじめましてだな白鳥さん。俺たちはヴァラックという探索者チームだ。よろしくな」
「よろしく……」
4人とも下卑た視線を向けてくるのがとても気持ち悪い。
もし私がか弱い女の子だったら震えながら助けを求めるだろう。
周囲からも似たように見えているのか、チラチラ見られるが誰も話しかけてこない。
ヴァラックという名前は聞いたことがある。Aランクの探索者チームだけど素行が悪くてよく低層で探索者に嫌がらせをするからきっと嫌われているんだろう。
竜司は名前は有名だけど肉塊になってからは表に出ていないからきっとあまり知られていない。
有名だった頃とは似ても似つかない姿だし。
ちなみに確かヴァラックのリーダー自身はSランク探索者だ。
逆に残りはBランク。それでチームはAランク。
わかりにくいかもしれないけど、探索者ランクは個人のランクであるのに対して、探索者チームとしてのランクも設定されている。
「このメンバーで入られるんですか?その……」
「なんだよ?なにか文句あんのか?ヴァラックなめんなよ?」
一番弱そうな人がダンジョンに入る手続きをしているが、受付の方が明らかに私を気にしながらヴァラックと竜司と私を見比べるようにキョロキョロしている。
「私なら問題ないので、通行許可をください」
「はっ、はい。わかりました」
「んだよ、早くしろよブス」
人の容姿を侮蔑する言葉を口にするなど人として最低だ。
こんなのと一緒に行動するのはやめたいが、今は仕方ない。
妹を救出できれば終わる。
これまでと違って希望があるだけで、心を殺さなくてもいい。
私は受付の方に軽く頭を下げてダンジョンに入る。
「あれがアンノウンってやつだろ?とっとと……」
わざわざヴァラックに称号を与える必要はないので、私が瞬殺する。
前回100層まで行ったときは黒田が倒したため、私は初だった。
「前回は黒田さんが倒したので、今回は私が頂きました」
「うっ、うむ」
竜司は案外寛容だった。私が味方だと思っているからだろう。
彼が許可したのでヴァラックは何も言ってこない。
あっさりと100層に到達したので、ボス部屋に入るとそこにはまたアンノウンがいた。
「さっきは姫乃ちゃんが倒したから今回は俺だ!お前ら手を出すなよ?」
気持ち悪い顔で"姫乃ちゃん"なんて呼ばないで欲しい。気持ち悪い。大事だから2回言ったわ。
「え~リーダー」
「ずりぃ~でも、なんでまたアンノウン?」
「ずるだ!でも、リッチもアンノウンを操れるのか?」
「少し黙ってろ。とっととやってくるからよぉ」
ヴァラックのメンバーが不満を言うが、リーダーが一周して前に出る。
「ウォーターガード!」
そしてリーダーは水の防御魔法を唱える。
「これで火傷効果が乗ったあの光は防げる。行くぞ!」
そう言うと、剣を構えてアンノウンに突っ込む。
そういえば鑑定もしていかなかったわよね?
見るとアンノウン改って出るから一応違うモンスターなんだと思うけど、大丈夫かな?
"改"って言う文字がもの凄く気になるけど。弱点が同じだとは思えない。
しかし、お父さんたちの攻略動画の通り、アンノウン改は青い光を放ってきた。
ウォーターガードで身を包んだリーダーはきっちりと防いでいるようだ。
「くらえ!ホーリースラッシュ!!!」
アンノウンの場合は青い光を放つときだけ殲滅の光という防御スキルを解除するから物理攻撃が当たる。
それが攻略法になっているが、見る限りアンノウン改は青い光を出していても殲滅の光を消してない……。
これはまずそうね。
「なっ、なにぃ?ぐわ~~~~」
案の定、剣はアンノウン改の体に到達せず、殲滅の光に弾かれる。
すると今度はアンノウン改が黄色い光を放ち、リーダーを吹っ飛ばした。
「「「リッ、リーダー!!!?」」」
ヴァラックのメンバーが驚き、リーダーにかけよる。
アンノウンだったら攻撃しなければ反撃してこない。
でも……
「「「うわ~~~~」」」
アンノウン改はボスモンスターだ。
ボスモンスターはボス部屋に入った人間を攻撃する。当然だ。
そんな当然を忘れ去ったことがヴァラックの敗因だった。
そのままアンノウン改はヴァラックのメンバーのほうにすり寄ってきて、彼らを飲み込む。
アンノウン改の体の中では叫びたくても叫べないようで、困惑や怯え、怒りの表情を浮かべている。
そしてアンノウン改はこっちに向く。
また青い光ね。
「しっ、白鳥!お前が行け!」
竜司はそれだけ言うと、転がって……いや、走ってボス部屋の扉の前まで退避して行った。
ねぇ、元世界ランカーさん……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます