第58話 リッチ様に挑む八咫烏
□都内の八咫烏の拠点にて(黒田)
「もう我慢ならん!お前ら、新宿ダンジョンを攻略して、あのリッチを1回倒してこい!そうすれば変な動きもできないだろう!」
「はい……」
ぷんすか怒る肉塊……じゃなかった、四鳳院竜司の命令により、俺たちの新宿ダンジョン攻略が決まった。
いや、無理だろう。
あのリッチを倒せるイメージはない。
40層ボスの時ですら世界ランキング9位のフランソワードとかいう探索者を倒してるんだぞ?
俺たちの最大戦力である白鳥ですら世界ランキングは98位。日本人としてはナンバー2だ。
あと俺が300位台。他の須藤、影山、蛇沢は世界ランキング500位にも入っていない。
「どうせ殺されはしないんだ。死に物狂いで行ってこい!」
このクソ上司が!
リッチの魔力次第なエセ死に戻りだぞ?もし発動しなかったらお陀仏だろうが!
「リッチは強い……」
喚き散らす竜司に、珍しく白鳥も反対する。
こいつが表情を動かすのは見たことがないし、こうして自分の意志で喋ることすら日常ではほとんどないのに、どうした?
だが、こいつに反対させるのは避けたい。
力関係を思い知らせておく必要がある。
「わかってるだろうな、姫乃。……夢乃がどうなっても?」
「……行くわ」
夢乃ってのはこいつの妹だ。
難病患者で治療法を求めていたところに手を差し伸べてやった。その後、治療目的で病院を移したからこいつは妹がどこにいるか知らない。
それがあるから超優秀な探索者である白鳥姫乃は八咫烏に逆らえない。
「それでいい。おい!お前らも行け!」
俺が白鳥姫乃を押さえつけると、竜司が勢いをかって命令してくる。
仕方ない。トップの命令に安易に逆らう訳にもいかない。
仕方なく俺たちは100層を目指すために、新宿ダンジョンに入った。
なんで入り口付近に温泉が湧いてるんだ?硫黄臭せぇがそれは無視だ。アンノウンはもちろん俺が倒して"称号"とやらを頂いておいた。
「人間の探索者ね……」
「……貴様はロゼリアだな!?」
俺たちが80層を超えて走っていると、不意にあらわれたこいつが話しかけてきたので、全力で警戒する。
巷ではエロゼリアとか言われてるモンスターだが、こいつは強い。
世界中の100層ボスの中でも最高位のモンスター。
種族は始祖ヴァンパイアで、多彩な魔法を操る。
そんなやつが、なんでこんなところを散歩している……まぁどう考えてもラガリアスのせいだな。
エネルギー結晶も尽きそうだし、そろそろあいつは諦めてアメリカに帰らねぇかな?
「そんなに警戒しなくていいわ。戦うつもりはないわよ」
「……なぜだ?」
モンスターの言葉など信じるに値しない。
こう言ってすれ違った後に差してくるかもしれない。
「今はフリーだから人間と戦う義務はないの。じゃあね」
なんだったんだ?
なぜか白鳥をしばらく凝視した後、どこかへ行ってしまった。
そしてあっさり100層に辿り着いた。
まぁ、Sランクの白鳥に加えてAランクの俺や影山に須藤がいて、蛇沢だけはBランクだが問題はない。
問題はここからだ。
俺たちは100層ボスの部屋に入っていく。
少し前にアーカイブで見たラガリアスが入れなくなって足掻いていた扉と全く同じものだが……あれ、どういう仕組みだったんだ?
「〇▽◆※△★?□」
そこには予想通りリッチがいた。
俺たちは散会してそれぞれ戦闘準備に入る。
こいつは強い。
普通にやって勝てるとは思えない。
なら、策を持って弄すしかない。
「俺がメインで相対するから白鳥!お前は魔法準備!蛇沢と須藤はけん制、影山は好きに攻撃しろ!」
「「「おう!」」」
俺の指示に寡黙な白鳥以外が反応し、戦闘になだれ込む。
しかし固い。
魔法や武器による攻撃スキルで波状攻撃を仕掛けるも、どんな攻撃を放ってもこいつの魔法防御を抜けない。
全くダメージを与えられない。
一方でリッチは特に何もしてこない。
なぜか白鳥ばかり見ているが、それだけだ。
Sランクの白鳥以外は眼中にないってことか?
これはチャンスだ。
俺は仕掛ける。
「行くぞ!ピットフォール!」
まず使ったのは罠魔法だ。
リッチが移動する床のほんの一部を陥没させる。
あいつは躓く……ことはなかった。
もしかして常に少し浮いてるのか。しまった……もう連撃を発動してる。
「チェインクラッシュ!!!」
「グランドブレイズ!!!」
「ホーリーストライク!」
俺の魔法に続けて須藤が持っていた鎖でのスキルを、影山が高威力の炎魔法、蛇沢が聖魔法でリッチを攻撃する。
あいつは躓いていないが仕方ない。そういう連携だ。
「うらぁーーー!パワースラッシュ!!!!!」
そこに俺も剣を叩きつける。
そして、
「ピュリファイ!!!!!」
白鳥による浄化魔法がリッチに向けて放たれる。
世界トップ100の聖属性魔法を喰らえ!!!!
しかし……
「
「なっ……」
あいつはあっさりと俺たちの攻撃を避け、この戦いではじめて魔法を使ってきた。
なんだそれは。そんな魔法は知らないぞ!?
降ってくる雨を回避しきれない。
そしてその雨に当たった場所が、溶ける……。
くそっ、俺の手が……足が……体が……。
動くことができなくなり、周囲を見渡すと既に蛇沢と須藤は倒れている。
影山も呆然と溶けていく自分の体を震えながら眺めているだけ。
白鳥は……あいつだけは凄まじい動きで降ってくる魔法を回避していた。
さすがだ。
あいつが生き残っていればまだ……
<挑戦者のうち3名が戦闘不能となり、設定に基づいてダンジョン外に転送されました>
「なっ……くそっ」
須藤と蛇沢と影山はあっさりと落ちて行った。
そして……
<探索者1名が戦闘不能となりました。設定に基づいてダンジョン外に転送されました>
□新宿100層ボス部屋(リッチ)
俺は挑んできた探索者チームを
レファ達よりは耐えたな。
残ったのは1人。
白鳥と呼ばれていた娘……衝撃的なほどあいつに、雪乃に似た女の子だけが残った。
年齢は20歳くらいか。
詩織と同じくらいに見える……。
もしかして親戚か?と思いながら彼女をこの場に残したんだ。
配信開始ボタン押すのを忘れていてよかった。
もし衝撃的な事実が発覚したりしたらまずいかもしれないからな。
そう思いながら、俺は魔法を終了させる。
そして白鳥に見せつけるようにスマホを見せ、SNSを開いて見せた。
白鳥はそれを確認し、彼女も同じようにSNSを開いてくれて……よし、つながった。
これでメッセージのやり取りができるな。
思いのほか素直に聞いてくれたのがちょっと気になるが、まぁいっか。
***
お読みいただきありがとうございます。
お陰様で25万PVを超えました。皆様、ありがとうございます!
読んでいただいた方、さらに作品フォロー、星評価(☆☆☆→★★★)、応援(♡)、コメントを頂いた方々のおかげです。本当にありがとうございます。
引き続き書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます