第55話 チーム結成!

称号獲得のために詩織とレファの探索者カードの更新をしていた俺たちのところに協会職員が駆け寄ってきて話しかけてきた。


「新宿スタンピードのときにここを守って戦って下さったオリヴィエ・フランソワード・リーランチェスカさんを覚えていらっしゃいますでしょうか?」

「もちろん覚えています」

日本語が喋れない俺は無言で詩織に振った。

彼女はそんな俺の意図を100%理解して協会職員に応対してくれた。


当然ながら俺も覚えているぞ。

腕の良い探索者だった。

俺は腕を切り落とされたけどな。


「あの時助かったものね」

「それは良かった。実は今、こちらにいらっしゃっていまして。彼女も勉強してきたらしく多少日本語を話してくれるのですが、何分詳しいことはドイツ語になってしまうようでして……」


なるほど。対応に困ったんだな。


塔ちゃん:チャット欄なら自動翻訳も効くから会話できそうだな。


「そうですね。合流しましょう」


俺がスマホに撃ち込んだ文字を協会職員に見せると、詩織が同意してくれた。




フラン:オリヴィエ・フランソワード・リーランチェスカだ。長いからフランと呼んでくれ。

詩織:水崎詩織です。よろしくお願いします。

レファ:綾瀬レファですわ。よろしくお願いします。

塔ちゃん:リッチだ。よろしく。


俺たちは自己紹介を入力し合った。

フランは前に俺のところに来た時と同様、大剣を背負った状態だったが、ダンジョンの外だからか大人しいな。

派手な赤い髪に、しっかりとした筋肉質なからだのくせに。


あと、全員目の前にいるのにスマホを入力し合うなんて、陰キャのオフ会みたいで面白かった。知らんけど。

 

フラン:あっ、あぁ。

塔ちゃん:違和感あるか?

フラン:違和感というか、不思議だな。モンスターがスマホを打ってることが(ドイツ語)

レファ:まぁくそリッチだしね。慣れて、としか言えないわね。

フラン:わかった。


そしてその様子に微妙な表情をしていたフランだが、レファに聞かれてぶっちゃけやがった。

あぁ、そうだよな。俺がおかしいんだ。わかってる。

 

詩織:フランさんはどうしてここへ?日本語を勉強されてるのですか?

フラン:あぁ。私はこっちに引っ越してきたんだ。

塔ちゃん:俺に会いに?

詩織:なっ……!?

レファ:ぷっ……いたっ!このくそリッチ!か弱い私になんてことを!?

フラン:あぁ、そうだ。ここでなら私はもっと強くなれそうだ。

詩織:なっ……!?

 

速攻で小さく噴き出しやがったレファにはデコピンを喰らわせつつ、フランの反応を見ていたが、先に詩織がフリーズしていた。

なんでだよ。


ちょうどいいじゃねぇか。


塔ちゃん:今から新宿ダンジョン1層のボス倒しに行くんだけど、一緒に行くか?

フラン:いいのか?

レファ:歓迎!ちょっと厳しいんじゃないかと思ってたのよ。

詩織:そうですね。海堂さんたちは倒してましたが、私とレファちゃんだけだとちょっと物理攻撃が弱くてですね。

フラン:ぜひお願いしたい。


あっさりと決まって、詩織とレファがフランの手を取ってピョンピョンしてる。

ほぼ初対面なのに仲良いね君たち。


探索者ランクに差はあるが、俺から見たら誤差みたいなもんだ。

こっから魔力活用を鍛えて、称号も取って、基礎を固めて、経験も積んで行けばすぐに埋まるだろう。





「あれが1層BOSSか」

「えぇ、そうよ。気持ち悪いわ」


アンノウンは相変わらず工場があった辺りでうにうにしている。


よし配信しておこう。


:いやっほう!!!

:待ってたわリッチ様♡

:今日はどこだ?

:アンノウンが見えるから1層か

:今日は華があるな……って、なんでフランソワード様?????


賑やかでいいな。


塔ちゃん:日本にやってきてたらしくてな、新宿ダンジョン協会職員に引き合わされて、一緒にダンジョンに入った。


:なるほど。

:朝までの討論会カムバック!!!

:いや、100層ボスになったはずのリッチ様が普通に出歩いてることが気になるんだが……

:そんなのリッチ様なら当然よ!あんなラなんとかなんかに負けたりしないわ!


うん、賑やかでいいな。



詩織:今日は私とレファとフランさんでアンノウンを倒すから見ていてくださいね!

:あぁしおりんが可愛い。レファ姫も可愛い。フランさんも素敵♡

:リッチ様、探索者育成譚じゃなくてハーレム育成譚になってるwww

:顔面偏差値が一番高いのはリッチ様だけどな

:えっ……?

:骨フェチ?


「じゃあ倒し方は海堂さんたちと一緒。私が水系の魔法であなたたちを包むから、まずは接近して攻撃お願いね。青い光を放ってくると思うけど、無視して物理攻撃を通してね」

「はい!」

「……」


塔ちゃん:レファが魔法で防御するから、自由に倒せ。なんか一気に過剰戦力になったけど、まぁ実験だしな。

フラン:なるほど。わかった!

レファ:あっ、ごめんなさい。『私が水系の魔法であなたたちを包むから、まずは接近して攻撃お願いね。青い光を打ってくると思うけど、無視して物理攻撃を通してね』

:レファちゃんなにしたん???

フラン:まだ長い文章とかはわからないから、書いてくれて助かる。ありがとう。

:なるほど。フランさんのためか。さすが優しいレファちゃん。

レファ:くっ……

:恥ずかしがってんの草wwwww

詩織:では行きましょう!






戦闘自体はそれこそあっという間に終わった。

結果としては目論見通り。

アンノウンは青い光に直接当たりさえしなければ、こいつはザコだった。


そして黒い魔力になって消えていくアンノウンから海堂たちの時と同じようにオレンジ色の光が現れて3人を取り囲む。

以外だな。2人だけかと思ったけどフランもか。


「さすがフランさん。凄まじい攻撃力ね」

「レファの魔法は良い精度だったわ。動いていてもずっと包んでくれてたわね」

「2人は本当にBやCランクなのか?もっと高くてもよさそうだ……私の日本語合ってる?」

「たぶん通じてると思います!」


消えていくアンノウンを見つめる俺をよそに、3人できゃぴきゃぴしている。

すまん、表現が古くて。

なんか輪に入れなかったんだ。



:ガールズチーム結成とかなのか?

:見た感じ相性良さそうだったな

:結成なら推すぜ!

:フラン、詩織、レファ……いいな……

:美女3人をリッチ様が見守ってるのウケる

:完全に誰かをお迎えに来てる絵だからめっちゃ不吉だよな

:wwwwwwww

:しおりんのライバルが増えた涙

:いや、骨とラブコメはなかなかないだろ……いや、ありそうで怖いな

:詩織ちゃんだけは既に完全に骨ルートよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る