第54話 称号開放

「「称号???」」

可愛らしい声が揃ったな。


仲良くしてる探索者たちに探索者カードを見せてもらって、さらにいろいろと話を聞いてみたが、やっぱり"称号"について知ってるやつがいない。


おかしいよな。

俺のモンスターカードにはしっかり"伝道者"、"魔帝スペルエンペラー"、"不死の王アンデッドキング"、"異界の勇者"とかが載ってるのにな?

直接ステータスが数値で表示されるとかそういう機能はないけど、称号はバフとして効果を発揮しているはずなんだ。


なのに何で人間のカードにはないんだ?


見た感じは似たようなカードで、どっちもダンジョンの力で生み出してるカードなんだ。

名前とかスキル、職業はどっちのカードにも欄がある。

なのに、なんで人間の方には称号がないんだ?


う~む……。

これ、ダンジョン併設の協会で作ってるんだったよな……。

もしかして機能解放されてない、とかかな?


塔ちゃん:ちょっと協会にあがっていいか?カード発行機を確かめたい。

皇ちゃん:わかった。連絡しとく。

詩織:私たちも行っても良いですか?

レファ:しれっと私も入ってるわよね、それ。

詩織:嫌だったらいいけど。もし称号っていうものが手に入るなら……

レファ:行くわよ!行くに決まってるわよ。抜け駆けは許さないわ!


なんていうやり取りの後、俺たちは新宿ダンジョン併設の協会施設に集まった。


新宿ダンジョン協会の職員は慣れたもので、俺が上がって行っても探索者が来たのと同じように案内してくれた。



「どう見ても同じ素材で作られているように見えますね」

「ですよね」

カード発行を担当している協会職員の言葉に詩織が頷く。


チーム解散のショックは引きずってないようで安心しつつ、明治神宮ダンジョンの30層とかで出てくるシャイントレントっていうモンスターからレアドロップする"御神酒"をプレゼントしておいた。

真っ赤な顔で『ぷっ、プレゼント……♡』とか呟きながら酒を抱きしめてたけど、この娘、大丈夫だろうか?


塔ちゃん:カード発行機も見せてほしい。


「わかりました。こちらです」


職員が指をさしたところには大きな機械のようなものがある。

人が入ってスキャンされる部位と、カード発行する部位が組み合わさっているようだ。


俺は細すぎて扱いづらい指でカード発行機のタッチモニターを叩く。

これはダンジョンのコントロールパネルと似てるな。



そして気付く。



これが、100層にあるコントロールパネルの一部だということに。


カード発行機という名前の通り、カード発行の機能だけが取り出された部分だな。


機械の設定画面を上から読んでいく。


うん……ない……。


称号に関連しそうな記述はない。


いや、カードに表示される項目は別で設定されてるみたいだな。

規程された項目を表示することになってる。


ということは、100層のコントロールパネルの方に……




あった。



ん?なんでここでいじってるのかって?

そもそもなんで普通に100層のボス部屋を出てるんだって?

そんなもん、管理者権限でどうにでもなったさ。


ラガリアスのやつは100層ボスとして俺が100層のボス部屋にしかポップしないようにしただけで、俺の行動を制限したりはできていなかったんだ。

そしてこのダンジョンのアンノウンはモンスターを攻撃しない仕様みたいで、俺は通り放題だった。


だからカード発行機を確認するにあたって、100層ボス部屋の奥にあるコントロープパネルも持ってきた。


そのパネルをタッチしていくと、カードに関する設定画面があって、そこの中に目的のそれはあった。


カードに表示する項目を選択できる機能だ。

俺は当然ながらしれっと人間カードの設定で"称号"のチェックを入れる。

すると次のコンソールが開いて、探索者ランクを聞いてきた。

どうやらここで指定したランク以上になれば称号が表示できるらしい。



「ちょっと!Cにしなさいよ!なんで私を見ながらあえてBを選ぶのよ!?」

とりあえず詩織とレファを見ながらBを選ぼうとしたら、Cランク探索者であるレファが怒りだしたのでCを選んだ。


すると次のコンソールでは、範囲を聞かれた。

ここで新宿だけを選んだらここの職員が死ぬほど忙しくなるな……。

どうやらカード更新をしないと表示されるようにはならないらしいけど、新宿限定にしたらここに探索者が殺到……Cランク以上ってそんなに多くないのかな?

日本に30万人くらいの探索者がいるとして、Cランクなんて1万人行くか行かないかくらいか……。


まぁいい。

俺は探索者全体を育てたいんだから……



塔ちゃん:ここで"称号"を解放できる範囲が設定できるらしい

皇ちゃん;範囲?

塔ちゃん:新宿ダンジョンだけっていうのもできるし、日本全体もできるな。

皇ちゃん:なにぃ???

詩織:さすがに新宿だけにしたらここに殺到しそうですね。

皇ちゃん:そうだな。それはまずい。ちなみに世界とかもできるのか?

塔ちゃん:世界は無理だな。最大で日本だ。


どうやら日本のダンジョンはなんらかのつながりがあるらしい。

ここで一気に操作できるっぽい。

でも、他のダンジョンで誰かが設定を変えたら日本全体で変わるのかな?


まぁいっか。とりあえず"称号"を解放しよう。

ポチっと……


ん?まだコンソールが開くな。他に何を聞くことがあるんだ?


<"称号"の解放に必要なエネルギー結晶を使用してください……>


は?エネルギー結晶ってなに???


えぇと……


皇ちゃん:どうした?

レファ:どうやらエネルギー結晶って言うものが必要らしいわ。

皇ちゃん:なんだそれ?


皇ちゃんでも知らないのか。

うぅむ、進むと思ったのにな。


ん?でも、このメッセージ続きがあるな。ポチっと。


<……赤坂ダンジョンに使用可能なエネルギー結晶がありますが、使用しますか?>


赤坂ダンジョンだと?

確か八咫烏が管理してるダンジョンで、ラガリアスのうん〇シールが剥がされた場所だったかな?

ならいいよな。

エネルギー結晶のことを協会が知らないなら出回ってるアイテムじゃないんだろうしな。


ポチっと。


<エネルギー結晶を256個消費し、選択された日本国内において"称号"機能を解放しました>


塔ちゃん:よし、完了だ。詩織とレファのカード更新しようぜ。

レファ:やったー!お願い!!

詩織:お願いします。



そうして読み込んだ2人のカードには称号欄が現れた。

また、2人とも2つの称号を持っていた。


詩織の称号:"探索者"、"不死王への妄執"

レファの称号:"探索者"、"不死王に抗う者"


不死王って俺のことだよな……?



「あの……」


塔ちゃん:ん?


詩織とレファの称号欄にあった自分の記載に唖然としていると、ダンジョン協会職員が声をかけて来た。


「新宿スタンピードのときにここを守って戦って下さったオリヴィエ・フランソワード・リーランチェスカさんを覚えていらっしゃいますでしょうか?」

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