第52話 アンノウンの倒し方
ふむ……海堂が挑むのか。
ならラガリアスの発言は一応メッセージで送っておこう。
ついでに配信するように書いておく。
さてどうなるか。
「唯我独尊チャンネルのスタートだ!」
「……」
スマホで海堂のチャンネルをタップすると、ちょうど配信を始めたところでどや顔の海堂と、恥ずかしそうに視線を下げる紬が映る。
こいつら、相変わらずだな。
海堂はバトルジャンキーと言って過言のないやつで、以前俺の噂を聞きつけて紬を引き連れて挑んできたんだ。
その頃はまだどんな奴が来てもボスモンスターとして真面目に戦っていた俺は、海堂のことをAクラス探索者だとは知らずに生意気な探索者としてぶちのめして全裸にして転がしてしまった。
海堂が配信していたことには、当時は気付いていなかった。
ただ、海堂の配信の視聴者たちは少しずつ有名になる俺のことを知っていたようで、『リッチ強すぎじゃね?』『海堂イキってて嫌いだったからすっきりしたぜ』『リッチ様♡』なんていう反応をしてたらしい。
それから1週間連続でこいつは挑んできたんだ。
毎日毎日暑苦しかったな。
紬もウザそうな顔で俺たちの戦いを見ていたけど、毎回海堂を裸で転がすたびにちょっとニヤニヤしてた……。
ただ、それで俺の強さが知れ渡ってしまって探索者が来なくなったのは失敗だった。
まぁ、あいつに最後倒される時にあいつが配信してたスマホを偶然持ったままやられたら、なぜか次にポップした時にスマホが装備品扱いで一緒に出たんだよな。
そっから適当に弄ってたら昔使ってたSNS見つけて皇ちゃんとつながって、面白がったあいつが配信機材用意してくれたんだ。
探索者育成のためにもいいし、まずは海堂へのアドバイスとして前のめりすぎる戦闘スタイルを批判し、もっとよく相手の特性を考えながら動作を見るように伝える短い動画を作ってアップしたら大騒ぎになったんだ。
って、昔話をしてる場合じゃないな。
さっそくアンノウンと戦うらしい。
:待ってました!!!
:頼むよ海堂さん。うっとーしいアンノウンを倒してくれ!
:そうしないと八咫烏がうざいんだ
「はっはっは。任せろ!行くぜ~!!!」
「……」
画面の中で海堂が剣を構えながら叫んでいる。
紬は相変わらず恥ずかし気に俯いたままだが、いつものことだな。
画面の中で海堂は特に魔力を纏わせずにただ剣を振り上げて飛び掛かる。
どうせ光に阻まれるから強化すらかけずに突っ込んだな。
アンノウンはうにうにしているだけだが、海堂の剣が当たると青い光を周囲に放つ。
あれが厄介なんだよな。
喰らうと火傷を受ける変な攻撃だ。どう見ても炎系の攻撃じゃないんだがな。熱線みたいなもんなんだろうか。
「フリージング!」
海堂とアンノウンの様子を眺めていた紬だったが、アンノウンが青い光を放ったところで、彼女も魔法を放った。
冷気を放つ魔法だ。
:おぉ、紬ちゃんの十八番!
:いつ見てもキレイだ……魔法じゃないよ?キミのことだよ?
:こんなとこで口説きに行っても紬ちゃん見てないからさwwwww
:アーカイブでワンチャン!
:ないだろ?このチャンネルの動画編集担当、まさかの秋月だぜ?
この魔法自体には本来あまり攻撃力はないが、日本トップクラスの魔法使いである紬が通常よりも低温かつ冷気の中にとげ型の粒子を混ぜ込むイメージで使用することによって一定の威力を持ったものになっている。
教えたことをちゃんとやり続けてるな。
そんな冷気が紬のコントロールで海堂の周囲に集まる。
おぉ、青い光による火傷を海堂は喰らってないな。
やっぱり熱線を絞らずに全体放出してるのか?
「サンキュー紬!って、おぉ?」
その冷気を纏った海堂が青い光を放ち続けるアンノウンを攻撃しようとすると、冷気が触れた部分だけアンノウンの体が凍った。
やっぱりな。
攻撃中は殲滅の光を消してるっぽい。
:おぉ!
塔ちゃん:あのバカが言ってた通りだな。青い光を出してる間は殲滅の光はない。
:いけぇ海堂さん!!!
「チャンスだおらぁ!!!パワースラッシュ!!!」
そしてその凍った場所に海堂が剣の腹を叩きつける。
スラッシュとか言いつつ1ミリも斬るつもりがない打撃攻撃だったが、凍った部分を破壊するにはうってつけだった。
そしてアンノウンの中心部に向かってあっさりと海堂の攻撃による衝撃が突き抜けていき……
ん?倒したな。
衝撃で核を割ってる。
:倒した!!!
:さすが海堂さん!
:初見であっさりwww
アンノウンの体が黒い魔力に変わっていく。
その中でふと明るい色の魔力が見え、それが海堂と紬にまとわりついたが、一瞬で消えていった。
あれはもしかして……。
「ひゃっほう!なんかドロップしたぜ?」
:おぉ、なんだなんだ?
:凄そうなやつが出現させた凄そうなボスが落とすんだからなんか凄いものなんだろうな?
:海堂く~ん、ステキ~♡
:さすが海堂さん。ファンが多くて羨ましい。
:お前キッズか?いや、知らない方がいいな。
「秋月、開けるよ~」
「ちょっ、お前早いよ。ここは配信に見せるようにさぁ」
「なにこれ。アンノウンミニフィギュア1/100……いらな~~~~い」
:いらね~~~~~~
:ウケる。超期待させといてただのフィギュアwwww
:無性にあの凄そうなモンスターに苛ついてくるな……
:そもそも倒し方わかったらそんな強くない……凄くない……?
塔ちゃん:そうだな。熱線自体は多分弱いけど、触れると火傷付与してくるっぽいな。だから当たらないようにすればいいだけっぽい。
:でもなにか使い道があったりして……あっ
:紬ちゃんの豪快なかかと落としだぁ~~~~!!!!!!
:素敵……僕も蹴られたい……
塔ちゃん:海堂、紬、ありがとな。あとはアンノウンがリポップするかどうかだが。
「リッチさん。了解です。一応様子見しておきますので、何かください」
:wwwwwwwww
:流れるような自然なおねだりwwww
塔ちゃん:あぁ?なんかお前がいるようなもんあったかな?なんか探しとくわ~
「期待しとくわ~」
紬に破壊されたフィギュアを悲しそうに持ち上げてた海堂の表情がパッと明るくなる。
塔ちゃん:紬だけな。海堂はいろいろ教えてやったからいいだろ?
「なんでだよ!?」
からの、フィギュア地面に叩き付け。ただのゴミだな。
:海堂さんおあずけwwwwww
:お約束だなwwww
後日、紬には周囲の残存魔力を吸収する効率的な方法をまとめたレポートを送っておいた。
海堂には俺と詩織のツーショット写真を送っておいた。もちろん見せつけるためだ。
強くなるのもいいけど早くしないと紬に愛想つかされるぞ?
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