第48話 アンノウン vs 詩織・レファ・恭一

□新宿ダンジョン協会にて


詩織:それでは挑んでみますね

レファ:頑張るわよ!

皇ちゃん:くれぐれも無理はするな。

塔ちゃん:様子見でいいからな。

恭一:でも、倒せるようならいいんですよね!!


ダンジョン協会の湊会長から連絡を受けた詩織と、レファと恭一たちは新宿ダンジョン協会に集まってチャットをしている。


意志を持ったモンスターであるラガリアスが設置した新宿ダンジョン1層のボスモンスターの調査を行うためだ。


ラガリアスの魔力のせいか、新宿ダンジョン100層ボスになった俺でも1層の様子を感知できないから、チャットや配信で伝えてもらえると助かる。


現在の新宿ダンジョンはBランク以上か、もしくはCランク以上で協会が認めた探索者のみ入れるようになっているが、誰も好き好んで入らなかった。


唯一八咫烏やたがらすっていう探索者チームだけが入ったようだが特に報告はなし。


それに業を煮やした皇ちゃんが詩織たちに偵察を頼んだ、という状況だ。

ただ、新宿スタンピートでオークタイタンと戦っているところが日本中に放送された夢猫ドリームキャットの詩織以外のメンバーはどうやら活動休止中らしい。

心配した親たちに止められでもしたのだろうか?

 

皇ちゃん:頼むぞ。1組入っていった探索者は普通に出てきたんだが、特にボスモンスターに関する報告は挙がらなくてな。

塔ちゃん:普通に出て来てるなら遭遇しなかったか、危険度が低いかだが……。

詩織:わかりました。まずは無理せず探ってみます。

皇ちゃん:あぁ、頼む。

 

そうして詩織たちがダンジョンに入っていく。

皇一が見てるからかレファが大人しいのが新鮮だ。

こいつはもっと賑やかなことが多いんだが、場は弁えてるっぽい。


配信を限定公開にしてつないだままにすることになっているから、そのまま視聴を続ける。

100層ボスなんかやることがなくて暇すぎてな。


ちなみに教育動画はかなりの速度で視聴数を増やしてるらしい。

たまにそっちに来る質問にも答えてやってるぞ。



「あれ……なんでしょうか?」


詩織たちがダンジョンの1層に入ると、さっそく見たことがないモンスターの姿を捕えた。

それはとても巨大ななにかで、プルプルしながら管理室の前に佇んでいた。


スライムか?


「鑑定!……アンノウンって表示されてるわ」


早速レファが鑑定する。

すでに杖を構えて臨戦態勢だ。


「よし、僕がまず攻撃する。どんなやつか様子見をしながら戦おう!」

 その横にいる恭一が剣を構えて勇ましく宣言するが……


塔ちゃん:待て!

レファ:えっ?


「待って!恭一、ちょっと待って!」

「なっ、なに?レファ」

「くそリッチが待てって言ってるわ」

やりづらいな。コメントと音声だと、当然音声の方が早いし、コメント見てないやつには意図が伝わらない。


塔ちゃん:あいつを取り囲んでる光が気になる。あれだけに絞って鑑定を使えないか?


「あれだけに絞って?うーん……」


俺のコメントにレファが腕を組んで考え込む。

アンノウンは特に攻撃はしてこない。


塔ちゃん:詩織。魔力の使い方をレファにも伝えられるか?魔力の知覚の仕方とか絞り方を。


「わかりました。レファ、魔法を使う時の魔力の動きは意識できる?」

「えぇと……」


女の子二人で話し始める。

俺と皇ちゃんと恭一はその姿とアンノウンを交互に眺める。


「なにか危険を感じるということですか?」


皇ちゃん:違和感はあるな。あそこらへんには確か工場が作られてたはずなんだが、跡形もない。

塔ちゃん:そうなんだよ。スタンピートの時に通った時はもっとごちゃごちゃしてたのに、今では更地だ。もしかしたら全部飲み込まれたのかなと思った。


「なるほど……だとすると、魔力を吸収するとか喰らうとか、そんな特性があるとか?」


塔ちゃん:だな。もしくは溶かすとか、消し飛ばすとか……。

皇ちゃん:こわっ。


「それは闇雲に攻撃するのはまずそうですね」


塔ちゃん:そうなんだよ。特になんか大人しくウニウニしてるだけだろ?なのに周りに何もないんだ。あるのは攻撃の跡っぽい地面の傷だけ。それでも入ったはずの探索者は普通に出て行ってる。どういうことかなと思ってな。


「そう言われてみると、周囲に魔法攻撃と思われるものの跡がありますね……」


皇ちゃん:戦闘を行ったけど倒せなかった。でも、探索者は普通に出て行った?

塔ちゃん:よくわからんだろ?それで限定的な鑑定で調べられないかなと思ったんだよ。




「わかったわ!」

「よかった。それじゃあやってみて」

詩織からレファへのレクチャーは終わったらしい。

レファが魔力を絞ってるのがわかる。飲み込み早いなアイツ。むしろなんか慣れてる感じにすら見える。


「鑑定!……えぇ?」

「どうした?」

レファが驚きの声を挙げ、恭一が尋ねる。


「あの光。"殲滅の光"って表示されてるわ。魔力を一切通さないって書いてある」

レファが鑑定で得られた情報を呆然と呟く。


塔ちゃん:まじかよ。やっかいな特性持ちだったな、やっぱり。



「そんなのどうやって倒せば?」

詩織は考え込む。

その視線の先で、相変わらずアンノウンがうにうにしている。

いや、ちょっと動いたか?



皇ちゃん:とりあえずあのモンスター……アンノウンは自分から進んでくるようなことはないようだな。

塔ちゃん:そうみたいだな。ずっとあの場所にいるな。

詩織:魔力を通さないとすると、有効な攻撃手段が私たちにはないですね。


詩織は魔法剣士、レファは魔法使い、恭一は騎士だ。

しいて言うなら騎士の恭一が大剣を使っているが、スキル構成は防御と回復寄りだ。


「まぁいいわ。今聞いた魔力の扱い方を参考にして……」

悩む俺たちをよそに、レファが動き出した。

こいつ、結構考えなしに突っ込むもんな。


「レファ?なにをする気だい?」

「……」

恭一が話しかけるが無視……というより集中してるな。


「いくわ」

レファがそう言うと、工場があった辺りに散乱している資材が浮かび上がる。

魔力で浮かべてるのか。なるほど。魔力は通さないから、物理的なダメージを狙うんだな。


「もっと高く!!!」

レファが叫ぶと資材は空に上がっていく。


ダンジョンは地下に降りていくのになぜか天井は高い。

きっと時空がゆがんでるんだろうなと思うくらいには。


そんなダンジョンの空に浮かび上がっていく資材。


「行け!!!!」

どこまで上にやるんだろうと思っていたら、視認できるギリギリのところでレファが叫び、資材が落ちてくる。

なかなかの速度だ。

きっと魔力で加速もさせてるんだろう。


その資材がアンノウンに降り注いだ。



が……


「危ない!!!?」


資材がアンノウンを直撃するか否やのタイミングで青く光り出した。


その光がまぶしくて周囲が見えない。






 

「大丈夫?レファ!?恭一さん!?」

「くっ……」

「きょっ、恭一???」

声が聞こえるから3人は生きてるっぽいが、焦りを感じる。


皇ちゃん:おい、全員撤退しろ。あの攻撃はやばい。


「恭一?恭一!!??」

「レファ。私が担ぐわ。行くわよ!」

慌てているレファを宥めて詩織が恭一を担いで脱出するようだ。


きっと詩織の方が後ろにいたから傷が浅いのか?




なんとか戻ってきた3人だったが、詩織は体のいたるところに火傷をおっていたし、恭一はさらにひどく全身大火傷で動ける状態ではなかったので入院となった。

レファだけは恭一の後ろにいたおかげで、ほぼ無傷だった。




***

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リッチ様:強そうなのがいる……こっちの世界に乁( ˙ω˙ 乁)コイコイ

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