第12話 サムズアップ

俺は迫りくる3人の攻撃を迎撃するため、3つの魔法を準備する。


この世界の探索者たちは、基本的に魔力の扱いをわかっていない。

スキルや魔法を唱えて発動できてバンザイ。

みんなこんな感じで単純で、ダメダメだ。


本来、魔力はもっと利便性が高く有用なものなんだ。

こうやって周囲に最初から展開させておけば魔法やスキルの発動は早めることができる。


魔法の発現を途中で止める技術を身につければ、発射前の段階で並べたりすることもできる。


よし、順番に来るみたいだから、少しお手本に見せてやろう。


「行け!ホーリーアロー!」

「リバースプロテクト!」

「ぐぁ……」

海斗の攻撃を弾き返し、

 

「うぉおぉぉおおおおお!聖拳弾!」

「リバースプロテクト!」

「うわぁ……」

大輝の攻撃を弾き返し、


「リッチさん!覚悟!セイクリッドスラッシュ!!!」

「転移!」

「くっ避けられた!詩織!」

裕美香の攻撃を避ける。


前回教えたように少しずつタイミングをずらして攻撃してきたが、準備していた魔法を順番に発現して切り抜ける。


「シャイニングフューリー!!!」

そして詩織が銀色に輝く魔法を放ってくる。

おぉ!はじめて使うスキルだな。覚えたのか?

 

俺に向かって銀光が降り注ぐ。早い……これはカウンターは無理だ。

「ダークスフィア」

俺は両手から魔力を吸収する球体を出現させ、降り注ぐ銀光を吸っていく。

間に合わずに一部喰らってしまったが……弱体化していてもまだ戦えるな。


よしっ、次が来る前に……


「闇転!」

俺は周囲に展開させて残っている魔力を一斉に闇属性に転換し、ボス部屋を覆う。


ここは新宿の40層のボス部屋いつものへやに比べて狭いから弱体化した魔力量でも行けた。

これでこの部屋では聖属性は使えない。

準備していたものがあっても消し去る……


「バーストストライク!」

なにっ?


しかし、詩織が選んでいたのは炸裂魔法。

俺の魔法の展開を読んで変えてきたのか?


「マジックシールド×2」

なんとか間に合った魔法障壁から他のメンバーを覗くが、彼らは聖属性魔法を撃ち消されて一旦動きを止めていた。


詩織だけが反応してきたか。

ふむ。いいな。

状況をよく見れている子だからある程度の準備というか、想定までできているのかもしれないな。

魔法の行使速度がだいぶ速くなったし、選択も間違っていない。


こういった技術は本来100層を超えた先の深層攻略で身につけるようにということなんだとは思う。敵のモンスターも体系化されたスキル外の攻撃を繰り出してくるようになるからだ。それを見て覚えろということだろう。


まずは探索者を増やすためにスキル体系を整備して、とっつきやすくしたと言われれば理解できる。


なぜこの世界の破壊を狙っている迷宮神がそんなことをしているのかはわからないが。



:すげぇ~~~

:初心者さんや一般の方に説明するけど、これ絶対に10層レベルの攻防じゃないからね。

:100層って言われても信じるぞ?

:リッチ様すげぇけど、ちゃんと戦えてる"夢猫ドリームキャット"のみんなも凄いな

:これがリッチ様の教えの賜物。本気で探索者学校の教育に取り入れるべきじゃね?

:ずっと魔力放出してるのは効率悪いと思って見てたけど、あんなにポンポン魔法を使えるのを見ると有効なのかな?

:明らかに魔法が放たれる速度が速いからそうなんだろうな。魔力の無駄も多そうだけど、それを魔力回復の指輪で補えばいいってことか?


うんうん、コメント欄もちゃんと戦いについて来れている。

本当は自分でも空気中の余った魔力を再吸収したりしてるけど、それの解説はまたの機会だ。


たまにはこういうのもいいな。

成長した実感を持たせるのも重要だしな。


師匠せんせいが10層レベルに弱体化、ということで複雑な心境ですが、今回は倒させてもらいます!行くよみんな!」

「「「おうっ!!!」」」


そうして今度は先手を取ってくる詩織達。

魔力を回復する隙を与えないようにしてるんだろうな。いい判断だ。


まずは突進してきた大輝からだが、腕を覆う魔力から考えて炎か?


「炎拳弾の連撃だぁ!!!」

おぉ、複数攻撃。しかも若干逸らして撃ってきてるな。転移を狙っているのか?ならば……


「□★(練武)!」

「なぁ?」


:リッチ様のまさかの格闘技wwwww

:なんでやねん!

:流れるような体裁きで全部撃ち落としたすげぇ!


「□★◇△☆○!?」

「やっと当てたぜ!」

しかし、そこへ海斗の放った炎の矢……ファイヤーアローを喰らった。

くそっ、はまった。俺が炎拳弾を防御することも想定していたんだな。

思考を読まれたか?

 

:当てた!!!!!!!!!!

:マジかすげえな海斗!

:それでもリッチ様の体術が継続しててファイヤアローの大半は撃ち落としてるの草

レファ:どっちも頑張れ!!!

:レファちゃんが良い子wwwww

レファ:はっ、いや、ついですわ。どっちも負けて!

:もう遅いのwwwwwwwww


次はどっちが来る。裕美香か、詩織か……。

どっちも抱きしめてキスしたりしたら大炎上するだろうな……。



「いくよ裕美香!」

「うん!」

「★□◇△▽○☆◆?」


おぉ、ここで挟み撃ちくるのか……やるじゃないか。

すでに転移の準備は解消して全てを練武と攻撃魔法の準備に使っている。


いいだろう、来い。

俺の防御を突破できたらお前たちの勝ちだ。

攻撃魔法をキャンセルして防御魔法に変えておこう。


「マジックシールド×10!???大人げないですよ師匠せんせい!!!」

「関係ないわ!行っけーーー!」

「「ファイヤーストーム!!!」」

おぉ、ぶち抜いてきた。

詩織が風、裕美香が炎を担当した合体魔法……2人で完成させてきたのか。

ふぅ……おめでとうだな。


俺の体は、マジックシールドを突破した炎の嵐に焼かれ、切り裂かれていく。


そんな中で、少しだけ申し訳なさそうな顔をしている2人の姿をしっかりと記憶したあと、サムズアップしながら俺は黒い魔力になって消えていく。


:マジか!倒した!!!!!!

:すっげ~~~~

レファ:おめでとう!!!!!!!!!!!!!!!

恭一:レファちゃんwwww

:レファたんがやっぱりいい娘!www

:まじで成長したな詩織ちゃんたち

:俺にはあれでリッチ様が10層仕様ということが信じられないよ

:そんなことどうでもいいのよ!リッチ様が育てた子たちがリッチ様に答えたのよ!なんて美しい師弟愛!!!

:しかもなんかドロップしてないか?


「魔力回復の指輪……」


:おぉぉおおぉぉおおおおおお!!!!!!!!!

:まじかよ、10層ボスで出るとか羨ましすぎる!

:まぁ、素晴らしい戦いでリッチ様を倒したしな。

:ご褒美!

レファ:わたくしも持ってますわ!

:レファちゃんのマウントwwwwwwwwwww

:なお、現在新宿ダンジョンの40層でゴブリンキングとかオークキングしか出なくなっている模様

:リッチ様もリッチキングとか名乗った方がいいんじゃね?

:短期間にリッチ様倒しすぎたんじゃないか?早紀様が100回以上やっちゃってるしwwwww





***

ここまでお読みいただきありがとうございます。

詩織たち頑張りましたね!いや~まさか倒すとは思いませんでした。驚きました。(誰よ???)

そしてこの作品も300フォロー、星100を超えました。

本当にありがとうございます。


やはりランキング上がると見てくれる方が増えますね。画面の前でぷるぷるしてます。どうぞ引き続きご声援よろしくお願いしますとともに、より多くの方に見て頂くためフォロー、星評価、コメント、応援をどうぞよろしくお願いします。


あと、突然ですが明日からは後書きでキャラ紹介をやっていこうかなと思いますw

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