第11話 育成の成果

詩織たちが明治神宮ダンジョンの攻略をしているのと同じころ……


□経済産業大臣 権田


「くそっ、いまいましいダンジョン協会め!なにが当初から反対していた案ですだ!日本の産業を強化する案にろくでもない探索者を使ってやろうと計画に組み込んでやったのに、感謝もせずに警備は自衛隊でやれだと?ふざけるな!」


龍による宣言を受けて内閣府の会議で”ダンジョンの経済的活用計画”の停止が決まったことに納得がいかない権田は、みずからの執務室で怒り狂っていた。


「どいつもこいつも日和おって」

歯ぎしりをしながら他者を口撃している。


「かかる経費など、ダンジョンが活用できればすぐに元が取れるというのに、モンスターの脅威ばかり唱えるダンジョン協会に押されてしまうとは、大臣たちのなんと情けないことでしょうか」

そんな権田の執務室に控えている秘書の斎藤も権田に同調する。


彼らは"ダンジョンの経済的活用計画"の推進を掲げてこの数年、いや前段階の素案の時点から考えれば10年以上の時間をかけてようやく内閣の承認を得て、関係法案の改正なども含めて進めてきた中心人物だった。


だからこそ、龍によって自らの計画が止められたことが許せない。

そもそも龍などという理解不能なものに踊らされているようにしか見えないダンジョン協会や総理大臣が理解できない。


「何か手はないか?」

「もちろん考えております。これで蓋を開けてみたらダンジョンの変化などたいしたことはないものだった、などとなれば、我々はいい笑いものです。停止命令が行きわたる前に試験運用を開始していたことにして、既に何か所か入れております。停止とは言われましたが、撤退とは言われておりませんのでね」

「ほう」

齋藤は表情を崩さずに報告する。それを聞く権田は先ほどまでの不機嫌さをしまって冷静に話を聞けるくらいには落ち着いた。


「あとで総理大臣を叩くネタも確保できるというわけだな」

「はい。警備に関しては八咫烏に相談しておりまして、彼らからは配下のチームを見繕うという回答も来ております」


八咫烏は日本最大の探索者チームであり、政財界の仕事を多く受けている。

そんな彼らは当然こういった政治の裏側にも食い込んでいて、今回の権田たちのようなグレーな部分でも報酬次第で協力してくれる。



そうして気をよくした権田は予定された昼食会に向かうため、執務室を後にしていった……。





□明治神宮ダンジョン


「なんで明治神宮ダンジョンの10層ボスで師匠せんせいが!?」

「★□◇△▽○☆◆」


:突然いつもと違う場所で配信はじまって混乱してたけど、相手が"夢猫ドリームキャット"でなんか納得した

:いやいやいやいや。ここどこよ?別のダンジョンにリッチ様出てくるとか悪夢な気がする

:どこかにもよるぜ?

塔ちゃん;え~と、ここは明治神宮ダンジョンの10層だな。

:なんで10層wwwwwwwwwwww

:推奨Dランクのところに出てくるSSSランクモンスターwwwwwww

:"夢猫ドリームキャット"のメンバーがぽかんとしてるの可愛いわ♡


「○☆△◆◇□▽★」


:いや、なに言ってるのか分かんないから。

塔ちゃん:あ~、癖でな。このダンジョンはどうだった?

 

「なかなか普段と勝手が違いましたが、特に違和感なく進んで来れました」

俺を確認して速攻で配信を確認し始めた詩織が引き締まった顔で答えてくる。

うん……いや、その、なんだ。可愛いな。


:ちょっとドヤ顔の詩織ちゃんが可愛い♡

:そりゃあ、Bランク探索者が10層までで苦戦したりはしないだろ。

:でも、明治神宮だろ?あそこは聖属性の珍しいモンスターの巣窟だし、物理攻撃も効きづらいから推奨ランクが1個か2個上がる感じだぞ?まぁ、1個か2個だからBランクの夢猫ドリームキャットには関係ないだろうけども。

:で、そこにまさかのリッチ様が登場したと。

:そういえば、前に聖属性魔法使ってたもんね。

塔ちゃん:まぁ、ここで俺が出たのはラッキーなんじゃないか?

:なんで?

:悪夢の間違いでは?


「もしかして弱体化されていますか?」

詩織がおずおずと尋ねてくる。


ダンジョンでは5層、10層、20層、それ以降は20層ずつの間隔でボスが登場し、それぞれを突破するとG(5層突破)、E(10層突破)、D(20層), C(40層), B(60層), A(80層), S(100層)の探索者ランクとなる。


つまり10層ボスとしてポップした俺は、普段の40層ボスとして登場した時よりも弱くなっている。


その言葉に呆然としていた"夢猫ドリームキャット"のメンバーの顔に生気が戻る。


塔ちゃん:してるな。よし、挑んで来い!

:おぉ~~

:なにそのラッキー!

:それでも強そうなのはなんでだろうな……?


「みんな、チャンスよ!今なら師匠せんせいを倒してレファたちにドヤれるわ!!!」

詩織は魔力を貯めながらメンバーに気合を入れる。


:マウント宣言!wwwwww

レファ:そんなの反則ですわ!ズルですわ!

:普通にライバルで草

塔ちゃん:まぁ、簡単には負けてやらねぇけどな

レファ:くそリッチ、負けたら承知しませんわよ!

塔ちゃん:なんでだ?

:wwwwwwwwwwwwwwwwww


俺は魔力を自分の体の周囲に展開して、いつでも活用できる状態にして4人と相対する。

対する4人も同様に魔力を展開しつつそれぞれの武器を構えている。


「ファイヤーストライク!」

「マジックシールド×2」

俺の魔法攻撃で戦闘が始めたが、弱体化している俺の魔法は詩織の魔法防御2枚で止められて、他のメンバーは既に散会している。


うんうん。

ちゃんと教えたことを学んでいるな。






***

ありがたいことにこの作品が現代ファンタジーの週間ランキング100位となっていることに気付きました。読んでいただいて、さらにフォローや星評価、コメントに応援と様々なご声援を頂きまして、本当にありがとうございます。これからも毎日投稿していきますので、どうぞリッチ様をよろしくお願いいたします。


塔ちゃん:もっともっと探索者が真面目に俺のところに来るように、評価やフォロー、コメント、応援よろしくな!!!

:と、小躍りしながらリッチ様が申しておりまして(笑)

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