第10話 詩織たちの遠征

詩織という探索者はかつてリッチと全力で戦い、残念ながら敗れるもその魔法センスでリッチの興味を引き、戦闘アドバイスを貰い、弟子入りし、今では可愛がってもらっている。


彼女の見た目はとても可愛く、本人の朗らかな性格もあって異性から好意を寄せられることは多い。


柔らかく波打つようなナチュラルなカーブを描くブラウンの髪は彼女の顔、そして肩を優しく包み込んでいる。


肌は透明感があり、健康的な白さを持っており、若々しさと活力が溢れている。


顔立ちは整っており、少し長めのまつげが目元を華やかに飾っている。微笑むとその魅力が一層引き立つ。


全身のシルエットは少し小柄でスリムでありながらも適度に筋肉がついており、鍛えられた身体のラインがうかがえる。バランスの取れたプロポーション……。



しかし、彼女自身は同年齢の異性への興味は薄い。もっぱら探索者として日々強くなることに興味を持っていかれているからだ。単純に強くなることが楽しいのだった。



そんな中でのリッチとの出会いは彼女にとって衝撃的だった。

すでに複数のダンジョンで40層を突破していたこともあって自信満々で挑んだ詩織は手も足も出ずに、むしろ手を出されて敗れ去った。


戦いの中でおしり触るのは反則だと思う……。


そんな思いもあったが、この彼女自身が何もできずに敗れたことが衝撃的すぎたし、SNSにDM送ったらもの凄い詳細な彼女自身のための育成レポートが帰ってきたことで、むしろ入れ込んだ。


自分に興味を持ってくれる格上で親切な人……人ではなくてリッチだから、師匠……すてき……となった。なってしまった。きっとリッチのアンチなら『騙されるな!』と言っただろうが、実際にリッチのアドバイスは有用だった。


それによって彼女はリッチと戦う前よりも遥かに強くなっていった。

最近では自身の魔法の強化に加えて、相手の動きを考慮した戦いの展開、メンバーへの指示など多岐にわたった成長を見せている。


もともとはDランクだった彼女のチーム・"夢猫ドリームキャット"はメンバーを変えつつもBランクまで上がり、国内若手最高峰との評価を受けるまでになった。


全てリッチ様のおかげである。

これからはさらにチーム戦についてとか、魔力活用について教えてくれるらしく、自分はまだまだ強くなる……。


もし欲を言うなら、リッチ様も一緒に探索してくれないかな?そうすればずっと一緒にいられるのに……じゃなかった、もっと自分は強くなれるのに。むしろ人間に戻らないかな?


と、彼女は思っていた。

なぜ自分がリッチに惹かれるのかについては深く考えることなく……。



□Bランク探索者:水崎詩織:21歳:魔法剣士

 

「詩織~次の週末の探索もリッチ様に挑む?」

スマホを握りしめて師匠せんせいの配信を見ている私を生暖かい目で見つめながら、チームメンバーの魔法戦士である堀内裕美香が尋ねてきた。


私の師匠せんせい好きはメンバーでは共通認識になっているから、当然『そうよ』という答えが返ってくることを予想しているのでしょうね。


「いえ、次は明治神宮ダンジョンに行きたいんだけど、どうかな?」

「えっ?」

隣で武器の点検をしていた騎士の菊池海斗が驚いて顔をあげる。

師匠せんせいを討伐すれば魔力回復の指輪をドロップするかもということで、現在進行形でネットが大盛り上がりなのになぜ?とその顔には書いてあった。


「今、師匠せんせいは忙しいから、この隙を狙って普段は混雑してる明治神宮ダンジョンに行って来いって言われたの。ほら、レポートも貰ったのよ」

私は印刷した紙の束をメンバーに見せつける。

しかし、メンバーたちは師匠せんせいにそんなに興味はないらしく、スルーされてしまった。みんな、師匠せんせいは本当に凄いんだよ?

師匠せんせいは……


「なにか目的があるのかな?」

私が師匠せんせいのことを考えていると、困惑した表情を浮かべる武闘家の生田大輝に質問された。


「大輝くんは以前あそこを探索していたのよね?」

彼は最近このチームに加わったメンバーで、以前は明治神宮ダンジョンを主に探索していたって聞いてたけど、どうやらあまり良い思い出は持っていないようね。

ただ、情報は欲しいから、私は大輝くんを見つめて聞いた。


「あっ、あぁ。あそこは聖属性のモンスターが多い不思議な場所だな。エンジェルリングとかホーリーウィスパーとか。あいつらは物理攻撃も効きづらいからなかなか難易度が高いよ?だけど、ドロップアイテムが美味しいから挑むやつは多い」

大輝はなぜか少し赤くなりながらもみんなにダンジョンの説明をしてくれた。


私たち4人は大学生4人組であり男女比2:2の構成だから、学校内でも羨ましがれているみたい。

だけど、真面目な攻略を目指した探索者チームだからチーム内での恋愛やいざこざは遠慮してねって伝えてあるんだけどな……。


探索自体はうまく進んでるし、それに伴ってランクや評判も上がってるから、まだ崩したくないんだけどな~。


まぁ、基本的に上昇志向は強いメンバーだから弁えてくれると思うけど。

世間一般のイベントごとがあるときは、やっぱり浮足立つのよね。

クリスマスとかさ……。


そう思いながら、私は師匠せんせいにもらったアドバイスをみんなに説明する。


「私たちは師匠せんせいを倒すために聖属性に重点を置いて強化をしてきたけど、それだけではダメだって。だから闇とか、他の属性の魔法や武器スキルも鍛えて来いって。新宿に人が増えた影響で周囲のダンジョン探索は人が減ってるから、明治神宮で違う戦い方を試しながらドロップアイテムを探す良い機会だって、メッセージ貰ったのよ」

「なるほど。めちゃくちゃ理にかなったアドバイスだ……」


ちなみに明治神宮ダンジョンでは様々なアイテムがドロップするが、そのどれもが他のダンジョンの同じ層で拾うものよりも高品質だったり、珍しいものだったりする。売値も高い。



「よし、行こう!どこまで強くなってるか試すいい機会だよね!」

「そうだな!そうと決まれば、昔つけていた攻略日記を披露するぜ!」


誰も異論をはさむ余地のない素晴らしいアドバイスに、みんな賛成して挑むダンジョンの変更を受け入れてくれた。



新宿ダンジョンの40層に挑み続けた自分たちが、他のダンジョンでどこまでやれるようになっているのか試したいという気持ちも持ってくれているのかもしれない。


学校卒業したらどうなるかわからないけど、真面目な攻略を目指しているバランスの良いメンバーだから、どうか学校卒業までは保ちますように。



そして私たちは意気込んで明治神宮ダンジョンに挑み、ありがたいことにたくさんのドロップアイテムを拾いながら探索を進めた。


倒しづらいモンスターが多いことから推奨ランクが1つか2つは上がると言われる明治神宮ダンジョンだが、さすがに5層のセイントウィスパーという聖属性のお化けは苦戦することなく倒せた。


そして続いて10層のボス部屋に辿り着いた。





そこにいたフロアボスモンスターは……

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