第30話 反攻開始!
□新宿上空
『みっ、みなさん、ご覧ください。あれを。あの巨体を……今、新宿ダンジョンに併設されたダンジョン協会の建物が崩れ落ち、なかから巨大なモンスターが出てきました』
ヘリコプターで新宿上空を飛ぶアナウンサーが、マイクを片手にカメラマンに向かって叫ぶ。
その声はテレビを通して日本全国に響き渡った。
□東都テレビジョンのスタジオ
「なっ……あれはなんなのでしょうか?」
スタジオでは司会の男がモニターに向かって呆然と呟いている……。
「ついにダンジョンの外に出てきやがったけど、最初が30mクラスのオークタイタンとか、本当かよ……」
それに答えるのはダンジョン探索者でもありタレントでもある大木だ。
しかし、誰も彼に戦いに行けとは言わない。
彼はDランク探索者だ。
彼は、この場に一人でもモンスターの知識がある人間を呼べという上層部の無茶ぶりで急遽呼ばれたにすぎない。
「おっ、大木さん。あれは倒せるモンスターなのですか?あんなものを探索者の方々は相手にしていたのですか?」
大木の隣に座っているアイドルの女の子が尋ねる。
「あれはオークタイタンだ。ランクで言えば、Bランクのモンスターだから倒せる探索者はいる。ただ、超巨大なため、ダンジョン内で遭遇した場合、まずは下半身を攻撃して倒れさせるところから始めるんだけど、それをあそこでやったら新宿の街がやばい……」
大木はなんとか解説の言葉をひねり出す。
やるしかない。
倒さないと次々に建物や道路を壊していくだろう。
誰かが倒すしかない。
しかし、誰がそれをやるのか?
ダンジョン協会は何をしている?
自衛隊は?
新宿はどうなる?
日本はどうなる?
この光景を見つめている全ての人間がただただ唖然としていた。
「いっ、今ニュースが入りました。官邸では今回の事態に対して緊急会議を開いており、自衛隊の出動、およびダンジョン協会から周辺にいる探索者への応援要請が発せられることが決定して、すでに実行に移したとのことです」
そんな中、鳴り響いたニュースは、ただ空しく響いていった。
画面に映る巨大なモンスターの恐怖を前にして何が起こっているのかを正常に理解できるものがほとんどいなかった。
一部の探索者を除いて……
□新宿周辺
「ダンジョン協会本部!応答願います!こちらBランク探索者チーム・
「こちらCランク探索者チームのレファと恭一です。オークタイタンが見えます。今新宿駅です!指示を!」
「こちら……」
フランたちが稼いだ時間を使って避難していく人々と逆流する形で探索者たちが到着していた。
東京近郊から続々と。
『こちらはダンジョン協会本部、新宿ダンジョンのスタンピード対策本部長となった湊皇一だ。
今、オリヴィエ・フランソワード・リーランチェスカが新宿ダンジョン協会内でランドドラゴンのイレギュラーを討伐した。
しかし、後方からやって来たオークタイタンによって新宿ダンジョン協会の建物が破壊され、続々とスタンピードのモンスターが外に出ている。
探索者諸君。これは世界初の大災害だ。
どうかモンスターの討伐を頼む。
俺自身も今新宿に着いたところだ。
全員に軍団スキルをかける。
戦闘開始だ!』
そして、この場に参戦したダンジョン協会会長であり、対策本部長となった湊皇一が拡声機と通信機を使って宣言した。
『
『レファたちは新宿〇〇ホテル前でモンスターを抑えてほしい。都庁の方に行かせないように頼む……』
そして対策本部から各チームに指示が飛ぶ。
対策本部は既に都庁入りしており、情報収集をしながら指示を出し、そして皇一が全体バフを掛け続ける計画を発表した。
『あと、この新宿に集まった探索者の中で、配信をやっている者すべてに依頼する』
さらに対策本部からの指示が出るようだ。
配信を切れということか。
皆そう予想した。
ここから始まるのはモンスターによる都市破壊とそれの対策だ。
まるで映画のようなそれは、一般人にとっては刺激が強すぎるだろう。
しかし……
『全員配信してほしい。見るかどうかは視聴者次第だが、この光景は今後のためにも全員知っておくべきだ。ダンジョンの怖さをな。全ての責任は俺が取る。だから配信してくれ!心無いことを言われるかもしれない。それでも頼む!』
まだ全員の避難も終わっていない段階で、対策本部が、湊皇一が出した指示は、まさかの『配信せよ』だった。
これには皆、即座に行動した。
探索者全員が肌感覚として一般人との意識の違いを感じていたのかもしれない。
『ではいくぞ!モンスターを殲滅する!!!』
そして探索者たちは活動を開始していった。
□東都テレビジョンのスタジオ
「いっ、いま、新宿に応援に駆けつけた探索者たちがダンジョン協会が設置した対策本部の指示のもと、活動を開始したようです!見てください。外部に溢れ出したモンスターを倒していきます。なんとあの巨大なオークタイタンにも挑んで行っています!」
司会の男が叫ぶ。
「すっ……すごい」
アイドルの女はテレビに映っていることも忘れてモニターを食い入るように眺めている。
「対策本部は湊会長が率いていて、都庁に入ったとのことです!都庁に逃げ遅れた人たちの収容を始めたようです!」
「都庁に?ダンジョン協会の会長自らが!?」
大木が自らも受信したダンジョン協会のメッセージをカメラに向けながら叫ぶと、信じられないという顔でコメンテーターの男が呟く。
いつもは権力者の批判ばかりしているコメンテータだったが、この情報には文句を言いようがない。
地位のあるものは現場には赴かない。
それもまさに戦争真っただ中の戦地に大本営を設置しに行ったような状況だ。
このテレビ放送を見ている人々も信じられないものを見たような表情で食い入るように眺めているだろう。
もう探索者が普段偉そうだとか、優遇されているとか言うものはいない。
新宿に現れた巨大なモンスターを見て、それに立ち向かっていく姿を見て、誰もが衝撃を受ける中でそんな不満は息を潜めていた。
探索者はあんなのと戦っているのか?
Bランクで倒せるとかさっき聞こえなかったか?
改めて隔絶する探索者の力に畏怖を感じるまでになっていた。
しかも最高責任者が自ら前線まで行って一般人を守りながら戦うと言う……。
「湊会長はもともと探索者なんだ!個人の戦力はたいしたことはないが、保有している軍団系スキルで世界ランキング元2位の早紀さんと組んで、世界ではじめて100層突破を成し遂げた人です!今回も新宿に行って、戦う探索者全員にスキルをかけ続けて支援しながら指示を出すようです!」
そんな日本中の人たちの耳に、探索者である大木の声が、今度は胸を打つ形で響いたのだった。
* * *
ここまでお読みいただきありがとうございます!
皆様の期待(リッチ様による無双)にお応えするよりも前(きっと……?)にまさかの皇一だぁぁあぁぁああああああああ!!!!!!!
ということで、作品フォローと星評価の数で露出度が上がります。
たくさんの方に読んでいただくため、どうぞ応援(作品フォロー、レビュー(コメント、星評価(☆☆☆→★★★))、応援(♡)、コメント)の程、よろしくお願いします。
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