第29話 崩壊する新宿ダンジョン協会
□新宿ダンジョン協会
「おい、本当に来ちまったぞ……?」
「まじかよ……」
「(私が倒す!他のモンスターは頼む)」(ドイツ語)
「なんて言ったんだ!?おい、危険だ!」
「ランドドラゴンは世界9位のフランソワードに任せて、他のモンスターが外に出ないようにするぞ!」
「「「おぉ!!」」」
20名の探索者たちがなんとか200体ものモンスターを倒したころになって、ランドドラゴンが上がってきた。
その目は硫黄の魔道具のせいか濁り、口元には炎を湛えたランドドラゴンが……。
「(くそ、臨戦態勢か!行くわ!)」(ドイツ語)
フランは大剣を取り出し、ランドドラゴンに接触する。
あまりに大軍となったモンスターに対して、ダンジョンの入り口での対処を諦めた探索者たちは、協会のロビーまで退避してそこで戦っていた。
新宿ダンジョン協会のロビーの天井は非常に高く、部屋は広い。
今はそれが幸いした。
「(うらぁ!)」(ドイツ語)
フランはランドドラゴンに炎を吐かせないように、吐いても周囲の探索者に向かわないように飛び上がった。
そして5mほどのランドドラゴンよりもさらに高い位置から、大剣を振り降ろす。
それに対してランドドラゴンは立ち上がって爪で大剣を受け止める。
「(くっ、傷ひとつつかないのか!だったらこれなら!)」(ドイツ語)
フランは大剣に魔力を込めてさらに強化し、連続で叩きつけるが、それもランドドラゴンは受け止める。
「なんて強さだ。通常のランドドラゴンじゃないのか?」
その様子を見ていた探索者たちはランドドラゴンの強さを訝しがる。
通常ランドドラゴンはBランク探索者のチームが戦うようなモンスターだから、当然ながら強い。
それでも100層を突破した経験を持つフランであれば、そこまで苦戦するようなモンスターではないのだ。
にもかかわらず、フランと互角以上に戦っている。
「まさかイレギュラーかよ。なんてスタンピードなんだよ!ふざけんなよ」
探索者たちが嘆く。
今のところモンスターを新宿ダンジョン協会の建物から外には出してはいないが、それも時間の問題のようだ。
そしてランドドラゴンは立ち上がった状態のまま、炎を貯め始めた。
「(まずいっ、ブレスが来る!こっちだ!)」(ドイツ語)
そのランドドラゴンの様子を見て、フランが再び宙に上がる。
「シャイニングフォース!」
そして光属性の魔力を込めた大剣から斬撃を放った。
これにはランドドラゴンも反応し、爪を出すが、大剣は爪を指ごと叩き斬った。
グオォォオオオォォオオオオオ!!!!
「(くっ!)」(ドイツ語)
その攻撃にランドドラゴンは咆哮をあげ、炎のブレスを吐きだした。
飛び上がっていたフランがなんとか魔力を行使して空中でそのブレスを避けた結果、その炎は新宿ダンジョン協会の建物の外壁を突き破って上空に向けて飛んで行った。
「おい!なんだよあれ!!!!」
「火の玉か?花火じゃねえょな!?」
「バカ、そんなわけないでしょ!モンスターの攻撃よ!」
「マジかよ!あんな馬鹿でかい火の玉がか?」
「まずいんじゃないか?あんなのが飛んで来たら黒焦げだ……」
「やべぇよ!」
「逃げろ!」
「いやーーー!」
「おい押すな!」
「うるせぇ、どけ!逃げろ!」
「まじかよ!探索者なんとかしろよな!もう地上にモンスター出てるじゃねぇか!」
その炎のブレスは新宿の空に高々と打ち上げられた。
その炎はまさに世界の変革を象徴する打ち上げ花火になってしまった。
このブレスによって、ようやく人々は認識した。
世界にモンスターが現れたことを。
自分たちが決して安全ではない場所に住んでいるということを。
そして一斉に逃げ惑った。
『おっ、押さないでください。まだモンスターは新宿ダンジョン協会から出てはいません。冷静に行動してください』
「うるせぇよ!あの火の玉がこっちに飛んで来たら終わりだろうが!」
「早くしろ!」
警察たちはなんとか冷静な行動を促すが、打ち上げられた炎のブレスは人々の認識を崩すのに十分な威力を持っていた。十分どころか、強烈過ぎたのかもしれない。
さっきまでは全く動かなかったのに、今では堰を切ったように走り回っている。すでに新宿にいる人々の感情は完全に恐怖に染まっており、もはや静止など不可能だった。
そして新宿は大混乱に陥ったのだった。
一方、新宿ダンジョン協会の中ではランドドラゴンとフランの戦いが続いていた。
「(一気に決める!)」(ドイツ語)
フランはブレスを打ち上げたランドドラゴンに接近し、大剣で攻撃を続けていた。
いくつかの爪を指とともに失ったランドドラゴンは片手で防戦一方になっている。
しかし口元には再び炎が見え隠れし始めていて、まだまだ戦意は喪失していなかった。
「(大剣練武!)」(ドイツ語)
一方で、フランはすでに戦い方を割り切ったものに変えていた。
すでに攻撃は外に出てしまった。
今頃人々は逃げ惑っているだろうが、地上に向けたブレス攻撃以外はもう関係ない。
だからランドドラゴンの態勢はあまり気にせず、攻撃のラッシュに入っていった。
そのフランが繰り出す斬撃は次々とランドドラゴンの体を切り裂き、ダメージを与えていく。
「すげぇ……」
「あれが世界ランキング9位の力……」
今のところ出てきたモンスターたちを殲滅した探索者たちも、ただただフランの戦いを見守っていた。
彼らの実力ではランドドラゴンには手が出せないためだ。
そして、フランが一気に勝負を決めに行く。
「ラストエクリプス!!!!!」
グルオォォオオォォオオオオ
しかし、合わせるかのようにランドドラゴンも爪を振り回して攻撃をしてきた。
重なり合う大剣と爪。
お互いにスキルを使った攻撃であり、斬撃が重なり合う。
その衝撃はお互いの体にも影響を与える。
巨体のランドドラゴンはその場にとどまったが、フランは吹っ飛ばされてダンジョン協会の壁に叩きつけられた。
「なっ!?」
「フランさん!!!?」
「まさか……」
そしてフランは床に落ちた。
「(問題ない……斬ったはずだ……)」(ドイツ語)
しかし、フランは大剣を杖のようについて立ち上がった。
その言葉を理解できるものはこの場にはいない。
グアァァアアアァアアアアァアアアアアア!!!!!!!
しかし、その直後、ランドドラゴンが凄まじい咆哮をあげて崩れ落ち、黒い魔力になって消えていった。
フランの大剣による斬撃はランドドラゴンを確かに切り裂いていたのだった。
その消えていったランドドラゴンを見ながら、フランも再び膝を地につける。
誰が見ても限界だった。
「やった!やったぞ!」
「すげぇ、さすが世界9位……」
「ろくに攻撃もさせずに耐えきったな」
探索者たちは歓声をあげてフランに近づこうとした。
そこへ……
ドシーーーーーン
「くっ……なんだよ」
「このクソでかい足音……振動……」
「次が来やがったのか?」
ドシーーーーーン
「おっ、応援はまだか?」
「おい、あれ……」
「……」
ドシーーーーーン
「全員、退避だ。あれはここでは無理だ」
その巨体を見て新宿のダンジョン協会の責任者である皆川がつぶやく……。
「逃げてどうするんだよ!新宿の避難は終わったのか?」
その呟きに対して探索者の一人が喚く。
ドシーーーーーン
グオォォオオオォォオオオオオォォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!
「まずい!建物が崩れるぞ!逃げろ!!!!!!」
* * *
ここまでお読みいただきありがとうございます!
昨日作品フォローが1,000を突破いたしました!フォローをいただいた皆様、ありがとうございます。
作品フォローと星評価の数で露出度が上がります。
たくさんの方に読んでいただくため、どうぞ応援(作品フォロー、レビュー(コメント、星評価(☆☆☆→★★★))、応援(♡)、コメント)の程、よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます