第3話 詩織へのレクチャー

「では、いつも通りアドバイスをお願いしますね、師匠せんせい

うん、やっぱりだ。

俺は配信のコメントに説明を書き始める。


塔ちゃん:まず、マジックシールドの4枚同時展開はなかなか上手かった。俺の魔法をちゃんと防いだしな。

:このまま解説するの草

:しかも『塔ちゃん』ってなんだよ!?

:この配信の7不思議の1つだな。

:えっ?ほかにも不思議があるの?

:むしろ不思議しかないだろ?なんでフロアボスのリッチ様が配信やってるのかとか。

 

お前たちを鍛えるためだって言ってんだろ!?

まぁ、今それを言い出したら話が進まないから、俺は解説を続けるぞ!

 

「ありがとうございます!」

目の前に俺がいるのにスマホをじっと眺めながらお礼を言っている。

なんか寂しいけど、文字打ってるの俺だし仕方ないか。


:リッチ様が詩織ちゃんをガン見してます!

:きっと破廉恥ですわ!

塔ちゃん:なんでだよ!

:リッチが反省会レクチャーしてると聞いて

:ほら、同接者増えてるよ!解説よろ!

塔ちゃん:わかったよ。まず、メンバーへの指示。あれはミスだな。俺が転移できることは知ってるんだから、同時に攻撃させたらダメだ。


「くぅ、なるほど」

目に見えて落ち込む詩織。表情豊かで面白いし、悔し気な声が可愛いな……。

 


塔ちゃん:で、俺の接近を許して魔力弾を喰らった。あのときもマジックシールドを維持しておくべきだった。動揺して消しただろ?


「おっぱい触られましたもんね」

くっ、そんな可愛らしく胸を抱えて上目遣いでこっちを見るな。


:そりゃ、消しちゃうだろ!

:あれは逮捕案件でしたよね

:まさかのタイミングだったから目が点になったんよ

:変態ですわ!

:リッチ〇ね!

塔ちゃん:で、その後は連発に耐えきれずにHPが設定値を下回って強制離脱だな。

:あからさまなスルーwwwww


「むぅ~」

可愛く唇を尖らせてるが、可愛いな。うん、可愛い。


:じゃあ、どうすればよかったんだ?

:教えて!リッチ様~♡

塔ちゃん:そもそも俺が転移したら即座に回避だ。俺は近付いたり、別の場所に移ってから攻撃したりするからな。同じ場所にいてはダメだ。

:……真面目に解説してる……


当たり前だろ?

詩織は結構強い。20歳そこそこでBランクだし、やる気もあるし、根性もあるし、センスもある。

あとは経験だ。


それとチームメンバーか。

悪くない構成だけど、そろそろ本格的にダンジョン探索をメインでやっていくチームを組むべきじゃないか?そろそろ学校卒業だろ?

 

塔ちゃん:それから、もっと魔力の運用を意識して強固なシールドを目指せ。

:盾は重要だよな

:仰る通りです

塔ちゃん:聖属性攻撃は良かったから、どうやって当てるかを考えてみな。タイミングをずらして回避方向を誘導していくとか、死角から撃つとかな。

 

「わかりました。ありがとうございます!」


:質問!あのままだとリッチ様の凄まじい魔法が炸裂しそうでしたが、これはそもそも展開が悪いと言うことでOK?

塔ちゃん:そうだな。そもそもあんな風に俺に余裕を与えてはダメだな。せっかく4人いるんだから。

:リッチ様が理不尽な威力の魔法を使ったら、対策のしようがない気がしました。


むぅ、この流れはまずいな。

これではまた俺が敬遠されてしまう。

せっかく迷惑探索者をボコって悪戯することで興味を持つ人を増やしたというのに。


「そんな軟弱なことでどうするのですか?ダンジョンの先へ進めばもっと強いモンスターがいるのですよ?ここで師匠リッチ様を避けるよりも、せっかくいろいろ教えてくれるのですから、全力で挑んでアドバイスを貰う方が有効です!」


:おぉ、さすが詩織様だ!

:しおりんステキ!

塔ちゃん:その通りだな。探索者にはもっと強くなってもらわないといけない。

:そんなこと言うけど、結局モンスターは探索者と殺し合うんだろ?なのに探索者を育てるのか?

塔ちゃん:ずっと言ってるが、迷宮神に対抗するためにはもっと強くならなくてはいけない。

:どうせお前もモンスターだろうが!

:アンチうるさい。せっかくの解説回を邪魔するな!

:荒らしは通報しといたぜ!

:グッジョブ!

塔ちゃん:むぅ、すまんな。助かる。

:いいんだよ!リッチ様がそこのボスになってからはそこで誰も死んでないのは事実だし、こうやっていろいろ教えてくれているのも事実だしな。

:そうよそうよ!リッチ様は素晴らしいのよ!


人間育成は難しい。

楽すぎると育成にならないし、ハードすぎると来なくなる。

本当はもっとがっつりスキル体系にない魔力運用とかを教えてやりたいんだが、ほとんどついて来れないだろうから、今はこの程度だな……。


それでも何人かは頑張ってるやつらがいる。

詩織もその一人だ。特にこいつはめちゃくちゃ可愛い外見とは裏腹に負けず嫌いで、打たれ強いから気に入っている。


と思って顔を覗くとなんか眉を潜めている。

 

「すみません、私なんかが余計なことを言ったせいで煽ってしまったのかもしれません」


:しおりんの物憂げな表情がステキすぎて食べたいわ♡

:しおりちゃんのせいじゃないよ!大丈夫だよ!

:あいつらはどこにでも沸くからな。

:案外リッチ様に懲らしめられた迷惑系なんじゃない?

塔ちゃん:みんなありがとな。みんながもっと強くなってくれることを願うよ。

:リッチ様こそ至高!

:私は探索者じゃないから行けなくて申し訳ないけど、探索者の友人には言っておくね!

塔ちゃん:あぁ、ありがとな。詩織も頑張れ。


「はい、師匠せんせい!ありがとうございました」

 

そうして配信は無事終了し、詩織はとりあえず満足したのか帰って行った。



とりあえず集客するためにはレアドロップでも公表してみるか?

でも、それだとそもそも強いやつが来るようになるだけか……。


 

まぁいっか。ゆっくり考えよう。

迷宮神による世界崩壊もまだ時間あるだろう。



 

さて、それじゃあ最後に忘れずにやっておくか。



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|次回予告            |

|迷惑な探索者来訪!       |

|果たして探索者の運命はいかに!?|

|こうご期待!          |

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|(-w-)


:またやっててウケるwwwww

:しー!いつもだから。しー!

:微妙に文字が違う気が……

:迷惑……悪戯の予感(笑)

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