21.わかれ道 中
物心ついた時から、アタシはルシュフ・キャンベル公爵の娘だった。
父は優しかったけれど、アタシには母がいなかった。
初めはあまり気にも留めなかったが、やはり周りの友人達を見ていると、皆に母という存在がいる。
それは、学校へと通うようになってから更に感じるようになった。
父に初めてこれを訊ねた時、母は先に逝ってしまったのだと話されたけれど、後になってそれが嘘であることを知った。
父は、そもそも結婚などしていなかったのだ。
アタシがそのことを知ったのは、ごく最近のことである。
大事な話があると言って、父はアタシに母のことを話してくれたのだ。
しかし母がいないところで、何か不便があるわけでもない。
家にはメイドもいるし、父も忙しい中で時間を作り遊んでくれていた。
アタシは、恵まれていたのだ。
そんなアタシには、大好きな親友がいる。
アルブ王国を統べる魔王家の王女、ベリィ・アン・バロルだ。
出会いは、アタシが野鳥を追いかけて魔王城に続く道へと迷い込んでしまった時、城の庭で遊んでいたベリィと目が合い、アタシのほうから手を振ったのが始まりだった。
ベリィはアタシより年下で、頭にかっこいいツノが生えていて、少し人見知りで、お菓子みたいな形の太い眉毛が可愛い女の子だ。
それから数十年、アタシ達はずっと仲良しだった。
魔王の家系に遺伝するあのツノは、他の生物を威圧してしまう力があるらしい。
アタシにはよく分からなかったが、他の友人達はベリィに近寄ろうとせず、その為ベリィは学校にも通っていなかった。
一度、学校へ行っていなくても頭の良いベリィに、なぜそんなに勉強が出来るのかと訊いたことがある。
ベリィは家でしっかり勉強しており、読書も好きだから、色々なことを知っていたらしい。
彼女はアタシよりも、よほど頭は良かった。
そんな彼女の夢は、勇者になることらしい。
魔王の娘が勇者になりたいなんて、最初は面白い子だなと思った。
しかし、あの頃のベリィは本気だった。
今ではそんな話もしなくなってしまったが、アタシは本当にベリィなら勇者になれると思っている。
ルミナセイバーには選ばれなくても、いつか魔族と人族の架け橋になってくれるような、そんなアタシ達の勇者に。
だからアタシは、きっとこれからもベリィを応援し続ける。
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