修学旅行だヤングマン
秋。修学旅行の季節である。
ムスコの高校では名古屋で集合し、博多まで新幹線、長崎平和公園で原爆資料館の勉強で「一人芝居」を観劇し、長崎市のホテルで1泊する。夕食は中華街で各自好きなものを食べる。
2日目は各地で8つある希望の観光地に向かい、福岡のホテルで宿泊する。
ムスコは軍艦島ツアーに参加だ。
理由を聞いたら、「舟に乗りたいから」だそうでなんか変なヤツである。
3日目は太宰府天満宮、キャナルシティ博多で各自遊んで博多から新幹線で名古屋駅で解散だ。
なかなか自主性もあり自由度が高く勉強になる計画だと思う。っていうか、私の在学時と同じく九州なのもこだわりが感じられる。私服の日が2日もあるのもムスコの高校らしい。
青春だ。
しかし問題もある。
彼はおしゃれにうといのだ。
おしゃれとは難しいもので、ムスコは明後日から九州だというのに服が決まっていない。
明日の朝、スーツケースだけ先に九州の博多のホテルに送り、本人は明後日に身軽に新幹線で向かう。
スマート旅行か。
しかしそうスマートにはいかないのがうちのムスコである。
「黒いTシャツない?」
今日の夕飯の後、自分の手持ちの服で足りない彼は私やムスメの服を物色しだした。
タンス部屋はぐちゃぐちゃで、『泥棒が金目の物を探したけど何もなくて悔しくて散らかしてやった部屋』になっていた。
ムスメがバイトで居なくてよかった、これは血を見るやつだ。
「はい、これどお?」と私がジョジョTシャツを渡す。黒地に蛍光の緑で『オラオラオラァ』と無限にプリントされているものだ。
「これ本気?何も書いてないやつないんか」
私は地味な顔をしているので、服や鞄は比較的派手なものが多い。黒い服は数点しかないし、黒いカバンは喪服用だけだ。
「あるかなぁ…ていうか、なんで買ってこなかったん」
「面倒やったから」
スンとなる私。なんじゃ、そりゃ…
とりあえず私のお気に入りの空気感がある大きめ黒カットソーを着てみた。そこはかとなく可愛い仕上がりになって渋るムスコ。
「…まあこれでええわ」
ムカっ、をおさえる。旅行前に喧嘩はよろしくない。
今夜は同じようにムスコのパックに大変な思いをしている親がいるのだろうと自分を慰める。いや、うちだけであって欲しくない。
頑張れ、お母さん!!
修学旅行で誰も怪我や病気をしませんように!九州の神様、宜しくお願いします!!
あと、博多通りもんを頼んであるのでちゃんと買ってきて欲しい。
おとぼけのムスコの為、神妙にお願いするぴゅうである。
うちのヤングマン知りませんか 海野ぴゅう @monmorancy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。うちのヤングマン知りませんかの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます