帰ってきたヤングマン
九州から帰ってきたヤングマンことムスコ。
私がリクエストした『博多通りもん』を紙袋に入れて帰ってきた。24個も入っていた、ありがとう。
夜7時に名古屋駅で解散、友人と名古屋で夜ご飯を食べて帰宅した彼はご機嫌だった。
ホテルは温泉なのに入らせてもらえずで両方ご飯もイマイチだったけど、『長崎堂のカステラ』と『長崎カステラプリン』が別便で送られてくる、と嬉しそうに迎えの車で話すのを見てホッとした。
無事で楽しかったらなによりだ。
宵っ張りの彼が珍しく早くに寝たのを確認し、私も3日ぶりに安心して布団に入った。やはり家族の誰か一人欠けても心配でぐっすりは寝られないものだ。
そして週末に彼はえらい事に気が付いた。
「お母さん、財布がない」
2年前に彼が生まれて初めて自分で選んで買ったポールスミスの革の財布。彼はもちろんだが、シンプルな作りでくすんだ青がいい感じで私も気に入っていた。
「まじか…どこで最後に使った?」
「…名古屋駅で切符買ったときかもしれん」
最後に財布を見たのは名古屋駅だと言う。
まじか…
まあいい、丁度日曜だし名古屋駅でプラプラして美味しいものでも食べようと気持ちを切り替え、夫と車に乗った。ムスコは行かないという。
なんで!?
あんたのやん?!
「疲れたから今日はゆっくりする。お金しか入ってなかったし、もう諦めるわ」
まじか…(再)
本当に意味がわからんと思いつつ名古屋に行くことにした。
子供に甘い。オットも『名古屋行けるでいいやん』のノリである。
二人ともムスコには糖分過多だ。
車で高速に入る前に、彼が降りた最寄り駅に向かった。そこで落とした可能性もある。
「すいません、昨日ポールスミスの青い財布を落としたんです。中身は現金6千円ちょいとたくさんの九州で買い物したレシート、カラオケボックスの割引券だけなんですが、届いてませんか?」
「あー、ちょっと待ってね…」
駅員は「大変ですね、あるといいですね」なんて感じではなく、期待すんなと言わんばかりでかなり面倒くさそうに奥へ向かった。
「あれは期待できんな…」とオットも駅員につられて諦め顔だ。
あほか!
まだ見てもらってもないのに諦めるとは、あまりにも情けない。我が家の男どもは全くもって頼りなさ過ぎる。
怒りでカッカしていると、先ほどの生気のない駅員ががっかりした風で窓口に戻ってきた。
やっぱりなかったかな…
さすがの私も諦めかけたら、
「こちらですよね」とあっさり彼は財布をビニールから取り出した。それは名古屋にあるはずのムスコの財布だった。
マジか!(再々)
なんと、地元の駅で落ちていたのをお客さんが届けてくれたそうだ。彼の言っていた名古屋の駅で落としたというのは大間違いで、帰りのホームで落としたようだ。
「ありがとうございます!」
生気のないなんていってごめん、と心で謝ったが、やはり最後のサインをする時でさえ彼には全く生気がなく、小さな声でボソボソと説明した。
彼はゾンビだったと言われても『そうだったんだ』となるくらい元気がない。
届けて下さった方にお礼をしたいと言ったら、その方は名前を明かず届けて下さったそうだ。
この場を借りてお礼を言いたい。ありがとうございます!
そして、ムスコよ。
自分の落とした財布は自分で探すように!
特に用事が無くなったので名古屋に行くのは中止になった。
次回は絶対に助けないと誓ったぴゅうである。
うちのヤングマン知りませんか 海野ぴゅう @monmorancy
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