諭すヤングマン
「そこはお母さんが寛容にならんとあかん」
昨日、ムスコと二人の夕食の場で諭された。机には冷凍室に眠っていた先週のカレーを使ったカレードリアと、適当に作った野菜沢山の味噌汁がならんでいる。
いかにも手抜きでムスコが文句を言いたくなる気持ちもわかる。しかしだ。
「いや、まずは冷凍のカレーに文句を言うあんたが寛容になるべきやろ。っていうか、あんたが作ればいいやん!ご飯は家族の誰が作ってもいいんやから」
火曜日深夜に私の父、つまりはムスコの祖父が倒れて救急車で運ばれた。そして昨日の昼に先生から説明を受けた。
心不全+心臓に水が溜まる+肝臓ガン
モリモリ過ぎやろ!と突っ込める場でもなく、私は何も言えなかった。
いつ死んでもオカシクない状態なのだが、父は手術を拒否している。手術しなければ半年もたないそうだ。
医者の弟が同席してくれて説得しても一歩進んでは半歩下がるの繰り返しだ。ムスメの泣き落としでなんとか詳しい検査を受けることになったが、『いつ死んてもいいから家に帰りたい、手術は嫌だ』と父が思っているのは明らかである。
私は親に複雑な感情を持っており、『父の好きにしたらええ』という放り投げるような諦めと父の感情を汲みたい気持ちと、『世話になってきた父親やで少しでも長生きして欲しいし、祖父母に懐いているムスメが可哀想やから頑張って欲しい』というのがあったりする。
そんな母親の心中をムスコに垂れ流したところ、冒頭のセリフで諭されてハッとした。
私はムスコに意見を求めておらず、親子一体感のままで同調して欲しかったのだと。それは父が私や弟たちに求めた絶対服従の愛玩動物的な愛情と本質的に同じで、支配的な自分の傾向に心からぞっとした。
「そやな、間違いない。私の意見はともかく、とりあえず優しくするわ」
「そうしたって」
孫はしっかり育っている。彼らを可愛がってくれた両親のおかげだなと感謝の気持ちの夕食だった。
ついでに私にも優しくして欲しい今日この頃である。
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