第28話

 これは、俺はどういう反応をするのが正解なんだろう。

 神藤さんと意思が全く理解できない。彼女に告白したことは絶対にない。


 だというのに久遠さんの質問に肯定したという。

 本当に意味がわからないのだが、確認をとる方法もないので何も出来ない。


「なんか意味わかんない、って感じだね。もしかして神藤さんじゃない?」


「…まぁ」


 実際神藤さんでは無いし、これは認めて何も支障はない…はずだ。

 多分また久遠さんは俺が告白した相手を再び探し始めるんだろうけど。


 久遠さんは陽キャである。そもそも彼女から探さなくとも、いつか友人から聞くことになるだろう。

 青水さんと自然と友人になっている可能性もある。


「じゃあ私は嘘をつかれたわけだ。神藤さんに」


 久遠さんは何か考える素振りをして、ふと笑顔になった。

 態度の急変具合に少し不気味に感じる。


「私、神藤さんとは仲良くできないかも。神藤さんの友達っていう青水さんもそんな感じかな?」


「いやぁ〜。どうかな」


 実際彼女たちの本性なんて知らない。勝手に好きになって、勝手に振られただけの話で仲良いわけじゃないし。


 霧とちょっと仲良さそうだったし、今度霧に聞いてみるのも悪くないかもしれない…って、いやいや。


 俺にはもう彼女を知る理由はないんだった。何を真面目に考えてるんだ。


「そういえば青水さんも結構可愛かったよね。絶対モテてるでしょ」


「モテてると思う」


「だよね。もしかして隼くんの告白した相手って彼女だったり?」


「…いや、違う…こともないこともない」


「はっきりしてよ。よくわかんない」


 もういいか。どうせ後々バレることなのだ。今バレようと、後でバレようと何も変わらないか。


 久遠さんは既に大事な家族。家族間での秘密は良くない。うんうん。


「青水さんだよ」


「ふーん、やっぱそうなんだ。隼くんはああいう子が好みなんだね」


 ニヤニヤしながら俺を見つめる久遠さん。変なこと考えてることが、表情から手に取るように分かる。


「青水さんに100回かー。その告白してる時ってどんな気持ちでやってたの?」


 どんな気持ち…と聞かれても言葉にできる自信が無い。

 突然恋に落ちて、いつの間にか告白していたのだ。

 恋は盲目、まさにこれだな。


「別に、自然と好きになってたっつーか」


「自然かー、まあ恋なんてそんなものだよね〜」


「そういう久遠さんは恋愛経験は?」


 愚問だったかな。久遠さんのような完璧美少女アンド陽キャな人に恋愛経験がないわけないか。


 きっと1人や2人、彼氏がいたんじゃなかろうか。もしかしてたら今も付き合っている人がいるかもしれない。


「ん〜、皆無」


「え?」


「でも最近好きな人が出来たんだよね。その子は凄く辛い経験をしてて私が慰めてあげたい、って思ってるんだ」


「なるほど、頑張って。応援してるよ」


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