第21話

 次の日の朝、俺は久遠さんと登校することになった。始めての登校なので俺と一緒に行きたいということらしい。


「ごめんね久遠。出来るなら私が送ってあげたいけど大学の講義があって…」


「大丈夫よ姉さん。隼くんがいるし」


 久遠が俺を指さしながらそう言うと、姉さんは俺の事を細い目で見つめてきた。

 ちゃんと送り届けろってね。分かってるよ、そんなことくらい。


「じゃ私は行くから、久遠。隼が何かやらかしたら私に言ってね。直ぐに懲らしめてあげるから」


「うん、ありがと」


「行ってきます」


「「行ってらー(っしゃい)」」


 朝から姉さんはなんて元気なんだろう。まだ起きて1時間も経ってないだろうに、なぜあそこまでテンションを高くすることが出来るのか。


 朝が苦手な俺にはいつになっても分かりそうにないな。


 それはそうと、昨日久遠さんに誕生日を確認してみたら俺よりも2ヶ月くらい早かった。


 つまり彼女は俺の姉、ということに…。それで俺の誕生日を教えようとした時に、ちょうど母さんと新しい父親が家にやってきたので話は切れてしまった。


 だから久遠は俺の誕生日を知らない。あの性格だし自分が姉だと分かったら面倒くさそうなので当分の間は黙っておこうと思う。


 義父はどうやら母さんと同じ職場で働いているらしく、俺たちが朝起きたら既に家を出た後だった。


 ちなみ久遠さんは姉さんの部屋で一夜を過ごしたらしい。何か変なことされていないか心配である。


「悠紀姉さんってなんか、元気だよね。おかげで暇はしなさそうだけど」


 彼女なりなオブラートに包んだのではないだろうか。

 昨日から姉さんのキャラ、ちょっと崩壊してしまっている気がする。


 ダウナー系だった姉さんは一体どこに行ってしまったんだ?!

 そっちはそっちで初対面では取っ付き難いところがあっただろうから今の方がまし、とは言えるのかな。


 中間くらいが最適解なのではないかと個人的には思うが。


「まあ仲良くしてやってくれよ。多分妹ができて嬉しいんだよ」


「もちろん。今まで1人だったから姉妹ができて嬉しいの」


「なら良かったよ」


 姉を持つ俺としては一人っ子は羨ましい、なんて思うこともあるが一人っ子は一人っ子で抱える問題があるということか。


「そういえばクラスは分かってるのか?」


「うん、えっーと…多分5組だったと思う」


「5組か…」


 ってそれ俺と同じクラスじゃないか!








「ねぇ隼きゅん。その告白してた子が5組って本当なの?」


「本当だって何回も言ってるだろ。だからその呼び方やめてくれ」


 家を出てからというもの、久遠さんは何度も何度も同じ確認を取ってくる。

 なんか呼び方もいじってるし。


 学校に近づくにつれ、言うまでもなく同じ高校の生徒たちが増えてくる。

 普段は1人で、影薄く隅っこを歩いている俺であるが、今日は生徒たちの注目の的になっていた。


 だって久遠さんがいるんだもの。そりゃ、こんな美人が俺みたいな陰キャと一緒に歩いてたら興味をそそるだろうな。


 お陰様で身体中が痛い。まるで視線という名の銃砲をくらっているみたいだ。


「ふふぅ、そうだよねぇ。楽しみだなぁ私。その子と会えるの」


 そういえば会って何をするつもりなのか聞いてないな。

 青水さんと久遠さんは初対面になるだろうし、話すことがあるのか?


 まあこういうのは本人に聞けば済む話か。


 ――ということで…


「そういえばその人とあって何を話すつもりなんだ?」


 まるで今何となくふと疑問に思ったかのように尋ねてみる。実際その通りなんだけど。


「ああ、うーとね。なんで隼きゅんのこと振ったのか聞こうと思ってる」

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