第20話
結局姉さんから邪魔者扱いを受けた俺は自室のベッドの上でラノベを読み漁っていた。最近は成り上がりものにはまっていて、本屋に赴いては面白そうだ直感的に感じた本を購入してしまっている。
おかげで本棚にはまだ手を付けていない本がやまほど眠っている。一回買うのを控えないといけないな。このまま買い続けてたらまるでコレクターみたいになってしまう。
今読んでいる作品はよくあるタイプの物語で、簡単に説明すると現世ではクラスのパッとしない陰キャ代表みたいな主人公が異世界転生して最弱スキルを授かってしまうも誰もが予想だにしない使い方をして強くなっていく。
ありきたりな話ではあるが逆に捉えれば安定して面白いということだ。新たな展開を開拓していくものも興味をそそられるが中にはもちろん外れもある。
だからこそ見たこともないようなスタイルの物語は小説投稿サイトのものを見ていたりする。
「風呂入るか」
確か風呂は沸かせているはずだ。どうせ姉さんと久遠さんはリビングで話しているだろうし、誰にも邪魔されまい。
箪笥からパジャマを取り出していざ行かん、としたところでドアをノックする音が聞こえてきた。隣の姉さんの部屋ではなく、俺の部屋をノックしている。
姉さんはいつも躊躇なく入ってくるので姉さんではないだろう。
母さんが帰ってきたのだろうか。
「隼くん、の部屋であってる?」
この声は久遠さんだ。
姉さんと一緒じゃなかったのか。一体姉さんは久遠さんをおいて何をしているのか。
姉さんが相手するというから安心して自室にいたというのに…世話が焼けるなあの姉は。いくつになっても変わらない。
「あってるよ」
といいながら扉を開けて、彼女と相対する。近くに姉さんの姿はなく、彼女一人で俺の部屋まで来たらしい。
「姉さんはどうしたんですか?」
「悠紀姉さんは今入浴中で、暇だったから隼くんに会いに来たの」
なんかすでに馴染んでいるというか、タメ口が様になっているというか。もう昔からいた普通の家族みたいな接し方をしてくるな。
姉さん一体なにをしたんだ。
なんとなく察していたところもあるが、この人陽キャだな。
「なるほど、それで要件はなんですか?」
陰キャである俺はもちろん異性を自分の部屋に入れたことはない。小さいころに霧がよく遊びに来ていたが、高校生になってからは一度も入れたことはない。
家族だから部屋に入れるのは普通なのか。それは俺には判断できない。
「敬語やめてほしいな。今日から家族なんだからさ、隼くんともめっちゃ仲良くなりたいんだ」
「わかりまし…わかったよ。それで部屋に入りたいのか?」
「うん、同世代の男の子の部屋って入ったことがないからさ。ちょっと興味があるの」
意外だな、陽キャなんだし色々と経験あると勝手に思ってたけど、思ったよりも純粋な人なのかもしれない。
「あ、意外だなって顔してるね。よく言われるんだよね。さっき姉さんからもそう言われたの」
そうだよな、姉さんもそう思うよな。
「いいよ、入ってくれ」
「何この漫画、面白いね」
「そのおもしろさが分かるのか?」
「うん、めっちゃ面白いじゃん。初めてだよ、こんなに面白いの見たの」
「…」
「ん?どうしたの、そんな俯いて。私変なこと言った?言ったならごめん」
「いや…まさかその漫画の面白さを分かるやつがいるなんて」
「え、そんなにびっくりすること?!」
久遠さんは俺の態度に相当驚いているようだが、それくらい感動できることなのだ。
彼女が今読んでいる作品はマイナーもので、俺が個人的に大好きな作品だ。今まで知り合いにたくさん紹介してきたが皆あまり満足してくれなかった。
そんな作品を面白いと言ってくれる人がこんな身近にできるとは…という理由で感動している。
「久遠さんとは気が合いそうだな」
「ほんとぅ?実は私もそう思ってたよ」
「ほんとだよ。嘘つく理由がないしな」
「あはは、確かに」
それから俺は久遠さんに様々な作品を紹介していった。どれにも興味を示してくれて、この一瞬だけですごく仲良くなれたような気がする。
「私、もっと隼くんのこと知りたいな。彼女とかいないの?」
彼女というワードを聞いてふと青水さんのことを思い浮かべる。
「今女の子の顔、思い浮かべたねぇ~。その子が彼女?」
「いや、違うな」
「違うんだ。じゃあ好きな人とか?」
「好きだった人、だな」
今も好きなのかは分からない。けど断言できるのは気持ちが弱くなってきているということだ。
「ということは振られちゃったんだ」
「うん」
百回も振られてるんだよな。
「勿体ないね、その子」
「え?」
「隼くん、こんなにいい男なのに振っちゃうなんて。もしかしたらその子、振ったこと後悔してるかもしれないよ」
「それはないよ、だって百回振られてんだぞ」
「百回!?嘘?」
それが本当なんだよな。久遠さんになら話しても大丈夫だろうし、全部話してしまおうか。
彼女にすべての出来事を話すと、とても笑っていた。俺としては笑い飛ばしてくれた方が気が楽なので嬉しかった。
「私、明日から隼君と同じ高校に通うから会わせてほしいな」
「え、明日から?」
「うん、なんで?」
「だって高校の制服着てるじゃないか」
自分の格好を見て納得したようにうなずく久遠さん。
「これね、今日最後の確認をしに学校に行ってたんだ。それで来るときに制服出来てくださいって言われたからこの格好」
「じゃあ転校生ってことか?」
「そうだよ、紅葉女学院っていう高校知ってる?」
知ってるも何もその高校は日本有数の進学校じゃないか。知らないはずがない。紅葉女学院は確かここの反対側の市にあるから確かに転校しないといけないだろうな。
将来が約束される高校から転校だなんてもったいないな。
「もちろん」
「後悔はしてないから安心していいよ。新しい環境楽しみにしてるんだ」
余計な心配はしなくていいよ、ってことだな。了解した。
「それで会えるかな?」
「ああ、会えるだろ。その人はうちの高校で有名だからな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
投稿遅れて申し訳ありません💦
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます