第19話
彼女を迎え入れてリビングに連れて行くと、姉さんがちょうど出来上がった料理を机に並べている最中だった。
相変わらず姉さんの作る料理は見た目から食欲をそそってくる。
俺の後ろに立っている銀髪の少女も料理を見て目を丸くしている。玄関で彼女を迎え入れた時、俺は現実か、と思う程彼女の美しさにびっくりした。
もちろん声には出さなかったが世の中にそうそういないレベルの美人だ。よくもまあ、こんな人が俺たちの家族になろうとするのか。
もしかして後から来るっていう母さんの再婚相手はめちゃくちゃイケメンなんじゃなかろうか。
いや確定だろう。美人遺伝子は美人から受け継がれる。
それならなぜ姉さんは美人で、俺は凡人なんだよ。意味わからねぇ、世の中理不尽すぎるだろ。
「あ、おかえりー」
「おかえり?何を言ってるんだよ、姉さん」
「何言ってるって、今日から家族なんだから当たり前でしょ」
「あ~」
なんて姉さんは優しいのだろう。きっと姉さんは彼女が不安に思っていると思って、接しやすいように配慮してくれたのだ。
まったくそのような思考回路にならなかった。
「ってことでおかえりー」
「えっとっ…」
俺はうん、とうなずく。彼女はなにがなんだか分かっていないのか、不安そうな目を俺に向けてきたのだ。
全然俺よりも姉さんの方が安心できるだろうし、早く仲良くなってもらいたい。俺もこれから家族としていっぱい関わって仲良くなろう。
さっきまで姉さんに任せてしまおうとしていたのが馬鹿みたいだ。
「ただいまー」
「あ、可愛い!好きっ!」
姉さんは興奮した表情をして彼女に抱き着いた。身内同士とはいえ、女の子同士が抱き合っているのを見ると、なにかいかがわしいものを見てしまっているように感じてしまう。
「く、苦しいっ」
「姉さん、苦しんでるよ」
「あ、ごめんね。ちょっと可愛すぎて衝動が抑えられなかった」
てへっ、と。やっちゃったと視線を送ってきたが無視しておいた。
「いただきますっ」
「どんどん食べてねー、えーっと、名前なんて言うんだっけ?」
そういえば名乗ってもらってなかったな。うちの制服を着ているし、名前を聞けば分かるかもしれない。
「あ、飯沼久遠っていいます」
「久遠ね、分かった。今日から久遠って呼ばせてもらう」
コミュ強すぎだろ姉さん、という突っ込みが出そうになる。なんでしょっぱなから下の名前…は家族になるから分かるんだけど、呼び捨てって。
普通最初はちょっと躊躇して〇〇ちゃんって呼ぶだろ。
「そういえばお母さんが再婚するってことは、私たち苗字変わるのかしら」
「あ、それはお父さんから話しておいてッて言われてたんですけど、苗字がそちらに合わせるらしいです」
「じゃあ久遠は今日から藍木久遠になるわけだ。なんかいい感じだね」
「あ、ありがとうございます///」
照れてる姿も可愛いな…。
「私たちも自己紹介しないとでしょ、隼!まずあんたから事項紹介しなさい」
「あ、はい」
家で事項紹介なんて不思議な感覚だ。事項紹介なんて学校の、一年の始めの日にするくらいしかしたことがない。
「隼っていって…えーっと、16歳で誕生日は八月っす」
「何らしくもない緊張してるの。ダサいよ」
姉さん、その言葉は普通にグサッと刺さります。痛いです。
「久遠はこんな男は放っておいて私と話そう。悠紀ね私。それと家族なんだから敬語は無し、楽にしていいよ
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