第18話
霧は姉さんから解放されると、事情を察したようでそそくさと帰宅していった。話を聞いていないように見えていたが、実際は聞いていたらしい。
「あぁ、帰っちゃった。久しぶりだったのに。また連れてきてよ」
「分かった」
霧とは既に完全に仲直り出来たし、誘えばまた家には来てくれるだろう。最初は否定しながらも、しぶしぶ来てくれると思う。
今度蜜璃のことも霧とか姉さんに紹介しよう。蜜璃はとても明るい性格をしているのですぐに打ち解けるのが安易に想像できる。
「じゃあ私、今からご飯の準備するからあんたはリビングを掃除してくれない?」
「了解」
しばらくして姉さんの料理の良い匂いがリビング中に漂って来たとき、俺も掃除の終盤に差し掛かっていた。
「そういえば相手の娘さんが来るんだよね?再婚相手は来ないの?」
「それ気になってお母さんに聞いたんだけど、飲んでくるらしい」
「普通先に来るだろ…」
娘さんだけこっちに寄こすのはいかがなものなんだ。姉さんがいるからまだよかったが、もし男の俺だけだったら危ないだろう。
もちろん俺は何もしないと断言できるが、世間一般的に見れば警戒はした方がいい。世の中全員健全な人とは限らないからな。
「まあいいでしょ、女の子なんだし相手は私がするから。隼と同い年なんだし、扱い方は分かってるから」
姉さんは片腕を挙げて自信を俺に見せてくる。まあ確かに姉さんは俺の扱い方をよくわかっている。
自分でも分かっていないことを姉さんは淡々と扱ってくる。まるで俺の取扱説明書を持っているかと錯覚しそうなほど。
「任せた」
じゃあ飯を食べ終わったら部屋に戻るとしよう。女の子同士の会話なんだし、俺がいたらしたい話も出来ないだろうしな。
「あ、二階に行くのは無しだから」
「え…」
また心を読まれた。さっき考えてたら早速だ。怖いったらありゃしない。
「当たり前じゃん。兄妹になるかもしれないのに仲良くなろうとしないのはおかしいでしょ」
「くっ…否定できない」
やはり姉さんには敵わない。一生勝てる気がしないし、勝とうとも思わない。だからこそ出来るであろう、同い年の義妹オア義姉には負けたくないな。
ふとその時チャイムが鳴った。
来たっぽいな…ふぅ、ちょっと緊張する。だって今まで一度も関わったことのない赤の他人が家に上がって、それも家族になるという。
ラブコメで義妹系とは見たりするが、主人公たちってこんな気持ちだったんだな。今度から見る目が変わりそうだ。
「ごめん、今手はなせないから出て」
「えぇ~」
初対面の女の子と話させるとか姉さん鬼か。陰キャの魂百まで、というように俺は生まれてこの方陰キャとして生活してきた。
16年間の人生の中で仲良くなれた女性は、霧と蜜璃と、初音さん?ぐらいか。青水さんには告白をしただけで仲良くはなれていない。
「怒るよ?」
「あ、すみません。出ます」
俺はインターホンを確認すると玄関前には可愛らしい女性が立っていた。インターホン越しでも分かる長い銀髪。青く輝くサファイアのような瞳。
あれ、うちの制服着てるな。でも見たことないし…どういうことだ?
まあいいか、早く迎え入れないと失礼だ。
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