第16話
「霧の悪口は止めてくれないか。確かに二人の話している通り約束を破ったのは霧が悪いと思う。だけど人間性をぐちゃぐちゃいうのは違うと思うんだ」
俺に霧はプライドが高い所はあると断言できる。…が、彼女が正直に謝っているというのだ。そこは普通に受け入れてくれればいいじゃないか。
俺はいくらだって馬鹿にされても構わないが、幼馴染の悪口を言われれば怒りもわく。
「…言われてみれば確かに今のは私たちに非がありますね。すみませんでした、霧ちゃん」
「だってさ、霧」
「別に謝ってほしいわけじゃなかったけど、誤ってくれるなら一応受け取っておくわ。それに…隼にそう言ってくれて嬉しかったし」
「今なんて言った?」
「ううん、隼は気にしなくていいよ」
「そうか」
今の霧の反応は完全にツンデレだ。現代ラブコメでは一番不人気なヒロイン属性とも言われているツンデレ属性だ。
一応言っておくが、俺は全然ツンデレは好きである。
ツンデレ、クーデレ、ヤンデレその他もろもろ~デレに特別好みはない。それぞれの属性にいい所と悪い所があるし、どれも受け入れられる自信がある。
「私もごめんなさいね澄宮さん。ちょっと自制出来ていなかったみたいだよ」
「もう気にしてないから、逆に感謝しているくらい」
「感謝って…それはどうかと思うけれど…」
このままでは埒が明かないと判断した俺は話を振り出しに戻すべく、声をあげる。
「済んだ話なんだし、もういいじゃないか。それで結局二人は何の用なんだ?俺は霧からも何も聞いてないからなんでこうなってるのかまったく分からないんだ」
隣の霧に視線を送ってみるも返ってくるのは視線のみ。答える気はないようである。
それじゃあこの二人から聞くしかないわけだが…
青水さんに聞くには気まずい。何度も何度も言っているのは分かる、鬱陶しいくらい話しているのは自覚しているのだがまだ言わせてもらう。
気まずい。もう顔を合わせることが苦痛に感じるくらいだ。もう一度彼女に告白をしていいのなら、ほんの少しでもオーケーがもらえる可能性があるのであればこの苦痛も和らぐ。
でももう叶うことがないから出来ないから、苦しいんだ。俺はどうしたらいいのか分からない。
「それは亜玖亜から話さないとダメだよ。ほら、藍木くんとっても苦しそうな表情してる。亜玖亜から全てを話さないとスタート地点にも立ちなおせないよ」
「そうだよね…うん、分かってるんだ。わたしからすべて何があったのか話さないと前に進めない」
二人は何を話しているんだろう。こそこそと話しているのは分かるんだけど、肝心の内容はまったく聞こえない。でも青水さんの表情からして大事な話だということだけは悟ることができた。
霧も何か考え事をしているようだ。
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