第15話
「まずは机に座りましょうか?」
青水さんは颯爽と机を班の形に移動させると俺たちに座るように呼び掛ける。俺と霧が隣に座り、反対側に神藤さんと青水さんが腰を下ろしている。
霧に対面には神藤さん、そして俺の対面には青水さんがいる。なぜ逆にしてくれなかったんだ。
俺としても彼女としても話したいことはないだろうに。
それにこうして何度も彼女を間近で目に移してしまうと、せっかく彼女への恋心が薄れてきたと思った時に再び彼女に強い意識を引っ張られてしまう。
俺としてはさっさと忘れてしまいたいのに…どうして神様がそれを許してくれないのか。
「さあ、藍木くんに澄宮さん。先ほどの行動の真意をお聞きしたいのですがよろしくて?」
神藤さんの強い圧をひしひしと感じる。彼女とはほとんどかかわったことはないから確証はないけど、たぶん怒っているんだと思う。
隣でにこやかな表情をしている青水さんも、外見は全く怒ってないように見えるが目が笑っていない。
二人とも明らかに様子がおかしい。俺が今までクラスメイトとして見てきた二人の温かな雰囲気は消え失せている。
「えーっと、俺から言えることは…」
確か二人は最初からあのやり取りを見ていたんだよな?だとしたら俺たちから説明できるものなんて何もないんじゃないか。
少なくとも俺から言うことは何もない。
帰る準備をしていて、久しぶりに幼馴染が話しかけてきたかと思ったら突然謝ってきて…仲直りして、キスされて…
「私としては隼くんには非はないと判断しています。だって突然隼くんを誘惑して無理やり唇を奪ったのは紛れもない霧ちゃん本人なんですから!」
「亜玖亜の言う通りだよ。でも藍木くんにも非があると私は思うな。だってキスされた瞬間に引きはがせばよかったのに満更じゃなさそうな顔して受け入れてたよね。真っ赤になってさ」
「う…」
否定できないのがバツが悪い。満更じゃなかったのは…うん、やっぱり否定できそうにない。
だって嬉しかったんだ。
ずっと仲違いしていた幼馴染と仲直り出来て、霧のような可愛い人にキスされたら俺じゃなくても普通の男であれば受け入れてしまうんじゃなかろうか。
…でもこんな風に言い訳してるのがダサいんだろうなぁ。青水さんに会わせる顔がない…けど、肝心の本人が目の前にいる。
「澄宮さんも何か言いなよ?亜玖亜と約束したのに破るのはさ…」
「…それはごめんなさい。私も冷静じゃなかったわ。ずっと好きだった隼と仲直り出来て嬉しかったの。最初は本当にちゃんと言われたことやろうと思ってたのよ?でも…いや、言い訳は止めるわ。ごめん、青水。神藤」
「…」
四人の間に沈黙が流れる。
「なによ、人が正直に謝ってるのに無視はないでしょ」
「まさか謝ってくれるとは思っていませんでした。澄宮さんはプライドが高そうですから、何を言っても意味はないと思ってました」
「私もよ」
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