第14話
二人はどういう関係なんだろうか。青水さんには今まで散々アピールをしてきたが、霧と話しているところは見たことが無い。
たまたま見たことないだけなのか、それとも俺があの告白をした後に知り合ったのか。
俺としては幼馴染と、百回も告白して諦めた相手が仲良いというのは気まずいしかないのだけど。
まあ、霧が誰と付き合っていようとも俺が文句を言う筋合いはないわけで。
「見られてしまっていたのなら仕方ない。私は今、この瞬間。あなたとの約束を放棄する!」
どんな約束をしているのか知らないが、そんな本人の前で約束放棄宣言するとは霧もなかなかな性格してるな。
霧は何度も言うが、昔から俺以外の人とは適当に付き合っていた。男子たちからはよく愚痴を言われていたのを俺は知っているが、不思議と不滅の人気を誇っていた。
女子たちからはそのクールで、男子にも容赦しない性格を好まれていて友人も多かった。たまに学校で霧の姿を見た時、一人でいたのを見たことが無い。
「ちょっと待ちなさい!」
「愛華、助けてよぅ。霧ちゃんがぁ」
青水さんの後方から突然現れた彼女の親友である神藤さんが話に割り込んでくる。この件には神藤さんも関わっているらしいな。一体どういう状況だ。
「澄宮さん、それは流石に酷すぎるよ。win-winの約束だったでしょ。それは一方的に破棄するなんて許されない。それに…それが成り立つなら私だってヤりたい」
「え、どういうこと愛華?」
「ううん、気にしないでいいよ亜玖亜は。あなたにはまだ早いわ」
「早いって何が?私にもそういう知識はあるからね!」
まったく理解が追い付かないのは最初から変わらないが、少なくとも修羅場に巻き込まれているということだけは分かる。
隣に立つ霧は歯ぎしりをして悔しそうな表情を浮かべてるし、青水さんは神藤さんに縋りつきながら泣き顔をしてるし、神藤さんは神藤さんで何を考えているのか分からない。
先ほどの発言、少し違和感を感じたんだよな。気のせいではないと思うけど、いまいちパッとしないのが気に入らない。
「あ、藍木君。ちょっと予想外の展開だったけど、有言実行しに来たよ」
ニヘラと可愛らしい笑顔で言う神藤さん。
有言実行とはなんのことだろう…と思っていると、数日前のあるシーンが脳内の引き出しから引っ張り出されてきた。
あのことか…、完璧に思い出したぞ。
内容は今度神藤さんが青水さんを連れて俺に話しかける、というもの。冗談だと思って忘れてたけど、まさか本当だったとは。
「う、うん」
なんて返事をしたらいいのか分からなかった俺は曖昧に応える。
「何その微妙な返事。…まあそうだよね。状況が状況だもんね」
うんうん、とうなずく神藤さん。彼女だけ不思議と落ち着いているように見える。
「昨日ね、私と亜玖亜はそこの澄宮さんに協力をお願いしに行ったの」
ということは青水さんたちと霧は昨日知り合ったということか。
「隼くん、本屋ぶりですね。今日は大事な話があってやってきました。霧さんも一緒にお話ししましょう?」
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