閑話:亜玖亜は協力関係を結びたい①

「ねぇ亜玖亜。本当に藍木くんのこと後悔してるの?」


「う、うん。多分あの時感じたのはそういうことだと思う」


 あの時とは隼が亜玖亜に向かって告白をした時のことを指しているのだろう。普通の告白ではなく、彼からのけじめの告白。

 毎日のように受けていた隼からの告白に慣れてしまっていた亜玖亜であっても、あの時はいつもとは違うものを感じたらしかった。


「じゃあ、まずはあの人の所に行こうか」


「そうだね、まずは協力者が必要だね」


「私も近くまでついて行ってあげるけど、話は亜玖亜がしないとだからね。あの人頭が固いって有名だから」


「うん、緊張するね」


「私は緊張しないわ。亜玖亜の問題なんだから!」


「うん、そうだよね。ごめん、愛華」


「別に謝ってほしいわけじゃ…まあいいけどさ。ええっと、あの人何組なんだっけ?」


「えーっと、隼くんが言ってたのは確か…二組だったと思う」


「二組って…問題児が多いクラスじゃない。今からあのクラスに行かないとなの?」


「愛華が嫌なら私一人でも…」


 愛華は亜玖亜の言葉を聞いて、はぁ、と深くため息をついた。これだから亜玖亜は、と。

 小学生の頃から亜玖亜と一緒に過ごしてきている愛華にとって亜玖亜という存在は家族の一人といっても過言ではない程大事な存在である。


(亜玖亜は昔っから顔に出やすいからなぁ)


 愛華から見た今の亜玖亜の表情はとても不安そうに見える。だけども、その不安そうな瞳には確かに明るく燃えている炎が灯っている。


(本当に好きなんだね、藍木くんのこと。私も結構いいと思ってたんだけどなぁ)


「冗談だよ。私もついていく。だって亜玖亜幸せになってほしいもん」


 亜玖亜の表情がだんだんと明るくなっていく。


「ありがとう愛華。本当はちょっぴり不安だったんだ」








 亜玖亜と愛華の二人はお互い内心で色々と考えながら、二組の教室へとやってきた。昼休みということもあって、二組のうるさいで有名な男子たちがはしゃぎまくっている。


 そんな中二人の目的である少女はクラスの端っこで三人に囲まれながら仲良く談笑していた。


「邪魔じゃないかなぁ」


(この子、本当もっと素直になればもっと可愛いのになぁ。私以外と話すときは敬語になっちゃうし。敬語だからいいっていうのもあるのかな?)


「大丈夫よ。亜玖亜は人気あるんだしすぐ話聞いてくれるって」


「それと今は関係ないでしょ!」


「そうね、ごめんごめん」


 二人は目を合わせると、笑顔で微笑みあう。そして亜玖亜はすぐに真剣な表情を浮かべて教室に入っていく。


 男子たちが興味津々に各々興奮の声をあげ、女子たちは女子たちでひそひそと話す。


「すみません、あなたが澄宮さんでしょうか?」


 澄宮霧。学年で五本の指に入ると呼ばれる美少女五天皇の一角を担うマドンナ。通称『クール姫』。通称は五人の中で一番ダサい、というのも有名。


「うん、そうだけど私に何の用かしら?」


 もちろん言うまでもなく亜玖亜も五天皇の一人。まして五人の中でも圧倒的と呼ばれる美貌。


 ここに五天皇同士が対面したことで、周りの空気は不思議なほどざわついている。


「なんだなんだ?」


「ここにきて五天皇の争いが?!」


 実は今まで五天皇同士が接触したことはない。なぜかクラスは五クラスしかないのに誰一人クラスが被らなかったからだ。それも五天皇は一人一人性格が全く異なる。仲良くなれるようなタイプではないのだ。


「藍木くんのことでお話をさせていただきたくで、参上させていただいた次第です」


「隼?なんであなたが隼のことを…まあそんなことはどうでもいいわ。私はあなたと仲良くしたいとは思わないの。だから構わないでくれる?」


 霧は亜玖亜を冷たく突き放す。霧にも何やら思うことがあるらしい。


「そうはいきません。大事なお話なんです」


「はぁ、大事な話ならさ。なんで今来るわけ?今は昼休みでお弁当の時間じゃん。私たちの都合も考えてよ」


「…それは確かのあなたの言う通りですね。私がバカでした。ではまた放課後に尋ねさせていただきますのでお時間いただきたく存じます」

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