第9話
女の子とデートなどしたことがあるはずもない俺はとりあえずの行先を初音さんに任せることにした。
普通の男なら女の子に格好つけるためにリードしたがるんだけど、俺みたいや男はそんな器用なこと出来るわけがない。
「どこに行きますか?」
「ふふっ…面白い」
「え?」
「ううん、なんでもないよ。じゃあ私の家行こうか?」
「いいですね、じゃあ初音さんの家に…って、今なんていいました?」
今、俺の聞き間違いじゃなかったら初音さんの家って言わなかったか?残念ながら俺は都合の良いことだけ聞こえなくなる難聴系主人公ではない。
そこらへんにいる一般人と何ら変わらない…はずの俺の耳はしっかり彼女の言葉を捉えていた。
「私の家だよ。どうせこの辺を歩いているだけじゃつまらないし、私の家なら楽しいことたくさん出来るかなぁって」
いやいやいやいやいやいや、それは…確かにそうかもしれないけど、異性の家に行くのなんか付き合っているカップルがやることだろ。
付き合っていない、しかも今さっき出会ったばかりの男女が家で遊ぶなんてあってはならない。
万が一、初めて出会ってお互いの家に遊びに行くってなっても女の子の家の方を選ぶのは絶対に違う。
「ふふ、私相手の考えてることが分かるんだぁ。心配しなくても大丈夫だよ。間違いは絶対に起きないから」
と妖艶な笑みを浮かべて言う初音さん。俺の考えていることが分かるのか。
危ない、彼女の笑みが魅力的過ぎてもう少しで取りつかれてしまうところだった。俺にはまだ青水さんが…は、ダメだ。いつまで引っ張ろうとしているんだ俺。前に進まないといけないだろ。
「やっぱり、俺がリードしてもいいですか?」
「ん~~~~、突然だね。ちょっと心読めなかったよ」
「それは褒めてるんですか?」
「うん、褒めてるよ」
相手の心を読むという力はどんな感じなのだろうかとふと疑問に思う。俺は相手の気持ちが読めなかったから、実際に百回も告白してようやく悟ったのだ。
彼女のように出会ってすぐに青水さんの気持ちが手に取るように分かっていたのであれば、未来は変わっていたのかもしれないな。
「健斗から聞いたんだけど、隼くんって好きな人いたんでしょ?」
なんで初音さんに勝手に話てやがるんだあの野郎。今度会う時問い詰めてやる。俺からしたらその話はあまり広めないでほしいのだ。
理由はもちろん俺が恥ずかしい、というのも含まれているが大部分は青水さんに迷惑が掛からないようにしたいからだ。
既にたくさん迷惑かけてるし今更と言われれば終わりだけど、少しくらいは…な。
あ、でも百回の件は流石に話してないよな、な?
「まあ、いましたね」
「それもひゃ…ううん、やっぱいいや」
それじゃ、と初音さんは気合を入れると俺の腕を取る。
「じゃあ、リードよろしくね♡」
そう改めて言われて俺が彼女をリードしている姿を想像してみる。…うぅ、吐きそう。
そもそも俺みたいな陰キャが彼女のような超絶美人を隣に連れてたら色々とまずいんじゃなかろうか。
街中のイケメンから俺に対して奇異の視線が送られまくる未来が見える。
「や、やっぱり…」
リードお願いできませんか、と恐れ多くも呟く。
「はは、やっぱり隼くん普通じゃないね。いいよ、私が引っ張っていってあげる!」
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