第3話
休日俺がやることはほとんど決まっているといっても過言ではない。なぜそう言えるのかと聞かれれば、それは毎週毎週同じような過ごし方をしているからだと答えるほかない。
まず起床。姉が準備してくれている朝食をありがたく頂いてから数時間は自室でアニメ鑑賞か、推しの配信を見る。最近はブイチューバ―にハマっている。
そして昼前になると俺はキッチンへと向かい昼食を作る。朝は姉さんで、昼は俺が作るというのが俺んちのルールだ。とはいっても俺が作るのは土日だけなので圧倒的に姉さんの方がハードなわけだけど。
ただ姉さん曰く朝食は姉さんの作ったご飯を食べてもらいたいらしい。俺としては姉さんの料理は大好きだから特に不満はない。
「ご馳走様でした、相変わらず美味しかったわ。今日も今から出かけるの?」
「ありがとう。うん、いつも通りそのつもりだよ」
「ふーん、変わらないのね。私も講義あるし出かけるから後で出た方がしっかり施錠ね」
「了解」
姉さんは今年大学二年生で日本でも有数の名門医学部に通っている。将来は産婦人科医になりたいらしく、今現在も勉強を頑張っている。
姉さんの話し方はちょっとダウナー系ではあるのだが、言葉の節々で優しさがにじみ出ているので周りの人からは好かれている。
ついこの前姉さんと一緒に買い物に行ったときたまたま姉さんと同じサークルに所属している男性と遭遇し、姉さんと仲良くなる方法を聞かれたのだ。
確かに姉さんは弟の贔屓目なしで素晴らしい性格をしているし、加えて顔面偏差値も高い。モテるのも仕方ないだろうな。
「そういえば隼、恋人とかいないの?」
「な、なんだよいきなり!?」
姉さんからそんな話振られたことなんてなかったので驚いてしまう。
「いや、なんか最近告白される数が増えてきててさ。私恋愛する余裕なんてないって言ってるのにしつこくしてくるし」
「まあ姉さん可愛いし、仕方ないでしょ」
「わ、お世辞ありがと。それでなんとなく隼のこと気になってさ」
「いないよ。つい昨日諦めたばっかだよ」
「え、なになに。隼好きな人いたんだ。告白したんだ。振られちゃったんだ!」
なんでそんな嬉しそうに笑っているんだよ。弟の失恋話を笑ってくれるな。
「…でもその子もったいないなー。隼こう見えてハイスペックなのに」
「こう見えては余計だろ。てかハイスペックじゃないし」
自分への評価は結構甘いとは思っている俺ではあるが、ハイスペックだと思ったことは一度もない。
姉さんと比べて顔が整っているわけでもないし、特別特技があるわけでもない。
「なんか納得してない顔してるけど、贔屓目なしで隼ハイスペックだと思うよ。今時料理できる男を嫌いな女の子なんていないんだから。顔も私と似てて良いし、他にもあんなことなこんなことが…」
「ありがとう、姉さんに褒められるとなにかそう思えそう」
「良かった。じゃあ私は出るからカギ閉めてから出てね」
「了解」
最寄駅から電車に乗って数駅、アニメショップや本屋が多く並んでいる街にやってきた俺は普段通いしている本屋へと足を運んでいた。
(この本屋。入荷が早くて最新刊がいち早く集められるんだよな)
ブックカバーも無料でもらえて飲食可能な読書スペースがある都会には珍しいタイプのブックストアだ。
いつも昼食を終えてからここにやってきては、色々なラノベを読み漁っていた。
今日の予定は好きな漫画の最新刊の購入と、新しいラノベの発掘だ。学校にはいないオタク仲間がこの本屋ではたくさんいる。
ここで仲良くなった友人も数人いる。他校に通っている生徒だからここに来るときにしか会うことは出来ないんだけど、それが特別感があって好きだったりする。
今日もいるだろうか。
(今日もいるかな?)
「お、いたいた」
俺の声に気付いたのか読書スペースで本を読んでいた友人が振り返る。
「隼、待ってたんだ!」
「どうしたんだ?」
この子は俺の唯一の女の子の友人、竹中蜜璃さんだ。
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