1話【新学期】

デカくね?


いや、校舎が。


ピッカピカの白い校舎、少し武道館というか、某アリーナレベルのデカさあるんじゃないか?



でっけえなぁ…


夏休み中に建てたのか?これ。

大丈夫なのかな、あの、地震とか。


校門が二つあるし、どっちが出入り口とかあるのだろうか?

入口なら右かなぁ


新たな校舎に圧巻されて歩いていると背後から落ち着かない声が聞こえた。


「あっ、秋田あきた、おはよう。というか、久しぶりだね」


後ろを振り返ると、そこには天才女、綾瀬凛月あやせりつがいる。


この天才少女は綾瀬凛月は勉強、運動、芸術にまで長けていて、美人。

天が与えすぎた人間だ。

文字通りの天才。

だけど彼女はそれを自覚しておらず、知らぬ間に人を嫌の思いにさせていることが多い。


故意とか関係ない。とにかく俺は好きじゃないんだ、俺と同じく怠惰なくせに何でも俺よりできるやつが。

俺は話を振られるたびに謙遜な態度を返しているのにこいつは1年の頃からずっっとこうやって遭遇するたびに挨拶してくる。


「…おはよう綾瀬凛月さん」


気まずぅ


と思っていた矢先、綾瀬の口が動いた。


「あー、そうだ、この校舎なんだけどね、夏休み中に建てたわけではなくて、秋田くんが休んでいた間もずっと建設してたんだよ。この学園が進化していくためには環境から変えることが重要だって。さっき学長が言っててね…」


俺を引き留めるためなのか、必死に説明しようとしている。

聡明なイメージが台無しだ。


「へぇそうなんだ、いきなり大きくなっていたから驚いてたよ」


俺が休学していた間の出来事をもっと聞きたいが、それ以上この女と話したくない。


「教えてくれてありがとう。じゃあ、俺は先生へ挨拶しに行ってくるから。」


「え?待って待って!まだ話さないと行けないことが…」


俺を捕まえようと走ったら簡単に追いつけるであろう天才少女には、不意打ちでしか逃げられない。


少し罪悪感を感じながらも、俺は事前にメールで示されていた新しいクラスを目指して走った。



ーーーーーー



この新学期、俺は高校2年生になった。

(9月入学、9月に新学年)


この学校、一条寺学園いちじょうじがくえんは東京の外れにある高校だ。

20××年に設立されたこの学校は設立時には全く注目を浴びず、今あるあるの自称進学校となるのでは、と噂されていたらしい。


それも現在の学長、一条寺元いちじょうじはじめが学長になるまで。


彼は大々的に「日本から世界へ。」というモットーを作り、新世代の「才能」を集めるべく、全国各地に優秀な子供たちを見て周り、直々に推薦したらしい。


そんな才能溢れる若者を強引に集結させると「日本から世界へ。」羽ばたく人材が生まれるらしい。(笑)


こんな馬鹿馬鹿しいモットーは伊達に口だけではなかった。


独自の教育プログラミングを仕入れ、外注したの人間を連れ、並の学校では受けられない教育を生徒に施したのだ。


…結果は一条寺が学長に就任してすぐ現れた。

全国学力テストでは総合点、1位。

運動の方は、もともと人材が良かったというのもあり、全ての競技が全国トップクラスらしい。

何より驚きなのは、学校での自由研究を基づき、生徒によって作られた論文が海外の名門大学の目に留まった。

結果として海外の名門大学への短期留学プログラムなど堪能できるようになったのだ。


偉業というか、すごい。

きっと綾瀬のような人間なのだろう、学長は。


このように、一躍有名となった新米高校は入学希望者が殺到し、

設立数年の高校は全国で一番人気の高校と化した。



入試方法は書類選考と、書類選考は倍率2倍ほど、

これだけでもだいぶハーフドルが高いが、

の試験、面接試験は倍率8倍らしい。



…なぜ俺が受かったって?

記念受験で入ってしまった俺が聞きたい


チキンで臆病な考えを持っていた俺は一年生の頃、をきっかけに冬休みの終わり頃から学校をサボり、家でゲームと読書に浸った。


そんな生活も飽き、夏休み明けには戻ると約束した学校に戻り、青春を謳歌しようと思う。

こうしてモチベーションが上がっていた俺は、絶賛迷子です。


「くそぉ、綾瀬凛月を巻くために。と思って全速力で走ったのが間違えだったな。校舎が変わってて自分がどこにいるのか分かねぇ」


某マップに…乗ってる訳ないよな、教室。


「はぁ……」


こうしてため息をしているとまた声が聞こえる。


「秋田じゃん!何してんの?」


誰だぁこの甲高い声は、怪物綾瀬じゃねえのは確かだ


ふと振り向いたらそこには誰もいない。


前にいた、美少女が。


学校の顔、宮原怜みやはられい

彼女もまたの人間、

綾瀬ほど完璧超人というわけではないが、優しい。


めっちゃ優しい。


その上モデル並みに可愛い顔は人を惹きつけ、気づいたら「宮原怜」という人物は学校の顔になっていた。


ちなみに俺は大好きだ。


「あっ宮原さん、今ちょっと迷子で…」


「迷子?あぁ秋田ずっと休学してたもんね。どこに行くの?」


ちょちょちょ、宮原さん距離感バグってるのかと突っ込みたくなるくらい顔を近づけてスマホを覗き見してるよあなた。

俺の心臓が爆発してしまう


「あっ2-Bじゃん!私と同じだよ!」


「!!!!!!!!」

歓喜してしまった。


「私めっちゃ嬉しいよ!教室まで一緒に行こう」



う、うれしい!?宮原さんが!?

俺と?一緒で???


「あ、ありがと…」




新学期、悪くないかも。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る