第9話

数時間の走行。

砂漠地帯から荒れた廃墟の街へ移動する。

舗装された道路を走り続けて、やがてぽつり、ぽつりと人の姿が見えてきた。

ようやく、日紫鬼銀を乗せたトラックが、人混みの多い都市へと帰還する事が出来た。


「入国一万円だよ」


入国管理者が門の前に立っていた。

日柴鬼銀はトラックから顔を出すと、ポケットの中を弄った。


「三人、それと荷物」


札束の入った財布を取り出すと、其処から百万円の束を取り出して入国管理者に渡した。


「おいおい、重量オーバーじゃないか、百万じゃ足りないよ」


基本的に、機骸一体を入国する為に審査を抜きにすれば五十万以上の入国費が掛かる。

なので、相手への賄賂を込めて百万の束を差し出したのだが、それでは駄目らしい。


「じゃあ、これで」


日柴鬼銀は札束をもう一つ取り出した。

それを受け取った入国管理者は柔和な笑みを浮かべる。


「いいよ、これで審査した事にしてやる…但し分かってるな?」


「あぁ、中での機骸を使用しての戦闘は禁止、だろ?」


それが、この街の中でのルールだった。

それを破ればどうなるか、それは痛い程に知っている。


「なら良い、それじゃあ、ようこそ、我らが国へ」


そう気前良く言うと、口笛を吹いた入国管理者。

それと共に門が開いて、日柴鬼銀はトラックを動かした。

此処が、日柴鬼銀が住処としている街…『我楽多』である。

街と称されているが、統治しているのは王である。

機械生命体の死体を売買した事で、土地の権利を合法的に購入。

そして、無秩序と化している土地を買い上げ、自らの国としたのだ。


此処では、機骸があり、機械改造した人間が居る事以外、文明社会となんら変わりない。

此処で生活している殆どの人間は、機械生命体から逃れた避難民で、そのまま街の住人となった者が多かった。


此処以外にも、街は存在する。

だが、治安が悪い場所が多いので、この街は比較的、社会的法律が存在する以上、治安は良い方に分類されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強の手駒を従えるクズ野郎とヒロインとの爛れた関係、ロボット、異能機械バトル、ヤンデレ、現代ファンタジー 三流木青二斎無一門 @itisyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ