第5話



「なに、ぼてーって突っ立ってやがる!殺せ、おい!」


金髪のキャスパリーグが叫んだ。

その言葉に戸惑っている機体。

日紫鬼銀のようにインカムは取り付けていない。

だが、猫耳型拡張器官によって通信状態になっているのだろう。


「自分丸ごと撃ち殺される気か?アホが!!」


それでも喚く事を止めないキャスパリーグ。

いいから撃て、の一点張りだった。

ようやく、彼女の言葉を聞き入れた機体が動き出した時。


「ラヴィ!」


日柴鬼銀がインカムで彼女の名前を叫んだ。

その声に反応して、砂漠の山に隠れていたラヴィが遠射砲を構えた。


『はいはい!』


射撃音が響くと共に、機骸の頭部が貫通した。

弾丸を受けた機骸は視覚を喪い、行動を止める。

残るもう片方の機骸が、遠方に日柴鬼銀の味方が居る事を知った。

だが、キャスパリーグの言葉を聞くか、彼女の命令を無視して遠方の敵を狙うか迷ってしまった。

それが命取りだった。

再び、発砲音が響き渡ったのだ。

勿論、それはラヴィが操る機骸・狙撃兵によるものだ。

確実に狙いを定めている為に、一撃で機骸の頭部が吹き飛ばされる。


「な、バカッ!!何を勝手に潰されてんだ!!」


叫ぶキャスパリーグ。

彼女の後頭部に向けて回転式拳銃で頭を殴った。


「黙ってろって言ってんだろうが!!おいラヴィ!!無力化した、こっちに来い!!」


インカムで伝える。

彼女はまだ、機械神近くに居る機骸を警戒している。


『あの機械神の機死片を回収してるの、どうすんの?』


彼女の言葉に、日柴鬼銀は心配ない、と言った。


「おい、キャスパリーグ、このまま作業を続けさせろ」


「あ!?」


彼女は反抗した。

すぐさま、日柴鬼銀は撃鉄を起こした。


「無駄話は嫌いなんだよ、分かるか?分かんねぇよな?頭ん中空っぽなんだろ?今から穴を開けて中身を見てやるよ!」


脅し文句だ。

しかし、既に二人殺している日柴鬼銀。

言葉通りに実行する凄味があった。

それに気圧されるキャスパリーグ。


「ざ、ざけんな、やめ、ぐ、うううッ!てめぇら!!作業を続けやがれ!!」


自分が殺されると思い、恐怖で涙目になっているキャスパリーグ。


「テメェのトラックに載せろ、いいな?」


日柴鬼銀は、キャスパリーグが乗車していたトラックを奪う算段だった。

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