第6話

キャスパリーグが乗車していたトラックの中は広々としていた。

まるでキャンピングカーと合体させた様な車両だ。

キッチンやトイレ、シャワー室やベッドまで完備されていた。

適当に縄でキャスパリーグを拘束して、ベッドの上に押し倒した。

冷蔵庫の中を開けると、キンキンに冷えた缶ビールなどが詰め込まれている。

今は飲む気にはなれないと、日柴鬼銀は冷蔵庫の扉を閉ざすと、ラヴィからインカム経由で声を掛けられる。


『銀、同業者にこんな真似して大丈夫なの?』


「あ?大丈夫なワケねぇだろうが」


トラックの荷台に機械神の機死片を詰め込ませる。

狙撃兵に搭乗しているラヴィはそのまま警戒をしていた。


『じゃあ、どうすんの?』


「権利の主張だ、撃破時の記録データがある、法的に見れば、俺達に正当があるだろうが」


「むーっ、むーッ」


トラックの後ろを見る。

縄で縛られたキャスパリーグが此方を睨んでいる。

口元には布で猿轡をされていた。


「…なんだ?」


彼女の口に付けられた猿轡を取り外して聞く。

深く、肺に溜まる様に呼吸をするキャスパリーグ。

同時に口を大きく開いて叫んだ。


「てめぇ!キャスパリーグにこんな真似して、ただで済むと思ってんのか!?あぁ!!」


「あー…猿轡外すんじゃなかった」


面倒臭そうに日柴鬼銀は頭を掻いた。


「あたしのバッグに誰が付いてんのか分かっての所業だろうな!?ああ!!お前なんか、海に泳ぐお魚の餌にしてやるッ」


「『魔祓聖園ディスペルヘイヴン』だろ?」


鉄屑屋としての組織名である。

三十以上の傘下を従える大組織。

キャスパリーグはその傘下であり、数多くの横暴も組織の後ろ盾があったからこそだ。


「そうだ、そんであたしは『泥棒猫ケットシー』のキャスパリーグッ、テメェなんか、苑長に言えばすぐにでもッ」


叫ぶ彼女の頭に向けて拳を叩き付ける。

殴られた衝撃で押し黙るキャスパリーグ。


「下っ端如きに上が構ってくれるワケねぇだろ」


悪名は轟いている。

だが、それは中心部より離れた、郊外での話だ。

確かにキャスパリーグは『魔祓聖園ディスペルヘイヴン』の傘下なのだろう。

だが、組織にとっての重要な人物ならば、こんな錆びれた土地で活動をしている筈が無かった。


「うるせぇ、死ねッ!拘束が無けりゃ!あたしの機骸キルギアでぶっ殺してやったのにっ!!」


彼女の言葉など聞く耳を持たず。

高級感漂うトラックの中を散策している日柴鬼銀。

その際に、あるものを発見した。






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