一輪の花

おかゆちゃん

第1話

ある日、魔物は人間の男に恋をしました。

優しい人間に…。


だけど、

自分は"魔物"だから


見た目だって恐ろしいし、あの人みたいにキレイな心なんて、もっちゃあいない。


魔物は考えました。

(どうしたら、あの人は、魔物の自分を愛してくれるだろう?)


魔物には魔力があって、時々いろんな魔法を使いました。そして…


その魔法で、魔物は、あの人が歩く道の"花"になりました。この魔法は使ったら、もう魔物に戻ることはできません。


花になった魔物は、毎日毎日、遠くから人間の彼をみつめていました。

雨の日も。風の日も。

根っこが生えた身体は動かず、ただ、じっとみつめるだけ。


秋が来て、だんだん花が咲かなくなり、朝の空気が冷たくなった頃、魔物の花は枯れました。


(あたしもう終わりなんだ…)


魔物はなんだか悲しくなりました。

魔物の自分に、終わりが来るなんて。

好きにならなければ、こうして枯れることもなかったのに。

けれども、魔物はこれでいいんだと思いました。


枯れた花には、やがて種が付きました。

魔物の花の種です。


種が落ちる前、この枯れた花に近寄る人間がいました。それは"あの人"でした。

人間の男は、そっと種を集めました。

「ぼくはこの花を見ると、なんだか特別に、元気がでるんだ。不思議だけど、なんだか、とても大切にしたいんだ。もう枯れてしまったけど、来年、またぼくの家でキレイに咲いておくれ」


魔物は花になって枯れてしまったけれども、ずっとずっと、幸せでしたとさ。


☆おしまい☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一輪の花 おかゆちゃん @okayudon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ