第24話 ココからドコか


授賞式を終えた私は、夕日企画の会議室にいた。

これから正式に契約、そして出版に至るまでのスケジュールを調整するとのことだ。

どんあに平静を装おうとも、挙動が不審になる。


そりゃあ、そうだ。

誰もが体験できるものではない。

望んではいたが、まさか新人賞を受賞し、小説家としての一歩を踏み出せるとは思ってもみなかった。


広い会議室に私はポツンと待たされる。

最大の不安と期待を纏った私は一体、どのように見えているのだろうか?


「ガチャリ……」

会議室の扉が開く。

ここから、俺の人生が開く。

そして、華開いていく。

もう、止まることはできない……。


―――――――――――――――――――――

ガン、ガン、ガン、ガン、ガン……


「おい! 鈴木! 生きてんのか!?

 返事しやがれ!」

玄関を何度も殴りつける音と、聞きなれた声が聞こえる。

私は、どうやら眠っていたようだ。

夢の中で、明との淡い生活を過ごしていたというのに、なんで邪魔をするんだ。

こんな、なにも希望の無い世界で、ゴミのような生活をまだ送れというのか……。


枕元のスマホを引き寄せる。

どうやら記憶が三日ほど、飛んでいるようだ。

最後に覚えているのは、全身が焼けるようにアツく、それでも流し込んだ発泡酒。

そして、肌色罫線のアイツに向かったことだった。


未だに玄関では、罵声とも取れなくない声が続いている。

私は、まだ重たい身体をベッドからお越し、玄関へと向かう。

「あぁ、メンドうくせぇ……」

そうボヤいている私がいた。


玄関の扉を開ける。

そこには、久しく見る佐藤の顔があった。

佐藤は、私の顔を見るなり右腕で私の首を引きつけ、抱きしめる。


「バカやろう!! くっそ、心配したじゃねぇか!

 死んでいるのかと思ったぞ!」

佐藤の声が、キモチ、かすれている。

……泣いているのか……?

まだ、朦朧とするアタマを軽く振り、佐藤に聞く。

「お前……、もう、いいのか?」

語彙力なんてものが、あったものではない。

佐藤はその腕にさらにチカラを込め、言う。


「バカやろう! 俺のことなんて、どうでもいいんだよ!

 若い奴等から聞いている! お前が、俺のことを……」

最後まで言い終えず、佐藤は私の肩の上でしゃくりあげる。

あぁ……、この状況、私はどうすればいい……?

そんな私の気配を悟ってか、佐藤がその腕を離し、両手で私の二の腕を掴み、言う。


「なによりも、生きていてよかった。

 体調もどうやら良さそうだな!

 とりあえず、しっかり飯を食って、明後日からまた一緒に仕事をしよう!」

佐藤は本当に嬉しそうに笑顔を浮かべ、私に語りかける。

だが、その顔が……、私にとっては、まったく理解が出来ない。

佐藤の身体を引きはがすと私はいう。

「もう、俺は、ゴミの仕事はしない……。

 俺は、ようやく作家になったんだから……」

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