音村舞のエピソード1(3)

わっ!

な、何?

眩しい。


ダメだ。 目を開けれない。

音もなんか曇って聞こえる。


ん・・・?

え?

私、死んでないの?

今こうやって、眩しい!とか思ってる時点で死んでないってことだよね?

死んでないんだ・・・


と、とにかく今は父さんと陽樹に会いたい。

そう思い、少しずつ目を開けてみる。


最初の内は、何も見えなかったが少しずつ見えるようになってきた。

ピッピッピという機械音。 やっぱり病院だ。


周りには全く知らない看護師さんやお医者さんがいた。

私だって、何年間もここで暮らしたんだ。

私に関わってくれるお医者さんや、看護師さんくらい知っている。


なのに、周りに知っている人もいない。

というか、明らかに患者さんみたいな恰好の人もいる。

汗だくで、顔は赤くなっている。


かわいい・・

くっきりは見えないがそう思った。


そこで私は、自分が看護師さんに抱っこされていることに気づいた。


えぇぇ・・・。


あ、あの。下ろしてくれても大丈夫です・・・

と、言おうとしたが声が出ない。


なんでぇ?

そんなことを考えていると、看護師さんは私をいとも簡単そうに、患者さんに手渡しした。


物みたいに扱われているけど、同時に大事に扱われている感じもする。


汗だくの彼女は、私を優しく抱きしめている。

私を見る目は、まるで天使でも見てるかのようだ。


近くで見下ろされると、その顔の整い方がよくわかる。


かわいいなぁ・・・

って、違う違う。


誰?


どういう状況?

早く父さんと、陽樹に開いたい。


部屋を見渡したいけど、首が動かない。

はぁ。 どうしたものかなぁ・・・


と、そこで私を抱っこしている、女性の瞳に映るものを見た。


それは、素っ裸で、ムチムチで小さい赤ん坊だった。


ーーーーー


むふふふふ。

完全に理解した。

私はどうやら赤ちゃんに生まれ変わったみたい。


しかもこの超超超かわいい女の人がママらしい。

あと、私が音村舞って名前だけは分かった。


かわいい名前だなぁ・・・


っと、んー やっぱり美女のおっぱいを吸えるのは天国だなぁ。

ごちそうさま!


ん?

ママが私を抱っこしたまま、部屋を出た。

何処に行くんだろう。


しばらく歩くと、ある個室のドアを開けた。


中にいるのはママとそっくりな女の人と、必死な感じでおっぱいを吸っている赤ちゃんだ。


そこからママたちは色々楽しそうに会話していた。

どうやらこの二人は仲がいいらしい。


ふと、奏君と呼ばれる赤ちゃんと目が合った。


すると、奏君は私にお辞儀っぽい動作をしてきた。

きっとそう見えただけだろうけど私もつい、お辞儀で返した。



退院して一か月くらいたった。

私のお家はすっごい豪華なタワーマンションだ。


ちなみに、あのママと似ている人はママの妹?みたいな感じで、一緒に暮らすそうだ。

パパはいないみたいだけど、4人で住むなら寂しくないし、だいじょうVだ。

なんちゃって。


それにしても、言葉を話しすぎると舌が回らなくなるとか、身体が自由に動かないとか、


「んー。 さすがに疲れるねぇ。」


ーーーーー


バレちゃった・・・

バレちゃったというより、奏君も生まれ変わったらしい。


ーーーーー


あれから結構経った。

ハイハイとかもできるようになってきた。


この家族はみんな仲がいい。

寝るときはみんなで抱き合う感じで寝る。


私は前の人生で誰かと、こんな風に寝た記憶がない。

でも、こういうのはやっぱり安心する。


生まれ変わってからママ達が私達の事を大事に思ってくれているのはよくわかった。

そういう人たちの、肌の温度とかを感じながら寝るのは最高に幸せだ。


私はママに後ろから抱きしめられながら、奏君と物凄い密着している。

奏君が生まれ変わる前、男というのは知ってる。


「あーちょっとー!近いー。 へんたーい!おまわりさーん!」

何て言ってみる。

ちょっと照れて申し訳なさそうにする、赤ん坊。

面白い。


はぁ。 陽樹は元気かな?

今の生活は幸せだし、終わってほしくないし、この人生は楽しむつもりだ。


でも、陽樹や父さんとは会いたい。

陽樹の事を思い出して、ちょっと泣きそうになった時、ふと思った。


奏君の話し方とか、性格とか陽樹にちょっと似てない?、と。

私が同級生の男の子と話したことがあるのが陽樹だけだからかは分からないが、陽樹に似ている気がする。


そう思うと、奏君がだんだん陽樹に見えてきた。

すると、この密着してるのが恥ずかしくなってきた。


でも。

なら。 

だからこそ!


私は、奏君を思いきり抱き締めた。

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