音村奏のエピソード2 従妹は転生者
退院した。
予定通り生後6日で。
今日は退院してちょうど一か月。
ここはタワーマンション。
しかも最上階。
リビングの大きな窓越しにある景色は、東京の夕焼けだ。
「奏くーん!」
ベビーベットで寝転びながら窓を眺めている俺を持ち上げ抱いているのは、俺の母親の妹、音村凛だ。
この一週間でかなり多くの事が分かった。
まず俺の母親、音村美優には夫がいない。
そして、音村凛にも夫がいない。
だからかどうかは分からないが、このシングルマザー二人は同居している様だ。
つまり、このタワマンには4人で暮らしているということだ。
「んー! カッコイイでちゅねー」
そう言いながら凛は俺のか顔に頬を擦り合わせてくる。
俺は抵抗したいが、俺の手なんて簡単に払われてしまう。
「それにしても音村家の血を継いでる子は泣かない、なんて呪いがあるのかしら?」
「ちょっとやめてよ 呪いなんて。 泣かないのは悪いことじゃないでしょー」
「まぁねー 奏君に比べれば舞はまだ泣くけどね」
なんてことを言っていた。
最初は、疑われないように泣こうと思ったが、下手な演技で泣いた方が異常があると思われる。
いや、俺はともかく舞もあまり泣かない。
あまり泣かないし、母乳を吸う時なぜか嬉しそうな顔を浮かべてる気がする。
いや、腹が満たされた感じの顔じゃなくて、いやらしい感じだ。
気のせいだろうか。
気が付くと美優も俺の方にきてて、
「そんな事どうでもいいもんねー 奏はかわいいもんねー」
と天使を見る目で言ってきた。
何か申し訳ない気持ちになる。
何せ中身はさえない高校生男子なのだから。
その日の夜、事は起こった。
美優と凛は酒を飲み、リビングで寝てしまっていた。
テレビもついてないリビングで俺は暇になり、ベビーベットで目を瞑っていた。
「んー。 さすがに疲れるねぇ。」
そんな声がした。
俺の隣のベビーベットから。
「んー 早くもう一回鏡みたいよー! 私ったらこんなに綺麗な顔してたなんてー!」
流石に察した。
「あ、あの。」
「ひっ!」
俺は恐る恐る、
「あなたも転生者ですか?」
そう聞くと、
「え、わ、なっ! ち、違いますよー そんなわけないじゃないですかー。
私は見ての通り赤ん坊ですよー ばぶーばぶー」
こうして俺は転生者、音村舞と知り合った。
「あーちょっとー!近いー。 へんたーい!おまわりさーん!」
「分かった、分かったから! 声がでけぇよ!」
俺はできるだけ小さい声で言う。
「あ、ご、ごめんねー」
舞は引きつった笑顔でそういう。
「起きたらどうすんだよ!」
あれからさらに5か月ほど経った。
俺たちは生後6か月。
俺たちは『ハイハイ』という偉大な移動手段を身に着けた頃だ。
今は深夜1時半。
美優や凛と舞と一緒に大きなダブルベットで川の字になって寝ている。
美優と凜は相当仲がいい。
一緒に仲良く二人で寝るのは結構だ。
だが!なんで赤ん坊を大の大人二人でサンドイッチして寝るかな!
寝返りで潰れちゃうとか思うだろ! 普通!
それに、美優と凜はかなり密着して寝るため、そこに挟まれる俺と舞も物凄い密着状態にある。
「げ、限界だ・・・」
「むふふふ」
「何がおかしい。」
「別にー?」
この五か月。
舞と過ごして、ある事が分かった。
いやあくまで予測だが。
舞は、舞の前世はおそらく・・・JKだ!
そう思った理由は色々あるが、まず会話が若い。
そして自分の容姿を過度に気にしている。
最近、少し伸びてきた前髪を鏡を見ながらいじっている。
それを見て母親たちは
「舞ったら! やっぱり女の子ねー!」
何ていっている。
生後6か月ぞ? 6か月?
うちの親はかなり馬鹿らしい・・・
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