第5話 そりゃ本音は…ね? 勝美
「勝美、今日は自分の家に帰って寝とけ」「なんでよ?」
「…調子悪いだろ」「…そんなことないわよ」
「いいから…」「いやよ…」
ほんと聞き分けないとこは変わんないなぁ。おじさんとおばさんは夜遅くじゃないと帰ってこれないことが多い。大変な仕事らしいが一人娘をほっといてまでやらなきゃいけないことかね? 俺はため息をつきつつ…腰を上げる。
「ちょっと待ってろ」「………」
え~っと確かここに、あったあった。場所変わってなくてよかったわ。それと毛布とパジャマは姉貴のでいいか。下着は…仕方ない汗かいたらノーパンで我慢してもらおう。あとは、あれとそれと…。
「おまた~って帰ってなかったか…まぁいいや」
「なによ帰って欲しいの? 絶対に嫌よ…」
「わかったわかった。とりあえずこれ着替えろ。…って言うかもう動くのもつらいんじゃねぇか…」
「………」
「姉貴のでも文句言うなよ。ほれバンザイしろ」
勝美は両手を上げて、着ているTシャツを脱がす。ついでにスカートも…下着姿にさせたけど、傍から見たら襲ってるようで酷い。上下お揃いのピンクのランジェリーは、均整の取れた勝美に良く似合っている。
…なんでTバック穿いとんだこいつは。
とりあえずブラは取って、俺のTシャツ着せてその上にパジャマと…。そんなにつらいなら家で寝ときゃいいのに、寂しがりだからな。おでこを当てて熱を測る…わかんね~わ、って今どきおでこで熱測ったりしねぇなぁ。
「少し熱あるか? 今どんなよ?」
「ちょっとだけ怠い…かも。あと寒く感じるわね…」
「今もそんなに体質とか変わってねぇよな? 風邪薬と栄養剤。なんか食ったか朝?」
「なんにも…」
「まだあってよかったわ、カロリーメイト~。うちで食べるの俺だけだからもう無いと思ってたのに」
懐かしく感じるもんだ…中身を空け一口大に割って勝美の口に運ぶ。
「チョコ味…辛いの無いの?」「無茶苦茶いいよる…、我慢して食べ~や」
「うん…」
病気してると弱気になるよなぁ分かる分かる…いや分かんねえわ、俺一生病気したことないし健康優良児だったし。
「ほれ白湯飲んで…それから薬」
ほんと黙って大人しくしてれば、超絶美少女で通るんだよなぁ…。口の悪さと強めのツッコミは、ご愛敬ってね。素直に言うことを聞いてベットに横になる。毛布を掛けて、
「コータ?」「ん、なんだ?」
「そばにいて」「いんだろうが」
「こっちに来て。私のそばにいて」
なんて目で見んだ…そんな顔で、そんな目で見んなよ………つれえだろうが。
「ハイハイ勝美お嬢様。何なりとお申し付けください」
「はい、は一回よ」「…はい」
「なにか?」「いいえ」
勝美は少しだけ満足したのか表情を和らげた。
あぁ、それでいい…お前に悲しげな表情なんて似合わねぇよ。
薄幸の美少女だなんて、くだらねぇ。
「お次は?」「手を握って」
「ほいよ」「…」
きゅっと手を握ってくる。優しく壊れ物でも扱うかのように…でも二度と離さないようにしっかりと。
「逃げたりしねぇよ」「嘘」
「嘘じゃねえから」「嘘よ」
「どうすりゃ信じてくれんだよ?」
「キスして」「…どこに?」
「唇」「とっとけ」
「いや」
この我が儘お嬢はホントに…。
「初めてだから下手だぞ?」「私もよ」
「さよけ」「光栄に思いなさいな」
「俺がお願いされてんじゃなかったっけ?」
「こまけーことはいいのよ」「こまかくねぇからね」
「いいから早くし…」
強引に唇を唇でふさぐ。勝美は珍しく驚いた顔をして、静かに目を閉じる。それに倣って目を閉じると、唇に感覚が集中したかのようで。
「ふぅ~、キスって息継ぎとかどうすんだ? よ~わからん」
「雰囲気、台無しね。馴れよ馴れ、もう一回」
「へいへい」「………」
「はい、勝美お嬢様」
今度はキスしたまま舌を入れてみる。勝美は最初こそ戸惑っていたが、要領を得るのが速く舌をからませ、合間合間に息継ぎしキスし続ける。
「映画とかで見た記憶が参考になってんだろうけど、無意識に顔を少し傾けるよな」
「そうね。あとゆっくりだからかしら、意外と歯が当たらなかったわね」
「ご満足いただけましたか? 勝美お嬢様」
「ご満足いただけないわね。もっとしなさい」
「唇真っ赤になって、腫れるくらいやってやらぁ」
「望むところよ」
あぁ本当にこいつは可愛い。最高に可愛い。無表情を装ってクールぶってるけど、愛らしさは隠しきれない 。冷たいようで情に厚く、竹を割ったような性格に見えて、引きずる時は一番引きずる。
だから…そばにいたい。ずっとそばに。こいつから目を離したくなるんて考えられない。
俺が出会った女性の中で1、2を争う最高の女の子だ。もう一人は? 決まってんだろ。
夢なんかじゃない…
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