第3話 いつも自宅にいるわけじゃないからね?
今日は勝美と麗ちゃんと三人でプールに行くことになった。夏と言えば海! またはプールだろ!ということで、
「はい! 土砂降りの雨! 解散!」
「待ちなさい」「幸ちゃん待って~」
むんずと二人に服を掴まれる。でも仕方ないじゃん、この雨で濡れてまで行きたくないし、プールも屋内じゃない屋外プールしか近場にない…終了ですお疲れ。
そもそもマンションから出れないんだけど。
「せっかく美少女二人とプールデートできて、水着も見られるのに
「うんうん! せっかく可愛い水着も新調したし幸ちゃんに見せようと、勝美ちゃんも私も頑張ったんだから!」
「えぇ~…そりゃ見たいと言えば見たいけど…この雨じゃ無理じゃん」
「! 珍しく喰いついたわね…」「そうだね!?」
「珍しくって…俺だって女性の水着くらい見たくもなるぞ」「「!!!!!」」
「二人の驚く理由に、驚くわ。俺をなんだと思ってるわけ?」
二人は顔を見合わせ…。
「性欲インストし忘れた朴念仁」「思春期を殺した少年?」
酷い言われようだ…片方は自爆しそうでなんか嫌だし。
「まぁいいや。とにかく二人とも
「なんか散々なこと言うわね… 内面は悪いみたいじゃない」「そうだ~!そうだ~!」
「内面も悪くはないけどさ…」
「けどってなによ…」「そうだ~!そうだ~!」
人間…自分の悪行は、記憶のかなたに忘れ去ってしまうものなのだろうか…。
「勝美は昔、俺が一週間かけて作ったPGのガンダムMk-II を風呂にぶち込んだろうが」
「あれは…、あんたがこのカンタムは水中戦も強いんだぜって、ドヤ顔したからよ」
「カンタムじぇねぇから、ガンダムだから…それにアニメだからね?」
納得いかない顔をして、ふくれる勝美…いやそれ俺がする側だから。
「わ、わたしも…あるの? かな」
「あるな」「即答…ちなみどのような失礼をば…」
「麗ちゃんは、幼稚園のころ、寝てる俺の顔にラリックマのペイントしたでしょ」
「ラリックマじゃないよ~リラックマだよ~…可愛いよね~」
「可愛いけどね。しかも赤のマジックしかなかったからか、顔面真っ赤で姉貴も母さんもスゲー驚いてたわ…救急車呼ばれたもん」
シュンとして落ち込んでしまった…これが普通の反応だと思う。勝美、見習え。
「過去のことだし、そんな怒ってるわけじゃねぇから気にすん…少しは気にして」
「悪かったわね…ごめんなさい」「わたしも…ごめんなさい」
「わかったから、そんな落ち込むな。それよりも、じゃあ今日どうすんだよ?」
結局なんの解決もしてない現状を、どうするべきやら…。
「コータは私達の水着を見たいのよね?」「? あぁ、見れるなら見たいわな」
「なら見れる場所があるなら問題ないわけで…」
「勝美ちゃん! あるよ場所! いつもの!」「灯台もと暗しね」
「どこだよ…近場でも水着になれる場所なんか…あっ、まさか…」
「コータの家」
「幸ちゃんの家」
まぁそうなるよなぁ…。
「君たち俺んちを便利な家と勘違いしてない?」
「してないわよ…少しだけしか」「私も…」
「してんじゃねぇか…まぁいいけど」
俺んちで水着着てどうすんだろ…うちにプールは無いんだが…頭の中で? マークで埋め尽くされている俺を余所に、勝美と麗ちゃんは一度自分の家に帰って行った。
*
10分~15分くらいたっただろうか、二人は両手に荷物を持ってやってきた。服装もさっきと違ってジャージに着替えてるのは謎だけど。
「はいこれ。コータこういうの得意でしょ? 準備しといて」
「なんぞこれ?」
「中に説明書入ってるから、よろしくね」「幸ちゃんゴメンね。これも…」
「? あいよ。で二人は何すんのさ?」
「こっちはこっちで色々あんのよ。楽しみにしてなさい」
勝美がちょいドヤ顔で言ったことに、賛同するように麗ちゃんがウンウンと頷いていた。わけわからん。
大きい袋の中身は、小さく畳まれたビニールプールと電動空気入れだった。
え? なにすんの? まさか家で…あいつら俺のこと馬鹿にするけど、お前らも大概やぞって今度言ってやろ…夢枕で。
このマンション、リビングが広く取られてるからビニールプールを置いてもまだまだ余裕がある。電動空気入れも便利で、カップ麺ができあがるのと同じくらいで空気が入れ終わった。
二人はちょこまかと動いていて、お菓子や飲み物を用意したり、今のうちに作っちゃおうとお昼の準備もしていた。今9時前だけどね。…俺がプールに水を入れてこんなもんかとひと段落したところで向こうの準備も終わったみたいだ。
「よくできたじゃない、えらいえらい。コータはできる子ね」
「なんで上から目線なんだよ。そっちも終わったん?」
「うん、準備O.Kだよ。幸ちゃん、プールありがとうね」
「あいよ、でどうすんだ?」
「そりゃ入るに決まってんじゃない」
「それぐらいわかるわ。順番に入るのか? 待ってるのがマヌケっぽい気もするけど」
「全員で入んのよ」
麗ちゃんも顔を真っ赤にしながら、コクコクと首を縦に振っていた。
「………マジ?」
俺は今、自宅のリビングでプールに入っている…意味が分からない。
いや今日プール行くって言ったよ? 泳ぎたいというか涼みに行きたかったし、マンション出れればだったけど。この状況も別に嫌じゃないんだけど…まぁいいか。
二人に先に入ってろと言われ、独りで何やってのかなと思いはするものの、段々気持ちよくて眠くなってきた…。
あ、瞼が落ちてきて…寝そぅ………スパン! と小気味良い音が室内に響く。
「痛い…」「あんた寝てんじゃないわよ」
「なんか気持ちよくて睡魔が」
「昨日寝てないの? 幸ちゃん」
「いや、9時には寝たから10時間は眠った」
「そんだけ眠ってまだ眠れんのあんたは…」
二人の呆れた視線が俺を言外に侮蔑してくる…人を侮り、蔑み、馬鹿にしたり、罵ったり、ないがしろにすることは、よくないことだと思います。
少し目がチカチカしたが、頭がハッキリとしたところで二人を見る。
おぉぉ~。さすが我がマンションが誇る二大美少女JK、なに着ても似合うわ…。
勝美は背は低いが均整の取れたスタイルで、赤いブラジリアンビキニを着用。ビキニトップはフロントボタンで、胸元をチラ見せするかのように三つあるボタンの一番上だけ外している。
ボトムもカットが、えぐくてお尻見えすぎじゃね? お父さん心配である。仁王立ちでも魅力的だが、右手に持ってる大きいハリセンだけが異彩を放ってますけどね。
「なんか言いなさいよ」「似合ってる?」
「なんで疑問形なのよ。ちゃんと褒めなさいな」
「その水着、勝美によく似あってる。赤もイメージカラーだし、セクシー系なのにエロいと言うよりカッコよく見えるし、カッコ可愛いです…どうよ?」
勝美はいつものクールな無表情を装っていたが首元が赤く、花弁が舞ってるかのような雰囲気でご満足いただけたのが分かる。
「幸ちゃん…私も…」
麗ちゃんが囁くように、ボソっと言ったのでそちらを見ると…。
背が高く俺とタメ張るほどではないが、180近くあるのでモデルになれそうである。そんな麗ちゃんに似合う黒いVネック スイムドレスは、トップに可愛らしいもの好きなのが伺える、リボンとフリルがついている。
ボトムも腰のところが両方紐なんだけど…あれ解けたりしないの? そしてその自己主張の激しい二つのたわわな…お胸がこぼ、こぼれないかお兄さん心配です。両腕で自分の身体を隠そうとしてるのが、余計に煽情的に見えるんだけど本人わかってないんだろうなぁ。
「うんいいと思…」スパン! とまた気持ちいい音を響かせて、後頭部が痛い。
「なにするんだ勝美…ポンポン叩くもんじゃないぞ、馬鹿になってしまう」
「手遅れよ…それよりも、ちゃんと、褒・め・な・さ・い」
「はいはい」「はい、は一回」
「…はい」「なにか?」
「いいえ。」
理不尽を覚えるが、麗ちゃんに対しておざなりだったのかもしれない、と反省してもう一度。
「麗ちゃん、水着似合ってる。黒ってマイナスのイメージつきやすいけど、麗ちゃんの黒は落ち着いたイメージで、静かに包み込んでくれるような気持ちにさせてくれると思う。スタイルにもはまり過ぎてて、刺激が強すぎるように思えるけど、大人だなって納得できちゃう…いかかでしょうか?」
ほほに両手を当てて恥ずかしがっているが、にっこにこの笑顔なのでこちらもご満足いただけたようだ。
「麗奈の方がコメント多くない?」
「んなことないだろ」
「私が63文字で、麗奈が129文字って単純に2倍じゃないの。 やり直しを要求するわ 」
「勘弁してください…」
ワーワーギャーギャー………。
争いは何も生まない…名言だな。ふたりの水着も拝めたし今日はここまで、ではなかった。
「ほら、ちょっと場所空けなさいよ」
「マジ入るの? 交代制にしようぜ…」
「グタグタ言わない」「ごめんね幸ちゃん…」
狭い…。俺が真ん中で右に勝美、左に麗ちゃんとビニールプールいっぱいいっぱいなんですけど~。ちょっと隙間は空くくらいか。
しかも俺が両腕広げてるから二人を腕枕してるみたいで…いやしてるわ。これよく雑誌とかで、このネックレスを手に入れたおかげでこんなに金運が!みたいなので、女性をはべらせてる写真のやつじゃね? 絵面が酷い。
「あんたも偉くなったもんね。こんな美少女二人はべらせて、何様なんだか」
「俺がしたくてやってるみたいな言い方やめて下さい」
「ごめんね幸ちゃん…狭いよね、私出てるから二人で入って…」
「いいから麗奈も入ってなさい」「…うん」
「俺が言うのもなんだけどそんな狭くないし、3人で入っとこうぜ…気持ちいいし」
季節は夏真っ盛り。外は大雨、部屋の中で海水浴? しかも午前中から…なにやってんだか…。でもまぁいっか。
3人はいつも仲良し
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