第2話 だから何で日替わりで来るの?

 今日の自分は冒険家ララ・クロフト。世界を股にかけるトレジャーハンター。二丁拳銃を持ち、時には敵を打ち破り、時には罠を潜り抜け、世界の秘宝を集める。


 俺は男だけどな。


 そんなこんなでゲームを開始する時だけは、テンションが高くやる気も十分なのだが10分もプレイすると身体がついてこない。正確には頭か? 気持ちが悪くて吐きそう…3D酔い…するんだ…。


 本気でまずい、動けるうちに洗面台に行って間に合っ…、


 オロㇿㇿㇿㇿㇿㇿㇿㇿㇿㇿ。


「おはよございま~す…って、きゃーっ! 幸ちゃんなにやってんの! またゲームして酔ったんでしょ!」

「うぶ、ぼうばんば(うん、そうなんだ)」

「いいから!無理して喋んなくていいから!」


 麗ちゃんはそう言いながら俺の背中をさすりコップに水を入れて、


「はい、口ゆすいで。飲んじゃ駄目だよ。グジュグジュ~ペッてして」

「グジュグジュ~ぺッ…あんがと麗ちゃん」

「どういたしまして。相変わらず無茶するんだから…3Dゲームはやめときなさいってあれほど言ったのに」

「冒険心に火がついちゃってさ…」

「やるなら別のにしなさい別のに…私も付き合ってあげるから」

「麗ちゃんとなら対戦スト6でもやるか」

「いいよ~コテンパンにしてあげる」


 コテンパンに、されない。逆にコテンパンにした。二人で部屋に戻りいざ勝負!


「きゃー!おかしいって今パンチボタン押した!私ちゃんと押したのに~」

「いやタイミングが遅すぎるから」「だってほらほらパンチした!」

「そりゃPボタンだけ押せばパンチしか出ないから」

「コマンドが難しすぎるんだよ、もっと簡略化してくれればいいのに…」

「↓↘→Pの波動拳くらいは出そうよ」


 それでも懲りずに立ち向かってくる麗ちゃんは負けず嫌いだ。そして無口になりふて寝する。まぁいつもどおりだけど。小一時間すると起きて台所に行き、昼飯(今日はチャーハン)を二人分作って持ってきてくれる。 


「ほら、幸ちゃん食べよ?」「あんがと。あとで食べるね」

「紅ショウガいる?」「欲しい」

「はい。私のお皿からおすそ分け~」「麗ちゃん紅ショウガ好きだよね」

「ん~どうだろう。色々使えるから重宝してるけどね」

「へ~そんな使うっけ?」

「使うよ~チャーハン、焼きそば、炊き込みご飯、ラーメンにも入ってるじゃない」

「言われてみれば確かに」「でしょ」


 麗ちゃんが食べ終わった後は、対戦はやめて音ゲーをプレイ。二人ともパッドだと…やっぱり難しい。

 これがゲーセンなどで麗ちゃんにやらせると、凄まじい反射神経を発揮し、コンプリートするという。上半身だけ加速装置でもついてるかのように、シュタタタタと音と光に合わせてタッチしていく。


 あまりの凄さにギャラリーができあがるからなぁ。ブルンブルン動いてる別のとこに注目してる野郎がほとんどだけど…。人は見かけによらない。


 ゆうや~けこやけ~のあかと~んぼ~


「あ、放送なったし帰るね」「うん。お疲れ様? 楽しかった」

「わたしも~、幸ちゃん時計の針がクルクル回ってるよ~? 電池変えなよ。それじゃあまた明後日ね~バイバ~イ」

「ん~呼んでないんだよな~」


 よ…どうすんべ


 そして今日という日が過ぎていく






 私の名前は麗奈、神宮麗奈じんぐうれいな。高校3年生。容姿は良い方なのかな? 清潔にはしてるけど。スタイルはどうなんだろ…身長が高いからデカ女って呼ばれてた時もあるけど、今は気にならないかな。


 好きなものは幸ちゃん。小さい頃から一緒にいて面倒見たり見られたり、お世話したりお世話されたり、なくてはならないと言っても過言ではないと思う。


 ちょっと目を離すとすぐにどこかに行っちゃったり、何してんの! と心配させられるけれど、ほっとけないしほっとかない。私が幸ちゃんを幸せにしてあげるんだ~なんて大それたことを考えているわけではないが、私が幸ちゃんといると幸せだから一緒にいたい。


 幸ちゃんのことを好きだと本人に伝えたけれど、俺も好きだぞと言ってくれたあの日から、幸ちゃんから好意を伝えられたことは一度もない。(幼稚園の時だけど)


 私が小学校に上がる頃、勝美ちゃんが引っ越してきて、それから今までずっと幸ちゃんの家の両隣に私と彼女が住んでいる。


 初めの頃の勝美ちゃんはおすまし顔が多くて、とっつきづらい子に思えたんだけど、幸ちゃんが勝美ちゃんにちょっかいかけて遊びに引き込んだ(巻き込んだ?)ことで、段々と遠慮がなくなり今では打ち解けて大の仲良しの幼馴染となった。


 幸ちゃんも勝美ちゃんも年下だけど全然そんな感じはなくて(一年くらいならそんなにかわらないのかな)、小学校、中学校、高校と同じ学校に通っている。


 幸ちゃんは成長していくと共に背も伸び、ちょっとカッコよくなって私はドギマギさせられているけど、当の本人は色恋に無縁のような…無邪気な子供のようなままだ。


 勝美ちゃんとは10年来の仲良し幼馴染であり、恋のライバルだったりする。どちらも探り合いなんてする必要もなく、私はコータが好きよ、 麗奈も好きなんでしょ? …今さら駆け引きとかあのバカにしても通じないから各々で勝手にやりましょうと。


 私も勝美ちゃんとギスギスするのなんて嫌だったから渡りに船だったけど、お互い苦労しそうと笑い合ってしまった。


 でも一つだけ、三人で遊ぶのは今まで通りだけど、幸ちゃんの家に行く日程だけは隔日で日替わりにしようとなった。


 なんでなのか聞いてみたら。


「あのバカ、思春期をどっかに落っことしたのか色恋とか性欲とかインストールされないで産まれてきたのか、反応わるいでしょ?」


「うん…あんまりHなこととか興味薄いかなぁ」 


「やっぱり…こんなのぶら下げてる麗奈にすら見向きもせず、美人で可愛い幼馴染に囲まれて、あの反応は頭が沸いてるのかガキのままなのか」


 私のお胸をタプタプと手のひらで遊ぶのはやめて欲しいなぁ~。


「アハハ…それじゃあ幸ちゃんに、Hになってもらうってこと?」


「ぶっちゃけそういうことね。あいつから手を出してくるようなら、逆にほっとするわ」


「なるほど…わかった。じゃあ一日づつ交代でいいのかな?」


「基本はそうね。それ以外は臨機応変、適宜状況によって変えていけばいいし」


「Hなことをさせるのが目的ってわけでもないけど…8割くらいかしら」


「8割!?…けっこう多いね」


「あいつ相手に待ちガイルやってたら引き分け決定どころか、花の乙女の時間が失われるだけよ」


 否定できない…。


「せっかくだし名称つけよっ! なにがいいかな~」


「娼婦じゃ外聞がわるいわね…」「乙女が娼婦って…」


「昼は淑女、夜は娼婦…淑女協定にしましょう」


「そうだね、淑女…淑女協定! ちょっとカッコいいかも(淑女の意味とかけ離れてるけど)」


 

 そして現在に至るんだけど…、私も勝美ちゃんも状況は芳しくない。と言うかあんまり目に見えた成果は出ていない。



幸大君と勝美ちゃんと麗奈ちゃんも幼馴染

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