隣に住んでる幼馴染が毎日日替わりでうちに遊びに来るんだけど、休憩所か何かと勘違いしてない?

Nyamu

第1話 俺、今忙しいんだけど?

 説明はいらないな、俺は学生だ以上。他に言うことあるか? 自己紹介したところで秒で忘れ去られるだろうし、特に主張したいこともない。そんなことよりも俺は今スグにやらなければいけないことが…。


 わかったわかりました。


 俺の名前は柏木幸大かしわぎこうた、高校2年生だ…だったっけ? 平々凡々どこにでもいる学生、テンプレだろ? じゃあ忙しいからこれで…、何が忙しいかって?そりゃお前、に手に入れたRGリアルグレードのサザビー作るのに忙しいんだよ。


 もういいだろ、こんなことしているうちにまた…。


ピンポンピンポンピンポン…


「うるせぇ~ 居るから勝手に入ってこい勝美~」「…コータおはよう…遊びに来たわ」


「呼んでないんだけど…俺今忙しいし」「邪魔しないから」


 そう言って勝美は、俺のベットにダイブして漫画を読みだす。え、なんなの?暇なの? その手に持ってる漫画は俺のじゃないけど、どっから持ってきた? まさか姉貴の部屋から持ってきたんじゃ…。


「このバカ幸大! 私の漫画かってに持ってたろ? ぶっ〇すぞ!」

「俺じゃねえんだよなぁ…勝美だよ勝美、ほらあそこで我が物顔で読んでる」

「あら、勝美ちゃんいらっしゃい。おやつ食べる?」

「お邪魔してます。はい、いただきますお義姉ねえ様」

「接し方がおかしいんだよなぁ…。あとお姉様って字が違くね?」


 うつ伏せで漫画読んでたはずが一瞬で正座に…姉貴がいなくなったら元通り…もういいわ。とにかく俺は全力を尽くしてこのサザビーを作り上げなければ…。それにしてもこのパーツ数が凄いこと凄いこと。ニッパーでゆっくりと…あっ。


 ぴよーんとパーツが跳んでいき、勝美の形の良いお尻のスカートの上に着地。なんで跳ぶ?


「勝美、ケツの上のパーツとってくれ」「自分で取りなさいよ」

「昔、取ろうとしてケツ掴んだら引っ叩いてきただろうが」

「当たり前でしょ。乙女のお尻を鷲掴みすんじゃないわよ」

「仕方ないだろパーツが小さかったんだから。その代わり俺のケツ触らしてやっただろうが」

「等価交換にもならないわね。私を膝にのせて後ろからハグして、頭撫でてトントンね」

「もう意味がわかんねぇよ…」


 はぁーとため息をついて立ち上がりピンセットを持って、勝美のケツの上の真っ赤なパーツを摘まみ上げ…ズブッ…。


 油の切れた機械のようにギギギと音を立てて、勝美が俺の方を向いた。


「コータ?」「なに?」


スパン!と快音を響かせて頭を叩かれた。


「そのデカいハリセンどしたの?」「幸子お義姉様が作ってくれたわ」

「俺の部屋にそんなのあったっけ?」「私が持ってたのよ」

「どこに?」「乙女の秘密よ」


 乙女ってスゲー。


 勝美ちゃんゆっくりしていきなさい、と言って姉貴はおやつを置いていく、…まぁいいけど…元気そうだし。




 とりあえず完成した。これからパーツを分解してやすり掛けをし、色を塗って艶消しを拭く。工程はまだまだ長いが楽しめる時間も長いと考えることもできる。ガンプラ道は奥が深いのだ…完成させられないのが心残りだけど。


 朝から晩までぶっ通しで作り続けて、精神的に疲れもしたが満足感は大きい。そういえばとベットを見ると、勝美はよだれをたらして寝ていた。起きてるときはクールだが、寝てるときは年相応に幼く見える。


「黙ってりゃ可愛いのに…もったいない。起こすか…勝美起きろ、夜寝れなくなるぞ」

「う~んむにゃむにゃ…」「ねぇから…むにゃむにゃなんて言う奴いねぇから」 


 すくっと起きると、「うるさいわね。ここにいるんだからいるのよ」と言いながら大きなあくびをした。


「いま何時?」「5時半だな」

「時計壊れてるわよ? 秒針がクルクル回ってるし…直しときなさいよね 」

「ん? あぁ…」

「あんた何時間作ってんのよ…まぁいいわ。お疲れまた明後日ね」

「呼んでないんだよなぁ…あ、俺の分のおやつはお仏壇に置いとこっと」


 だいたいこんな感じが俺の一日である。学校は? 夏休みだよ。




 私の名前は勝美、比和勝美ひろかつみ。高校2年生。顔は、まぁ可愛い方なんだろう。スタイルは普通かな…そう普通ね。ほんの少しだけ背が低いかなと思わないこともないけど、成長期だし許容範囲よね。


 好きなものはコータ。好き、大好き。どこがっていうと、どこだかわかんないけどとにかく好き。こまけーことはいいんだよ精神ね。なんとか隔日でコータにアプローチしてるんだけどイマイチ戦果は芳しくない。


 私の乙女力が足りないのか、コータがバカなのが悪いのか…どっちもね。まだまだ精進しなくては。本当なら毎日押しかけて、もっともっとコータに好きだという気持ちをぶつけたいのだけれど、に違反することになる。


 焦ることはないと思ってはいるが、油断をすることは許されない。コータを狙っているのは私だけではないのだから…。自分で言うのもなんだがコータのどこに惚れたんだか。


 顔は普通…ちょっとカッコいいわね。身長は180くらいだから高い…私との30センチ差は、キスするときアイツが屈まないとできないけど。私が背伸びして、しようとしても胸に頭突き喰らわす形になってしまう。


 性格は真面目? よりの大雑把な、めんどくさがりかしらね。凝り性なのは間違いない。性欲とかあんのかしらあのバカ。私がそれとなく溢れ出るフェロモンを撒き散らし誘惑してるのに…。


 なんでこんなに可愛い女の子が部屋に来てベットで寝てるのに、真っ赤なプラモデル作って一日終えるってバカ以外のなにものでもないでしょ。


 しょうがない、惚れた方が負けとはよく言ったものだ。仕方ないから明後日もまたあの幸大バカを誘惑しに遊びに行こう。



幸大君と勝美ちゃんは幼馴染

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